エコキュートを買う前に
エコキュートは本当に”経済的にお得”で、静かなのか
"科学的"知見の欺瞞 2/12
2.エコ
2−1.エコのエコ
最近の静音仕様のエコ機器で騒音的に問題になりそうなのは、「エコキュート」「エコアイス」の他に「コジェネ」などであろう(としていたが、昨今ではエネファーム、エコゥイルを追加し、「エコアイス」「コジェネ」などは駆逐されているようだ)。ここからは専門家から見れば間違いがあるかと思うので詳細については各自で当たってもらいたいが、素人の私が一応一生懸命調べた範囲内でこれらについて述べてみる。
いずれも「エコ」の観点から、夜間の電力(深夜電力or夜間電力があるがこれは契約状態により異なる)を利用する。(エネファーム、エコゥイルはガスを利用する。)
まず、一般家庭用の「エコキュート」を見てみると、以前の「ヒーター式電気温水器」との最大の違いは、以前のモノは割安の深夜電力(深夜しか使えない)を使い沸かし、それを保温しておくだけのモノであった。従って、温水を使い切ったら終わりで追い焚きは出来ない。
「エコキュート」は温水を追加できるようになった。が、追加分は文字通り追加で湧かすので湧き上がりにかなり時間が掛かり、台所のガスで湯を沸かす場合と電気ポットで湯を沸かす場合を考えてみれば良い。ここが電気温水器の一番の泣き所だ。要は電気ポットの大型のようなモノであり、基本的には機器の稼働状況は深夜ではあるが、「無音」であり、騒音問題が起きるような可能性は無かった。
これは、英国などの欧州スタイルの給湯システムと似たようなモノである。そのため欧州の古いホテルなどでは日本人旅行客が到着し一気にバスを使い始めるとお湯の出が悪くなり、二人目の時には不運にもお湯をが出ないという状況を経験した人もあろうが、それである。
この従来のヒーター式電気温水器は設置に30万円くらい、新たな日本の“エコ”機器の設置には一般的なモノで60万円以上掛かる(値段は変わる)。しかし、流石に「国、電力会社、メーカーが三位一体となった活動」なので、設置に際しては、以前のソーラー発電と同じように補充金制度(5万円〜26万円)がある。一般家庭用では新築で5万円、リフォームで8万円である。詳しくは「財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター」 を見ればいいのだが、これが非常にごちゃごちゃと述べている。
2−2 エコはエコか
これらの機器は、深夜電力を利用して”沸かし溜め”をするのを原則としているので、そのメインの稼働時間は深夜(およそ午後11〜午前7時)“という事になる。昼間の”追加沸かし”は可能になったが、そのために割安な深夜電力が使える訳ではない。と言っても、その替わり、使用電気料金に関して割引がある。しかし、本当に割安になるかどうかは各家庭の使用状況に依る。その割安さは電力会社のHPでは「家族4人の一般的な家庭で、月平均1,000円程度というバツグンのコストパフォーマンスです」と謳っている。
この”バツグン”を少し計算してみよう。単純にこれまでの「ヒーター式電気温水器」とエコキュートの初期投資の差額30万円を償却するには、”月1,000年→年12,000円。300,000円÷12,000円=25年”かかることになる。
ここで、少し参考までに、経済効果の視点から減価償却費の点を考えてみる。減価償却は自分で確定申告などをしている自営業の人にはお馴染みであるが、「固定資産のうち、建物や、自動車、備品などは使っているうちに古くなるので、価値がだんだん下がっていくので、決算のとき、価値の下がった分だけ資産としての価値も下げていく」と言うモノで、一般の人にとってはマイカーの下取り価格が年々下がっていく場合を考えてみればいい。
因みにマイカーの場合どのくらいの期間で下取り価格は0円になるかと言うと、税法上の減価償却期間は6年であるので、その後は会計上の資産的には無価値となる。実際は廃棄しない限り税法上帳簿には10%の残存価格が残るし、下取りに際しては値引き的にそれなりの金額は付くので所有者にとっては一応無価値ではないが、以前は零どころか解体処理費を取られることもあった。
では、こういった家庭用機器はどうであろうか。税法的には冷房、暖房用機器の減価償却は6年である。実際には6年で破棄するわけではないので、それ以後長く使っただけ会計的には儲けと言うことである。しかし、「主な補修用性能部品(製品の機能を維持するために不可欠な部品)は、製造打ち切り後、7年間保有しています。この補修用性能部品の保有期間を修理可能期間とさせていただきます。」というメーカーが多いので、新製品へのサイクルが速い当今では電気機器そのもの耐用年数は別として、10年が一つの目安であろう。因みに我が家の以前の家の給湯器は最初10年で壊れ、今のモノで15年経っている。
昨今では、この期間を大幅に超えて使用した扇風機やストーブが発火したり、不完全燃焼して死者までも出している。あまりの節約も命がけである。
税法上、減価償却資産と言うのは一体どのくらい保つ事になっているのであろうか。改めて税務署発行の青色申告決算書の書き方の「主なる減価償却資産の耐用年数」と言うページを見ると、建物を除く「機械装置」の最長減価償却期間は日本では25年である。そこに載っている最長は「手提げ金庫以外の金庫」の20年であった。
25年の耐用年数とは一体何であろうか。まさか、エコキュートが電気使用量の「バツグンのコストパフォーマンス」が本当に享受でき始める期間ではあるまいと思うがあまりの一致にビックリ。
ついでにPCを見てみると「サーバー以外の電子計算機」と言うことで5年である。確かに私の5年前のPCは今も使っている。既にお得期間に入っている。しかし、その間に本体に注ぎ込んだソフトは別にしても資産的にハード注ぎ込んだ金は元値と同額を軽く超える。ソフトは本体以上に金がかかる。今なら値段が元値の1/3で性能は数倍のモノが買えるのだから、本当は使えても効率を考えれば買い換えるのが正解なのだが、何せ先立つものがない。
基本的な話しとして、これらのエコ機器は電力会社が最大発電量(夏場の昼間)に応じて発電設備を拡充する事は最早“経済的ではない”し、国家的規模から見てもこれ以上の発電所の設置は難しい。各自が電力使用量の少ない夜間の電力を使い、エネルギーをお湯という形で貯え、それを昼間に使うことにより電力消費量の平均化を図り、全体のエネルギーの消費量を抑えようという意味あいがあるのだが、当面の結果としては機器メーカーが儲かる事ではなかろうか。一応、省エネと言うことでは合理的なのでエコではあるが…。
しかし、騒音的には技術者レベルがいずれも口を揃えて言うことは、「ファンの風切り音」と「ヒートポンプ」の音を無くすことはできないと言うことである。これこそが「低周波騒音の元凶」でもあるのだが。