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再挑戦(3/3)
はじめに
平成23年3月2日のNHK『ためしてガッテン』で魚の三枚下ろしが僅か15分でマスターできるとのコツを公開した。早速録画した。
大型の鯛での三枚下ろしに挑戦する前に小型の鯛で練習すべきだった、と深く反省していた矢先のタイミングよい放送に敬意を表しながら翌3月3日に近くのスーパーに出かけ、標準サイズの1Kg980円の尾頭付きの鯛(養殖もの)を購入。刺身としての賞味期限は3月5日だった。
挑戦
頭の切り落とし方はマスターした。エラの直ぐ横にある大きな胸鰭の下に包丁を当て、背骨を挟んで上下両側の二回の作業に分けて切込みを入れた。魚体を裏返して同じ作業を終えると頭部と魚体は背骨だけで繋がった状態になる。最後に背骨だけに包丁を当てて力を込めると、簡単に切断できた。
エラなどを除去した頭部を分解するのは面倒。そのまま煮て食べた。筋肉部分は美味しかった。
内蔵を除去するために腹部の膨らんだ部分に包丁を当て、切り裂いた。内蔵がどさっと出てきた。でも、どの部分が食べられるのか、食べられないのか分からなかった。消化管と推定したものは破棄し、筋肉質を感じさせる塊だけを取り出して煮た。特別美味しいとは思わなかった。
レントゲン写真で見た魚の骨格構造の予期せぬ特異性に驚いた。魚体の外側に付いているヒレを動かす筋肉を支える骨は、ヒレ側だけではなく魚体の中心を支える背骨側にもびっしりと付いていた。細い第二の背骨からその両側に向って小骨が出ているようなものだ。
第一ステップとしては、包丁はその細い背骨に沿って切れ目を入れるだけではなく、魚体の中心に向って小骨の上を滑らせるようにしながら少しだけ切り裂くのだ。
同じ作業を魚体の反対側にも施した。
第二ステップでは、包丁の代わりにステーキ用のナイフを使い、最初に切り込んだ切れ目からナイフを挿入し、ヒレを支える骨の上を滑らせながら背骨まで切り込みを入れればよいとの説明だった。このときには骨を切らないため力は殆ど不要との補足説明。
でも、私はまたもや失敗した。我が家には食事用のナイフが二種類あった。鋸のような歯が付いている物と歯のないナイフだった。テレビでの説明ではステーキ用だったので歯付ナイフを使った。その結果、魚肉が見るも無残な状態に切り裂かれた。写真に撮るのも恥ずかしくて省略した。
第三ステップでは、魚体の端を持ち上げて包丁を背骨に直交させて挿入し、背骨に沿って移動すれば半身が切り取られる筈だった。でも、我が鯛は既に身がボロボロに分断されており、綺麗な柵とは無縁の形になっていた。
NHKの番組に参加した素人の四人の三枚下ろしは綺麗な出来栄えだった。我が体験から、これら四人の三枚下ろしはプロが殆どの作業を担当し、撮影の瞬間だけ素人が恰も作業をしているかのように視聴者に見せているのだと推定した。
今回は再生録画を一ステップ刻みに見ては再生を中断し、実際の作業に取り掛かかった。その作業を繰り返した。でも、失敗したのだ。
他の原因として考えられるのは、魚体が少し柔らかかった点にある。少し古くなっていたのではと疑っている。この魚体は発泡スティロールの舟形に納まり、サランラップで巻いてあった。次回はスーパーではなく、松坂屋豊田店に出かけ、氷の上に並べられている鯛を購入して挑戦したい。
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■第3回目(寒鰤に挑戦)
(平成23年2月4日脱稿)
60年以上も前、昭和20年代前半の小学生の頃、父は年末に大きな鰤を一本買い求め、筵(むしろ)に包み土間の梁から吊るしていた。冷蔵庫は勿論なかった。鰤の価格は玄米一俵(60Kg)くらいだと教えてくれた。
福岡県遠賀町の我が生家は、正月専用の家宝のごときどんぶり(有田焼?)に茹でた丸餅3個を入れ、鰤とスルメや野菜が入ったスープを掛けて食べながら新年を祝う習慣だった。兄弟姉妹7人を含む9人家族だったので、10Kgサイズの貴重な鰤も僅か1週間で食べ尽していた。
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はじめに
