7 まとめ

 最後にもう一度日本における騒音公害の背景を挙げますと

@日本では、騒音問題は一般的に”日常的な些細な問題”として扱われ、騒音”ごとき”に声を荒立てる人間を”異常者”扱いする風潮がある。

A日本では、法的規制を含め騒音問題そのものがその件数の多さにも関わらず非常に軽視される社会的背景。

B日本では、被害者自身にも問題解決への面倒を嫌う性向が強く、こうした問題を表沙汰にし、問題をこじらせたくないと言う性行が強い。

 そして、以下は特に低周波騒音被害についてですが、

C世界的に類例が無く(風車騒音問題は世界にはたくさん有る)、日本では法的規制が全く無く(ない事は無いが実効的には無いに等しい)、野放し状態である。

D法的規制が無いため
行政の現場自体に低周波騒音問題に対する理解が無く、仮にあっても適切に処理しない。

E
加害者には加害者としての認識が全く無く、被害者から苦情を言われた加害者はむしろ逆に「とんでもない言いがかりを付けられた」と言う逆ギレ被害者意識を持つ場合が通常。

F一番悲惨であり、むしろこれがある意味全ての根本原因とも考えるのですが、低周波騒音に限らず騒音被害そのものは多いに感覚的な面が大きく、その感覚というモノは”個人差が非常に大きい”事です。では感覚の鋭い者だけが被害者となるかというと、必ずしもそうでなく、これこそ不明で研究すべき。個人的には、被害者に共通する何らかの本質的な資質が関係しているのだとズーッと考えているのですが、今もって全く未明。

 一方、全ての人間が低周波音被害者になり得る可能性は否定できませんが、同じ状況にあっても被害者が家族の中で「あなた一人」という場合が少なくなく、と言うよりむしろそれが「通常」であることを考えると、やはり、低周波音被害者に共通する「何らかの資質」が有るのではないかと思わざるを得ません


 もし、家族全員、あるいは近隣住民の複数人が”その騒音”に苦情(苦痛)を訴えるような場合は、まずは低周波騒音ではなく「普通の騒音」と思ってほぼ間違い有りません
。風車被害は複数人の場合が多いでしょう。

 この点に関しては世の「専門家」と言われる人々は意図的にか、あるいはあり得ないはずですが、本当の無知からか、低周波音被害と普通騒音被害を混同あるいは巧妙に
「問題の本質のすり替え」を行います。その具体的な典型的な例は公害等調整委員会の「低周波音が問題とされた公害紛争事件の処理について」に見られます。

 また、被害者個人には「そんな事を言っているのはあなただけです」と言う話しに持っていき、あなた個人の病気(具体的には「耳鳴り」or「気のせい」)とし、被害者がしつこく言い張れば最悪の場合あなたは「キチガイ」として処理されるかもしれません。


Gそして、国、”専門家”などが
低周波音被害を黙殺し続けなければならない最終、最大の理由は、騒音、就中、低周波音は現況では制御(防音)の方法が極めて高価である、あるいは、技術的に現実的にほとんど不可能と言ってよい状況であるためです。現実的に低周波音の厳しい規制は日本のような貧困な国土と住宅事情(建物自体or住環境)の国では国全体の経済活動の停滞あるいは究極的には停止を招く恐れがあるとまで言い切る専門家もいるくらいです。


 即ち、この問題を根本的に解決することは、@技術的に非常に難しくA更にその恩恵はたまたま被害者になってしまった人にだけしかもたらされないと言う、非常にコストパフォーマンス低いモノです。

 もし、解決が相当に安い金額で、ある業界や政治家に大いなる経済的利益があれば既に何らかの方策が成されているでしょう。その良い例が住宅建設業に"少なからぬ利益"
をもたらしたと言われる「シックハウス対策」です。そう言った意味ではこの問題も多くの公害がそうであるように極めて政治的・経済的問題です。


 ”運悪く”も低周波騒音被害者となってしまった場合、現在のところ、機器の設置不具合、整備不良などにより低周波音が発生している場合はそれを修理させて改善させると言う場合以外は、合法的な解決法は基本的にはありません。

 しかし、「それでも何とかしよう」と考える場合は、まずは被害者自身のあなたが、低周波音騒音問題と言うモノが現在おかれている状況と騒音源者側の理屈をある程度”お勉強”し、法の盲点を突くと言う程度でなく、根本から「法に立ち向かう」くらいの覚悟が必須
となります。

