低周波騒音問題 基礎の基礎 3/9

あるいは(超)低周波空気振動被害

 4)低周波騒音問題の増加

 普通の騒音問題自体は機械等の工学的”改善”によりここ数年減少しました。その改善の最大の手段は、一般騒音の”低騒音化or静音化”と言う形でなされました。

 この一番判りやすい例は冷蔵庫です。数年前からコンプレッサーの音は随分静かになりました。その方法はコンプレッサーの
回転数を少なくして音を低くする(回転数を少なくさせると音は低くなり、人間は聴覚的には人間には聞こえにくくなり、所謂一般の騒音の規制対象になっていません。極端なことを言えば、低い音の騒音はいくら出しても現在の騒音規制に引っ掛からないと言うことです。これを"悪用"しているのが(騒音の低周波音化による)今言われている”静音化”です。

 更に、一番電力を必要とするのは、モーター類の起動時であるため、低めのor少なめのエネルギー済むように、起動回数を減らし、常時回転稼働させておくということです。パソコンなどでは最近のモノは「ファン有り」でも驚くほど静かになってきました。これも低周波音化かもしれませんが、流石にこのくらいエネルギーが小さいのかほとんど気にならないのでしょう。

 しかし、幸いなことに、最近(と言っても5,6年前のもの)の冷蔵庫は、かなり静かで途中で電源も切れるようで、文字通り”低騒音化or静音化”されています。
 ただ、エアコンについては2,3年前のものでも室内機のファンを常に回転させておくことが必要らしく(この回転騒音は室外機の方が、室内の「静」より静かです)、切れることが無く、気になりだしたら気になって仕方なく、特に冷房で、微妙な温度にしておきたいときは、手動で「入・切」をするのですが、これが、一度切ると直ぐには稼働せず、その間に蒸し暑さが増し、音の気にならない状態での希望の温度という"贅沢な希望"にはまだまだ応えてくれていません。多分これでは「省エネ」・インバーターの意味が半減しているのかも知れません。


 「低周波音に法規制がない」と言うことは、後述する公害防止条例等の環境基準などの法的規制においても、全く評価外(規制の対象にならない)と言うことで、一般騒音外の騒音である低周波騒音は全くの無法地帯なのです。しかも、低周波音は”人体の健康には被害は生じえない”という”専門家”のお墨付きがあるのですから、騒音発生源者にとっては、騒音を低周波音にしてしまえば後はやりたい放題なのです。昨今の表現なら”脱法騒音”でしょうか。

 しかし、その結果は「騒音問題の減少=低周波騒音問題の増加」という形で環境省の統計数値にまで明確に現れてきました。まー、もちろん冷蔵庫の音で低周波音被害者が新たに出現したとは思いませんが、既に低周波音被害者になっている人には、エアコンと同じく稼働時間が長いだけに非常に辛い「音」であることは事実です。


 5)騒音問題解決への具体的対応

 現状に於ける騒音問題の現実的処理の第一歩は、実は極めて単純なことです。即ち、クレーマーになることを恐れず、早めの苦情早期解決がベターです。ベストは、騒音源を造らせないような「予備的予防措置」をとる事です。単純で極めて簡単な例としては、個人の家屋の室外機は隣家の有る自宅家屋の両側でなく、道路の面した側に設置する様要請すると言うような事です。これを”見栄えが悪い”とか思う人も居るでしょうが、「室外機は正面に置く}と言うことを建築デザイン的に確立すべきでしょう。これをどうまとめるかは業者への単純な課題です。

 ただ、残念ながら、これは日本の現状では”被害者予備軍”の無知
”加害者予備軍の”一般人の単純なる無知and業者の意図的無知を装った強引さ”によりほとんど行われておりません。ましてや加害者やその予備軍が「法規制外」「合法性」を持ち出した場合には被害者側には為す術が無いのが現状です。

 全く矛盾した話しですが、現実に事件が起きて、死者でもでない限り、警察が動かないのと同様、
現状においては被害が出てからでないと、(時既に遅しとなってからでないと、)問題解決への道は始まらないのです。よしんば、その後、防音の措置が成されたとしても、経費対効果からすれば非常に効率の低いモノです。

 と言ったことを念頭に置き、ひとまずは”合法的”に行政に訴えて問題を解決しようと騒音被害者が考えた場合は、何はともあれ、法的にはもちろん、まずは騒音(=音)に関して最低限の”理論武装”をしておくことが必須です。