私の好きな座右の銘の一つは『君子は豹変す』。人生では初心忘れるべからず、とばかりに初期の方針を頑なに守り続けるのがベストだ、と考える合理的な理由は存在しない。昨年12月のような大型の天然鯛(5.56Kg)の調理への挑戦はさっさと諦め、今回は亡き父を思い出して天然寒鰤の手抜き調理に転進。
今冬の異常寒波では海流までもが影響を受けたらしく、味では日本一と賞賛されている富山湾の氷見の寒鰤は歴史的な不漁に見舞われて暴騰。偽物が出回るほどの騒ぎとなった。一方、長崎県壱岐島では対照的な大漁で暴落。インターネットで寒鰤の販売元を発見。
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寒鰤
@ 漁師島
http://www.ryoushijima.com/
何時もの習慣から電話でいろいろと質問した。大物は毎日獲れるとは限らない。注文には時間に余裕が欲しいとの要望。一週間先の1/24(月)を指定した。すると前日の1/23(日)は市場が休みとの理由で翌1月25日に変更させられた。直ぐに確認のメールを受信。
石松 良彦様
漁師島/店長の平田でございます。先程はお電話ありがとうございました
この度は数あるネットショップの中から[漁師島]の商品を選んで下さり本当にありがとうございます。漁師島より御礼申し上げます。
今回、石松 良彦様からのご注文を以下の内容でお受け賜りました。お間違いが無いか再度ご確認下さいませ。お取引終了まで全力で務めさせていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
商品ご到着までしばらくお待ち下さいませ。
天然寒ブリ6キロサイズ/1本丸もの。1月25日/五枚おろし(片身皮取去り)
出荷日:1月24日
ご到着日:1月25日(火)着
クロネコヤマトのクール冷蔵便でお届け致します。
老人老婆の二人暮らしでは10Kgの鰤は大きすぎるので、味覚は多少落ちても6Kgで我慢した。
漁師島は無料で下処理をしてくれるそうだ。おまけに今回は送料も無料。価格は豊漁で市場価格が暴落し8,514円。何故半端な価格になるのか野暮な質問はしなかった。でも、僅か一週間後の1月末には同じ寒鰤の価格が11,900円に値上げされていた。
片身は刺身用に皮を取り、残りは皮剥ぎの教材と他の料理(鰤と家庭菜園の巨大化した大根とを一緒に煮るなど)に使うべく皮付きと指定した。『下処理には牛刀を使うのか、出刃包丁を使うのか』と質問すると『刃渡り15cm程度の出刃を使う、大きな包丁は怪我をし易い』との即答。
牛刀についてはその名前から誤解していた。牛の解体に使う頑丈な出刃包丁かと想像していたら、肉を薄く切るのが主目的の単なる薄刃の西洋包丁の別称に過ぎなかった。20年以上もの昔、海外出張の折にフランクフルト空港の免税店で買い、今でも愛用しているゾーリンゲンの包丁そのものだった。上の写真は、西洋包丁(牛刀・刃渡り10インチ=25.4cm)と結婚以来使っている刺身包丁。
蛇足。免税店で買った包丁ならば機内持ち込みも可能かと思ったら、機長預かりにさせられた。帰国時にJALのカウンターで受け取った。
我が挑戦内容は、直方体の柵を作り、同じ大きさにスライスし、食欲をそそるように大皿に格好良く刺身を並べる作業だけだ。
A 天然物
我が友人(高校同期・事業に成功した北九州市在住の会社社長・贅沢三昧の生活をしている物知り)に天然鯛と養殖鯛との味覚に大差を感じたといったら『当たり前だ。養殖鯛の餌はドッグ・フードと同じ物。しかも病気の発生を防止するため薬漬けだ』と解説したので、一気に食欲が減退。鰤でも味覚差は発生しているのだろうか?
漁師島のホームページの宣伝を読者のご参考になればと転載。変な表現になっている日本語は適宜勝手に推敲して添削した。
富山氷見のブリとは違ったこだわり。それは一本釣りで一本一本釣り上げて活き〆・血抜き・神経抜きしたこだわりの寒ブリ。
年末年始は最高にセリ値が高くなりますが・・このピーク時を過ぎるとグゥ〜ンと暴落。今は年末年始の半額以下・・安かろう悪かろうではない。同じ一本釣りの寒ぶりなのにセリ値が暴落しただけの寒鰤である。安すぎて不安な方・・まずはお試しに半身フィーレを食してみませんか?