 有り体に言って、「この苦境を何とかしてよ」と誰かに縋っていても決して問題は解決しません。
 
 本来ならこの問題は、問題発生以前に手を打つという予防原則(予防的措置・Precautionary Approach)措置が採られることが望ましい。
 しかし、日本に於いては残念ながら、「環境保全などに関する政策において具体的な被害が発生しておらず、また、科学的な不確実性があっても予防的な措置を取って影響や被害の発生を未然に防ぐ予防原則そのものを明確に導入した法規制はない。」と言うことである。

 従って、次善の策と言うより究極の対策は、できれば極めてごく初期の段階で、できれば設置される以前に、被害発生を予告して、手を打つことが必要である。特に風車などは一応調査の段階で何らかを知ることはで切るはずであるから。本当に、これこそ将に知らないと最終的には引っ越しなど「大きな損」をすることになります。


付録  深夜騒音等の規則に対する罰則

 最後に非常にショックな事を付け加えておきます。それは、あなたの騒音源がよしんば可聴域の騒音で尚かつ環境基準に違反している場合に騒音源側に課せられる罰則です。これはほんの一例ですが、それはあくまで加害者側に”負担”にならいよう”配慮”されており、結局は相手方の”良心”に依るところ大、と言うより、むしろ全てなのです。これが騒音問題がおかれた実情です。


(深夜騒音等の規制)

第二八条 飲食店営業等に係る深夜における騒音、拡声機を使用する放送に係 る騒音等の規制については、地方公共団体が、住民の生活環境を保全するため 必要があると認めるときは、当該地域の自然的、社会的条件に応じて、営業時間を制限すること等により必要な措置を講ずるようにしなければならない。
第六章 罰則 第二九条 第十二条第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。

第三〇条 第六条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした 者又は第十五条第二項の規定による命令に違反した者は、五万円以下の罰金に 処する。

第三一条 第七条第一項、第八条第一項若しくは第十四条第一項の規定による 届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者又は第二十条第一項の規定による報 告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、 妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。

第三二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第三三条 第十条、第十一条第三項又は第十四条第二項の規定による届出をせ ず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。


 もし私が騒音源の経営者なら、設備の改善に数百万、あるいは時としては何百万、何千万、下手をすれば億単位の費用を必要とするなら、苦情者から何を言われても無視し、行政からの「勧告」「命令」も聞き流し、”最悪で”罰金を払って済ますでしょう。少なくともこの違反行為にはゼロを最低2つは増やさないことには改善はあり得ないでしょう。

 世にザル法は多く存在しますが、騒音規制に関してはザルにもなっていません。底抜けです。

 騒音公害が何故にかくまで軽々に扱われるのか。その最大の理由は、(低周波音)騒音で人は死ぬほど苦しみますが、「低周波音は直接人を殺しはしない」からでしょう。しかし、低周波音がもたらす被害の苦しさ故に自殺された方もみえると聞いています。でもその場合の死因は決して騒音ではありません。あくまで勝手に自殺したのです私自身もその直前まで行きましたので死にたくなる様な気持ちは非常に良く解りますが、ひとまず、その前に騒音の無い場所に一時的にも緊急避難して、時間を過ごして見てください。何らかの道が見えてくるかも知れません。


 この文は元より私のサイトに何度も出現する"専門家"とは一体どういった類の存在であるかを、解りやすく説明してくれている新聞記事が08/10/31の中日新聞(関東地方では「東京新聞」)に「御用学者・評論家」増えるワケと題して掲載されました。私どもは当にこういった存在と闘っています。まー、こちらはそのつもりでいるのですが、相手にとってはたかが素人、毛ほどの存在ではないでしょうが…。

 低周波音問題に限らず、解決困難な問題の行く手を大きく阻む最大の存在は、「産官学の癒着」の存在であり、少なくとも低周波音問題においては一連の御用学者の存在を否定することはできません。そして、以前から公害等調整委員会では行政に味方するかのごとく、否定され続けてきましたが、昨今では、この問題にもっと無知な一般の司法の場に出されるようになりましたが、当然ながら司法界はこの問題に無知で有り、特に裁判官は。全く無知と言って良い存在で、もっと多くの事例を学んでいただくことが必要でしょう。


 なお、低周波音被害に関してさらに詳しくお知りになりたい方は拙サイト(HOME)汐見文隆医師の著作等をご覧下さい。

 051029,050612,050327,050221
060903,060507,060503,060312
071221
081104,080127,080119,080103,
140818,141120


1 HOME