 前書きが随分長くなりましたが、以下は、騒音源と闘おう、無理解な行政に行動を促そうとする騒音被害入門者のあなたに贈る序章です。



1 音の基礎

1−1 音の三要素

 人が音の違いを知覚することができるのは、単なる空気の振動である音を、中学校の理科で習った「音の三要素」と言われる、「大きさ(強さ)」、「高さ」、「音色」の感覚的な三要素の微妙な組み合わせの違いを判断しているからです。これらの要素に対応する主な物理的要素(単位)は、それぞれ「音圧(単位dB=デシベル)」、「周波数(単位Hz=ヘルツ)」、「音波の波形」です。

1−2 周波数(Hz)

音は空気の振動が縦波(粗密)として伝わるものですが、1秒間の振動数(1秒間に繰り返される音波の1波長の数)すなわち周波数により音の高低が決まります。人間は周波数の多い音を高い音、少ない音を低い音として知覚します。また、ある音の周波数を基準にした時に、他の1つの音が基準の2倍の周波数であるとき、この音は基準の音に対して1オクターブ上の音程であると認識します。1秒間に10回振動すれば10Hz、100回なら100Hzと言います。

一般的に人間の耳に音として聞こえる音(音波)の周波数はほぼ20Hz〜20,000Hz程度といわれています。これを人間の可聴域と言います。他の動物の可聴域は犬は1550,000Hz、猫は60〜65,000Hz、コウモリは1,000〜120,000Hzなどと言われています。

 
周波数の身近な例では、
人間が普段話す声はだいたい80Hz〜4,000Hz、固定電話機で伝わる音は400〜3,000Hzの範囲内と言われています。このため電話の音は直接の話し声より少し甲高く聞こえます。NHKの時報は始めの3音が440Hz、第4音が880Hzだそうです。

 
また、最も音域が広いと言われる88鍵のピアノの一番上の音(右端)はド(またはハ音またはC)で振動数は約4200Hz、一番下の音(左端)はラ(またはイ音またはA)で振動数は約27Hzです。ピアノは100Hz以下の低周波音を出すことができるのです。しかし、騒音の”専門家”とされる一般行政の環境系担当者の中には「低周波音(100or80Hz以下)は聞こえない」と思っている輩が少なくありませんので、それらの人間にはこの例を挙げて、「低周波音は聞こえる音である」事をまず「必ず講義」してあげて下さい。


 即ち、まずは
「低周波音は聞こえますが、知っています?」と言う質問をするだけで、”専門家(=この場合は行政担当者)”の低周波音に対する"知識レベル"を知ることができます

一般に音は人間の可聴域(聞こえる範囲)を中心にして、20,000Hz以上の音波は超音波80Hz(or100Hz)以下の音は低周波(low frequency)、20Hz以下の音は超低周波(infrasound)と区別して呼ばれています。また、音は一般的には音が小さい(=音圧が低い=dB数が小さい)場合には聞き取りにくく、特に、超低周波音は「人間に知覚されない」と”言われています”
 確かに、音としては聞こえない可能性はありますが、「知覚されない」と言うのは、地鳴り、海鳴り、等 (これらは超低周波音です)の例を考えると、少なくとも人を不安にさせるような「異常な感覚」を覚えさせることはこれまでの経験から間違いないないのですから知覚されないことはありません。もちろん感覚の鈍い人は何も感じないかも知れません。

 低周波音、超低周波音については、インナー・イヤーレシーバーと言われる耳に入れて聞く、iPodなどに付いているタイプ(私はあくまでイヤホーンと思うのですが)は2,3千円のものでも性能的には実は驚くことに6Hz〜23000Hz
と言う人間の可聴域を遙かに超えた周波数の音が出されているのです。
 特に低周波音に関しては、イヤーホーンではどうもがいてもその機構からして(小さい)物理的に発生し得ないはずですし、また同時に聞き取れないはずの音なのですから発生できようができまいが関係ないはずなんですが、「6Hzの音が出ているかどうか」と言うことに、技術者達はいたく拘るのだそうです。

 その理由は仮に聞こえなくてもその音が出ることにより聞き手の音の感じ方が異なるからだそうです。
この「聞き手の音の感じ方」と言うことが次に述べる音色とか聞こえないはずの低周波音に大きく関係しているのではないかと私は考えます。

 普通のスピーカーを通して音楽を聴く場合にはそのすべての周波数範囲が発生されることは必要ではなく、低音で40〜50Hz、高音で12,000〜13,000Hzまでの間が、歪が少なく再生できれば、音楽としての音色をほとんど損なうことなく、美しい、しかも生々しい音を聴きとることができるとされています。オーディオ装置のスピーカーのカタログを見れば製品間の差はあるもののおよそ40Hz〜60,000Hzのモノが主流です。
 
