ヨガの科学によると、延髄には「ブラフマの口」といわれる生命エネルギーを体内に取り入れる場所があります。そこから取り入れられた生命エネルギーは一旦脳に蓄えられ、そこから脊髄を下って、そこに並ぶ生命エネルギーと意識の5つの中枢(チャクラ)の中に入り、さらにそこから身体各部と感覚器官に送られます。こうして我々は身体と外界を認識できるようになるのです。ほとんどの生命エネルギーは身体各部と感覚器官によって消費されてしまい、より高い目的のために使うことができないのが現状です。
クリヤヨガでは、心理生理学的な方法により、この生命エネルギーの流れの方向を逆転させます。臓器などの身体各部と感覚器官から生命エネルギーを撤退させ、脊髄に還流させます。この状態をつくることを「脊髄を磁化する」と呼んでいます。生命エネルギーを強力に引きつける磁極を脊柱の最下部と脳内につくりだす具体的な方法がクリヤヨガの行法です。クリヤを行うと無理なく自然に心臓の鼓動が低下し、静かになります。さらに生命エネルギーは五感からスイッチを切ります。こうして心は自動的にプラティヤハーラの制感の状態に入り、存在の意識的な状態に到達します。現代インドの聖者ニサルガダッタ・マハラジが教示するところの「私は在る」という感覚がはっきりと目覚めてきます。ニサルガダッタ・マハラジは言います。『自我の殻の監獄から出るには、監獄の扉の前に立たないといけない。壁に向かって立っていても永遠に出ることはできない。「私は在る」という自覚を持つことが扉の前に立つことである』
プラティヤハーラが達成されますと、ダラーナ、サマーディと自然に進行し、最後に至高の存在と完全な合一を実現できます。ニサルガダッタ・マハラジが言うように、まずはプラティヤハーラによって扉の前に立つことです。扉の鍵を開けることがダラーナであり、扉を開くことがサマーディです。
脊髄を磁化するために脳内のある部分を磁極に変換することは述べましたが、この部分をビンドゥ・ヴィサルガ(月)といいます。ここではアムリタ(甘露)が分泌されます。通常、アムリタは太陽神経叢(太陽)で消費されてしまい、全身の細胞にいきわたることはありません。こうして人は老化をしていくのです。月から太陽へと流れるアムリタを逆流させれば老化は防げるはずです。このことはヨガの聖典にも記されています。クリヤを行うと、この逆流が生じます。しかもビンドゥが強力に刺激されて、アムリタの分泌量が増大します。これはクリヤの最中に甘い味覚が口の中に広がることからも確認できます。逆流と分泌量の増大により、アムリタは太陽神経叢で消費されずに全身に潤沢にいきわたり吸収されます。逆流したアムリタは脳のより高等なセンターのその源に戻り、その結果、高い心境を経験します。一種の静けさと静寂を感じ始めます。例えあなたの心が混乱していたとしても、突然落ち着きを取り戻し、静寂の輝きの中で幸福を味わうことができます。あなたは完全な輝きを感じ、目で見、耳で聞き、鼻で香りを嗅ぎ、舌で味わい、肌で触れて、あなたの周りのものすべてを知覚できます。しかし、心は動かず、不動のままにとどまります。まるで時間、空間、物質、事象は静止したように見えます。世界全体は機能を停止するのです。
この状態は、ゲオルギィ・イワノヴィッチ・グルジェフが人間の意識段階を4つに分類したうちの最高位にある「客観意識」に相当します。「開明した」状態であり、物事をあるがままに見られる覚醒の状態です。グルジェフは、普通の人は目覚めた眠りの状態にあるといいます。目覚めていても自己の思い込みや固執、執着という幻影の中に生きているのです。世界をあるがままに見ることはできないのです。
人間は眠りの状態にある。
目覚めぬうちに彼は死ななければならないのか。
(モハメッド格言集) |
アムリタが分泌されると、それは脳の中心に位置する松果体に働きかけ、松果体は身体組織を活性化させるシステムを通してホルモン類を分泌し始めます。そして「神聖な蜜」あるいは「生命の水」と呼ばれる甘い味覚を生じさせます。この味覚は全く心地よく、大きな幸福感を与えてくれます。アムリタにはセロトニンが含まれています。セロトニンは脳内麻薬であるエンドルフィンの誘導体です。アムリタは飢えと渇きの感情を取り除きます。これは痩身法としても利用されました。これによってヨガ行者たちは、不飲、不食で長期間過ごすことができました。最近インドで70年間も不飲・不食のヨガ行者が発見され、インド政府が調査・研究に乗り出したことが報じられました。このヨギは8歳のころ女神様に舌を触られたことから不飲・不食になったといっています。舌をケーチャリームドラーにすることによって、ビンドゥが活性化されアムリタが盛んに分泌されるようになります。このヨギを調べた医師団は太陽エネルギーを取り入れていることが原因ではないかといっていましたが、ビンドゥつまり月に秘密は隠されているのです。
アンチエイジングに及ぼすクリヤヨガの効果を調べてみましょう。
エイジング(加齢、老化)の原因として、大きく2つの仮説をあげることができます。
【仮説1】人体を構成する細胞の分裂更新により維持 される細胞の寿命は、生まれたときから遺伝子に プログラムとして組み込まれ、この分裂更新は、染 色体端末部のテロメアDNAと呼ばれる分裂可能回 数券を使い切ると、停止するという「プログラム仮 説」
【仮説2】細胞内のミトコンドリアや細胞膜などに過剰 に発生する「フリーラジカル」(化学構造上、不対電 子をもつ分子、原子団)や「活性酸素」により、ヒト の遺伝子(特にミトコンドリアDNA)や細胞膜などが 酸化・傷害され、遺伝子の自己修復能力を超えた 傷害の蓄積により、細胞が老化するという「酸化ス トレス仮説」
