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"科学的"知見の欺瞞 9/12


7 「参照値」

7−1 「参照値」はガイドライン

 低周波音は今の“騒音学者”はまともに手を出さない、或いは手が出せない"無敵”の代物であると同時に、一方、機器メーカーにとっては多いに“頼りがい”のある「騒音の隠れ簑」である。少なくとも現行の「参照値」では絶対に対処できない相手であると言うより、むしろ「騒音の隠れ砦」の門番みたいなモノであるとしか考えられない。 

さて、その「参照値」だが、現実的には、「低周波騒音被害者の門前払い役」として立派に機能しているが、これは低周波騒音の現場そして、そこに日々暮らしている被害者の実体をよく知っているとはとても思えないI氏により収集された「一般成人20名と低周波騒音苦情者9名」の実験値と低周波音の権威Y氏の蓄積データにより創られたモノであると言う。この実験を委嘱したのはもちろん環境省であり、その結果である「参照値」を実際に運用しているのは環境省であるから、主犯はやはり環境省である。

 環境省は低周波音問題対応の手引書(平成16年6月)に於いて「本参照値は、低周波音によると思われる苦情に対処するためのものであり、対策目標値、環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとして策定したものではない。対策に当たっては技術的可能性等総合的な検討が必要である。」と述べてはいる。

 しかし、低周波音は企業に於いては無知故にと思いたくなるような業界もあるが、低周波騒音被害の存在を全く知らないか、あるいは、知りながら承知の上で意図的に無視しているところが少なくないと言うより、ほぼ全業種がそうである。 

現実として、低周波騒音被害者にとっては、自治体の窓口こそ、頼みの綱であるが、そこが現実的には、全くと言っていいほど機能していない。むしろ、現実の行政窓口は、これは便利!とばかりに「参照値」を「目標値」「ガイドライン」としている。これは発表当時から我々としては充分危惧したところであるが、予想通りと言うより、遙かにこれを超えた現実的運用である。「参照値」という環境省のお墨付きを頂いた行政は “低周波音の問題“というだけで、まずは、「参照値」をタテに、面倒であるとばかりに、文句なしに被害者を門前払いする。

 本来ならば行政が現場に赴いて測定をすべきであるが、「低周波のレベル計がない」とか「測定の技術がない」とか「夜間の測定はできない」等と言って、彼らが“動く”ことは非常に希なのが現実である。よしんば、彼らが動いたとしても、この際には、行政は、必ず「騒音元に測定の予定を連絡する」。仮に犯罪者なら、捜査のある日を知っていて、誰が “現場”あるいは“事実”を現行犯的に取り押さえられよう放置するであろうか。

従って、事実、現実の状況を押さえておくためには、被害者はどうしても、行政に測定させる前に、まずは現場の騒音の事実を押さえておかなくてはならない。それには被害者が自力で数十万円という測定費を支払わなくてはならない。そして、それである程度のデータを得たとしても、行政的にはほぼ間違いなく「参照値以下」と言うことで切り捨てられる。

 現実的には、明らかに「参照値」を越えるような低周波騒音が出ているところは住めたモノではないのである

 行政の対応として最悪な具体的事例は拙サイトの「県の公害審査会調停委員会は“専門家”ではないのか」を参照して欲しいのだが、その要点は

「低周波音問題対応の手引書 平成166月(顔境省環境管理局大気生活環境室)」に記載されている物的苦情と心身に係る苦情に分けて示された,低周波騒音音苦情を的確に対処するための参照値と比較し,その値を超えるか否かで評価する。」

 「参照値と比較し,その値を超えるか否かで評価する」と、間違いなく“切り捨てガイドライン”として使用しているのである。しかし、実際にはこの「評価」で評価に値するような数値になることはまずない。それは「参照値」そのものが元々数値的にクリアできないようなレベルに設定されているからである。それは苦情を言っている被害者の「数値」を一番多く知っているはずの人たちがその「数値」を設定しているからこそ可能なのである。


−2.「参照値」のパーセンタイル(百分位数)

 「参照値」の決定に際しては、「パーセンタイル(百分位数)」と言う統計分析方法が採られた。パーセントとは違うらしいが何だろう、と言うのが最初の印象だった。

 統計学の本に依れば、「パーセンタイル(百分位数);非常に大きな集団で,これを100個のパーセントに分けたものをいう。上位5%点,下位5%点がとくに集団の特質や特徴を表すために用いられる。」と言うことである。

 例えば、学年の人数が100人のところでテストをし、現実的にはあり得ないが、点数が1点から100点までであったとしよう。この際、1点〜5点、95点〜100点の生徒により「集団の特質や特徴」が表されると言うことであると言う。では、仮に0点が50人、100点が50人であったとしよう。0点5人と100点5人により、「集団の特質や特徴」が表されると言うことであると言う事になる。良く意味の解らない話しになるので、実はこういった場合にはやはりお馴染みの平均点の方が適当で、パーセンタイルなどは使われないであろう。

 実際にこの分析法が常識的に使われているモノの代表的な例としては子どもの成育状況を見るための身長・体重などである。この場合、赤ちゃんの体重とか身長の平均値を単純に出しても、出産やその後の生育状況などで異なる要素が多いし、大きいはずなので平均値に意味がないのであろう。
 従って、同年齢に近い赤ちゃんの中で「家の赤ちゃんは大きい方か、小さい方か」とかは言えるが、”どれだけあれば良いとか悪いとか言うモノではなく”、「10パーセンタイル値以下のもの、および90パーセンタイル以上のものについて経過観察するよう医者が指導するようで、また、このすべてが異常というわけではなく、その間にあるものは、一応標準の発育をしていると考えてよいと思う。」というような場合に使われる。
 そして、このデータは何ヶ月検診とか何歳児検診とか、学校での集団検診とかで集められたデータであるから、日本のその年齢のほぼ全数調査と言っていいはずである。従って、明らかに「非常に大きな集団」、と言うより膨大なほぼ完全データであると言えよう。

 こうした場合にこそ、上下の5%と言うのは確かに特異な存在であるから要注意と言いうるであろう。



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