 最近普及しているホームシアター(
5.1chサラウンド)の低音部の再生を専門とするサブウーファーと言われる低音用の一番重いスピーカーは28Hzまでの低音(ピアノの最低音とほぼ一致しますね)を再生します。このスピーカーの音量を上げてみると「ボンボン」とか「ドー」と言う音が増します。これは、基本的には、映画などを視聴する際の迫力を増す事を使命としています。この再生音を強調しすぎると音楽などでは、その音域の楽器は無いのですから、むしろ音のバランスが崩れクラシック音楽などの再生には向いていないのでしょう。


1−3 音圧(dB)音色

日常生活でも経験するように余りに小さな音は聞こえません。従って、人間にとって「聞こえる、聞こえない」の可聴域は音圧(音の大きさ)により決定される要素がまずは第一でしょう。しかし、音が聞こえる限界は音の性質、聞く状況、音圧を測定した地点などにも影響されますが、音の高さ(=周波数)」によっても異なります。即ち、人間の耳は低い方の音でしかも音が小さくなってくると聞こえにくくなり、逆に高い方の音は比較的小さくとも聞こえるとされています。この事は後で述べる低周波音問題での焦点となりますので、ご記憶下さい。

 この音圧と周波数を加味し、聞こえるギリギリの大きさの音を最小可聴域あるいは聴覚閾値(いきち)と言います。しかし、この閾値には音の要素の中で最も音を音たらしめているはずの「音色」の要素は全く加味されていません。例えば、自分の家の車の音とか、同じ赤ちゃんでも自分家の子の鳴き声は子供ごとに区別できるのは音色によるのです。この段階では、感覚的な意味合いが相当加味されるため、現在の騒音の専門家」とされている理工学的分野の方々にはこの分析が難しい、と言うよりむしろできないのではないでしょうか。

 何故なら、簡単に言えば、聞き分けることはできてもその微妙な色合いと言うより音色は、普通の人にとっては、その感じを言葉で表すしか方法が無いわけで、言葉で表現すれば、日本語でも人による表現が異なるので、その違いを音圧や周波数のように容易に数値化できないからでしょう。更に、外国語との相関を考えた場合は、現実的に非常に困難となります。

 従って、当然のごとく理工学的見地からのみ創られている現在の騒音規制などの数値では音色的視点は全く考慮されていません。これが出来るのは恐らく別の分野の「専門家」なのでしょうが、騒音の規制に”別の分野の「専門家」”達はどうもあまり参加していないようなのです。私個人としては、可能・不可能は別として、こう言った規制の策定に関してはそれなりのより多くの分野の専門家達の参加が当然と考えるのですが、現実は必ずしもそうでなく全く不思議な事です。

 私的にはこの騒音規制から全く無視されている音色こそが騒音問題、特に心理的影響の強い低周波騒音問題を考える場合には必要不可欠な要素であると考えています
 
 積極的な証左は有りませんが、逆説的にその証左の一つに、低周波音不可聴域者(=”健聴者”)と低周波音可聴域者(=低周波騒音"苦情者")の間に音圧と周波数による聴覚閾値に差異がないと言うより、低周波騒音苦情者のほうが、むしろ閾値が高い、即ち、「聞こえが悪い」と言うことが公的機関(ズバリ言えば環境省)の実験により証明されているからです。

 従って、低周波騒音問題の本質を究明しようとするならば、本来ならば一体全体如何なる理由により低周波騒音被害者と低周波音”不可聴者”との間に被害者と否被害者と言う差異が生じるのか、そして、その差異には音圧と周波数による閾値が関係しないなら、如何なる原因により差異が生じるのかを研究する事こそこの問題の研究者、専門家が本来とるべき方向のはずです。

 しかしながら、騒音の「専門家」達は「聞こえないはずの音により被害は生じない」などと言う被害者の現実を単に全く否定するだけの非科学的な虚論を展開するに留まっています。これでは被害者の一人の方が言ってみえるように「見えないバイ菌では病気にならない」という理論と全く同様です。

 結局、現在の騒音専門家は決して音の「専門家」ではなく、問題を処理しきれるわけではなく、「聞こえないはずの音により被害は生じないのだから気にしないように」などと嘯いて済まそうという、単なる騒音問題の"処理屋"にしか過ぎません。


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