「プログラム仮説」を解決するには、テロメラーゼが有力だと考えられています。がん細胞は分裂を止めることなく不死と化して増殖し続けます。これはテロメラーゼの働きによるのです。健康な細胞はしまいには分裂を停止して死んでいきますが、テロメラーゼを投与することによって分裂を続行させ、細胞を若返らせることができるのではと考えられています。
「酸化ストレス仮説」の解決には、ビタミンCなどの抗酸化作用の強い食品を摂取することや、活性酸素を減少させるスーパーオキシドジムスターゼやヒドロキシルラジカルという遺伝子を導入することが考えられています。
クリヤを行うと、アムリタが全身の細胞に浸透して、ミトコンドリアを増殖させる働きをすると考えられます。ミトコンドリアは細胞のエネルギー供給源ですから、細胞の自己修復能力を復活させ、酵素テロメラーゼの活性化が起こると考えられます。また、脊柱を磁化することによって心臓などの臓器から生命エネルギーが撤退し、臓器の働きが停止状態になります。このとき、呼吸も停止し、活性酸素等の吸入を抑えることができます。もちろん、休止中の細胞内では、活性酸素は減少し、ストレスや損傷した箇所を癒す働きによってリセットされます。このように自己修復能力が回復するのです。
ババジは不死身の大師です。現在もヒマラヤ山脈に生存しています。ババジはクリヤヨガの進歩した修行に必要なカヤ・カルパを通して不死身の身体を獲得したのです。カヤ・カルパは「不死身の体」を意味します。カヤ・カルパを実践するには90日間の隠遁生活が必要です。しかもアーユルヴェーダの医師の管理の下で行わなければなりません。これは忙しい現代人には不向きです。鹿野苑では現代人にも簡単に実践できる古代から伝わる「若返りプラクティス」〔クリヤヨガディクシャを受けられた方にはオプションとして教えます〕を用意しています。これはヒマラヤのヨガ行者が実践してきたもので、100年以上の長期間、完全な健康状態をヨガ行者に与えてきました。このプラクティスは主に内分泌腺とチャクラに働きかけます。すべての内分泌腺がお互いに最適な分泌量で、そして完全なバランスでホルモンを生産するとき、身体は老化しません。これはホルモンの作用によって、正常な細胞内のリボゾームからテロメラーゼ酵素が生成されるからだと考えられます。もちろん癌細胞のような異質な細胞に対しては強化された免疫機能が働き、これを排除します。また古代のヨガ科学によりますと、各チャクラは相応の角運動量すなわちスピンをもっています。チャクラスピンはサイエネルギーをコントロールします。健康な場合、チャクラスピンは高速で回転しています。ストレスや加齢等であるチャクラスピンの回転が低下すると、そのチャクラに関連した身体的部位に疾患が生じます。「若返りプラクティス」は、すべてのチャクラスピンを25歳の人のレベルにまで引き上げます。このようにして20代の健康な体に戻すのです。また、身体にクンダリーニの体験を受け入れるための準備にもなります。「若返りプラクティス」は2種類の行法から構成されています。肉体レベルの行法と精神的レベルの行法からできています。肉体レベルの行法を実践しますと、性エネルギーが強力に活性化され、膨大な性エネルギーが溢れ出てきます。この膨大な性エネルギーを、より上質で精妙な高次のエネルギーに昇華・変換するのが精神的レベルの行法です。高次のエネルギーに昇華・変換された性エネルギーは、脳細胞と脳神経系統に作用し、脳機能を進化・向上させ、宇宙意識を受け入れる環境を強力に創り上げます。それだけではありません。「若返りプラクティス」を実践することにより、ヒーリング能力が目覚めてきます。このヒーリング能力によって、自分はもちろん、他の人々を肉体的苦痛や疾患、精神的不安から救うことができるのです。
アンチエイジングを古代ヨガの叡智によって成し遂げることができるのです。若返りプラクティスやクリヤによって遺伝子レベル、細胞レベルから肉体を改変し、しかも肉体を変えるだけではなく、精神にも大きく働きかけ、拡大させます。変わることのない至福の歓喜とともに、何ものにも囚われることなく自由に生きていくことができるのです。
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マハームニ・ババジ・マハラジャの肖像画
これはヨガナンダが弟の画家に描かせたものです。しかし、実際にババジに会った人たちがこの絵を見て、少しもババジに似ていないと批判したことがありました。私は以前に実際にババジにお会いしましたが、姿形はこの絵の通りでした。長い髪に、腰布だけをつけた若さあふれる御方でした。(もちろん、「ババジ」という書籍に載っているババジではありません。インドにはババジと名乗る人がたくさんいます。不思議なことに、彼らをラヒリ・マハサヤの師であるババジであると勘違いしている人がいることも事実です)ラヒリ・マハサヤの師であるババジにお会いして強く印象に残っているのは、師の目です。海のように深く澄んだ瞳は、一切を見通していながら、すべてを許している目でした。批判や評価をしようとする影はまったく感じませんでした。すべてをそのままに受け入れているのです。大きな愛に包まれている安心感がありました。
このとき、私は直接ババジからクリヤヨガのディクシャ(イニシエーション)を授かりました。そして、私はニルビカルパサマーディの宇宙意識へと導かれたのです。 |
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