低周波騒音問題 基礎の基礎 8/9

あるいは(超)低周波空気振動被害

6 低周波音の鑑別

 現在あなたを苦しめている騒音が「普通の騒音」であるか、「低周波騒音」であるかは、正確には低周波音が測定できる測定器で測定してみない事には解りません。しかし、行政が「待ってました」とばかりに低周波音の測定にホイホイと動いてくれる事はありません。というのは、

 @低周波音に関する認識、知識、理解がない(市町村の環境担当課は一応国からは専門家と言うことになっていますので本来ならあり得ないのだが、ほとんどそうです)
 A低周波音用の測定器がない(市町村に無くても県レベルではあるはずですので、借りて測るように言いましょうor県に直に交渉する)
 B元々やる気がないという行政の怠慢(論外ですが、やらないとなったら意地にでもやらないでしょう)

 など、容易ならざる状況があります。その重い腰を上げさせるために、その騒音が「普通騒音」であるか「低周波騒音」であるかを事前にある程度見当を付けておくのが良いのですが、比較的簡単に判別できる方法を汐見氏の著作より引用します。

 もし、下表によりその騒音が低周波騒音の可能性があれば、被害者自身がそれなりに”お勉強”しておかないと行政に良いようにあしらわれる可能性が大です。特に
行政が低周波騒音計を持たないような”無知””無理解”な自治体である場合には、自分自身がこの「被害の現実」「一から教えてやる」位の意気込みが必要でしょう。

表4 騒音公害と低周波音公害との鑑別表
騒   音 低周波音
感覚 聞こえる 感じる、わかる
被害の表現 やかましい(うるさい) 苦しい(うるさい)
被害の実際 聴力障害(不定愁訴?) 不定愁訴(不快感)
被害の状況 戸外できつい 室内できつい
戸や窓 閉めたら楽 開けたら楽
テレビなど 楽になるとは限らぬ つけたら楽
振動 伴わない きついと伴う
個人差 少ない 著しい
普通騒音計 測定できる 測定できない
対     策 耳栓 有効 無効(憎悪?)
遮音壁 有効 かえって憎悪
閉め切る 有効 かえって憎悪
防音室化 有効 かえって憎悪の恐れ
難易さ 対策は容易 対策は極めて困難
経過 慣れてくることもある 鋭敏になっていく
規制基準 あり なし
汐見文隆 著 「道路公害と低周波音」より(P.50)

 
 特に
「戸や窓」の開け閉めによる判別は非常に簡単である上に極めて有効な方法であると私の経験からも考えます。これは閉め切った部屋では普通騒音レベルの周波数はある程度遮断されます。しかし、低周波音部はほとんど遮断されないという特性を持っており、高周波部分が遮断された分、低周波音が相対的に強調されることになり、むしろよりよく聞こえ、苦しさが増します。開け放つと他の高周波の騒音と混じり合い低周波音が聴覚的に打ち消され(マスキング)比較的楽になります。マスキングについての詳細はこちらのサイト「聴覚のマスキング」をご覧ください。

 もし、測定が可能なら、汐見氏はこれまでの多くの現場での測定から

 現場に於いて、およそ
10Hz〜40Hzの間に卓越周波数(ピーク)があるかどうか、そしてその値が(木造の日本家屋で)60dB前後(55dB以上。過敏化すれば50dBでも苦しい)であるかどうかを目安とするとしています。最近では調査の積み重ねによりもっと少ないdB数でも被害があるとされています。

 また、
音源の停止と共に症状が消失し、同時に測定値のピークが消失すれば(20dB前後低下)ほぼ間違いなく低周波音による被害「低周波症候群」であると診断されます。ただし、環境省はこれを認めていません。


 最近の私の考えでは絶対的な音圧は必要ではなく、環境によりその数値は異なり、特に静かな環境では明らかなピーク値(卓越周波数)は示されない場合も有ると考えています。それは何の被害もない普通の状態でも測定器に定在波or暗騒音と言われる形で40〜50dBの数値が計測されてしまうからです。そう考えないと、閑静な住宅地に於けるエコキュートの12.5Hz-45dBGで低周波音被害者が出ていることの説明できません。

 
定在波程度の「問題の無いはず」の騒音で騒音被害が生ずるのは何故か。それは繰り返しになりますが、音の質とも言える騒音の機械的な音色(例えば唸り)が継続的に鳴り続けることに問題が有るとしか考えられません。


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