B 優れた漁場
シベリア大陸から流れ込む寒波・・北西の冷たい風が朝鮮半島を通って対馬海峡に襲い掛かる。逆に海流は黒潮系の水塊と東シナ海の沿岸水が混ざり合って対馬海峡に流れ込む暖流。更には・・対馬海峡の海底には南北約28キロメートルに及ぶ浅瀬が連なっていることにより、潮の流れが最適条件に達し居心地の良い場所となって、小魚達が群れを成して生息するという・・
まさに大自然の方程式通りに育まれた漁場であります。小魚が群がるそんな漁場には、大物の魚達が餌となる小魚達を追い求めて集まってくる・・そんな絶好の場所が壱岐の島漁師達のホームグランドである。
C 一本釣り漁法
ネットショップで売られている殆どの寒鰤は、日本海で操業する底引き網や定置網で捕れた網物と呼ばれるものでございます。この網物は一網打尽に網で掬い上げ、魚同士がぶつかりあったり網で擦れたりして身の状態が悪く・・一本一本血抜き処理などする事も出来ずに市場へと流通して行く、まさに二流品なんです。
しかし、・・壱岐島の漁師は昔先代から教え込まれた漁法をひたすら貫いています・・その漁法が一本釣りです。仕掛けや具体的な内容は伏せて置きますが、一本ずつ餌に食らいついたら上げる、という作業の繰り返しを行っています。そんなに一気に釣り上げられるものでもなく、地道に辛抱強く行う漁法であります・・だからこそ本当に値打ちのある寒鰤であります。
D 鮮度が命(完璧なこだわり)
網で捕った野〆なんかもってのほか・・壱岐島漁師はこだわっています。一本釣りだからできるこの処理。吊り上げたら直ぐに神経抜きを施す・・高度な技を要する作業。中骨の神経を独自の道具で抜いてしまう事で、身の状態を活きている時の状態に保つ処理であります。
その後・・血抜き処理を完璧に施します。血抜きしたら海水で完璧に水洗いして血をきれいに取ってしまいます。この作業は一本釣り上げる度に全て船上で行っています。
E 配送プロセス
こだわりの寒鰤は船が寄港するまで船上で氷漬けされています。寄港して水揚げ後即市場のセリに掛けられ魚屋さんがセリ落とし、魚屋さんは次の作業に取り掛かる・・そう下処理作業です。お客様のご要望通りに下処理を行い、迅速に梱包作業をする。
そして・・完璧な梱包作業が完了したら・・クロネコヤマトのドライバーへ渡し・・PM5:40にはフェリーに積み込み壱岐島を出発する、という迅速なプロセスを貫く。水揚げされてドライバーに渡すまで僅か4時間の勝負です。
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調理
@ 到着
石松 良彦 様
漁師島の平田でございます。毎度ご愛顧誠にありがとうございます。
お待たせいたしました。ご注文頂きました商品は本日1/24出荷させていただきます。16時頃にクロネコヤマトのドライバーへお渡しいたします。ご到着までしばらくお待ち下さいませ。
今回のご利用及びお買上、重ねて御礼申し上げます。
1月25日15:00に待望の寒鰤が氷漬けにされて到着。5枚下ろしで注文したのに3枚下ろしになっていた。然したる問題ではない。総重量は5.4Kg。尻尾や鰓(エラ)などが除去された結果6Kgの1割減だ。皮付きの半身が2.0Kg、皮剥ぎ済みは1.6Kg。同梱されていた3袋のアラ(頭部+カマ+その他)は合計すると1.8Kgだった。頭部とカマは程よい大きさに分割されていた。
A 柵作り
皮なしの半身を刺身包丁で慎重に分割。骨抜き済みの身は大変斬り易かった。この程度だと私でも苦労するまでもなく楽に出来た。
B スライス
レストランとは異なり見せ掛けばかりの枚数を増やすニーズはない。贅沢感を味わうべく豪快にと2.5cm前後の厚さに斬った。血抜きは完璧だった。真上から撮影したため写真では厚さが分からないが・・・。
後日、テレビ(料理の基本講座)で美味しく感じる刺身の盛り付け方を学習。薄くスライスせざるを得ないふぐ刺しの盛り付方法とは異なり、将棋倒し後の駒のように、厚味が分かるような斜めにして並べるのだそうだ。白い大根の千切りの上に並べ、青紫蘇も添えると色も鮮やかに感じるとか。
魚肉は白身魚と赤身魚に大きく分けられるが、ふぐは白身魚に属する。白身魚は高たんぱく・低脂肪であるが、フグ肉は白身魚のなかでも、さらに脂質が少ないという特徴を持つことが知られている。また繊維質であるため肉質は弾力が強く、普通の刺身の厚さに切ると、一般の人では噛み切ることに苦労する。
このため、切り身が透けて見えるほどの「薄作り」で身を細く包丁で引いて刺身にする。この包丁は「ふぐ引き包丁」とよばれる特殊なものを使用する。
ふぐ刺しの盛り方として、大きい円形の皿に刺身を平たく円盤状に満遍なく盛り付ける、「べた盛り」が一般的。盛り方に工夫を凝らし、見た目にも楽しめるようにした「鶴盛り」、「菊盛り」、「孔雀盛り」、「牡丹盛り」などという盛り方もある。
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真空包装機
テレビでの大げさな宣伝に扇動させられて、昨年末にフードセーバー(家庭用真空包装機・ご多分に洩れずこれも中国製の安物)を買った。冷凍保存中の食材の劣化速度が半減するとの触れ込み。話半分とは承知の上で・・・。
同梱されていた専用の細長い袋(追加分は通販で買える)に寒鰤を入れて機械にセットし脱気運転開始。30秒足らずで自動的に停止。袋の入り口はこれまた自動的に加熱溶着されていた。後日中身を取り出すときは溶着部分を鋏で切断。使う度に袋の長さが5cm程度短くなるが、数回は再使用できる袋だ。
通販で辛子明太子や中国産マツタケなどの冷凍品を買っても、真空パックされていない場合が殆ど。これらは冷凍保存中に脱水が進むと共に霜が発生する。通販の商品は価格と送料とのバランスからか4〜5Kg単位の物件が多い。真空包装機による冷凍保存が期待通りだったら、次回は10Kgクラスの寒鰤に挑戦したい。
@ 試食
天然物の鰤を意図的に厚切りした刺身を食べた。これほどの厚切りは生まれて初めてだ。ぷるん、ぷるんとした弾力感、歯応えも心地よい十分な硬さ、天然鯛や伊勢海老の蛋白質中心の刺身とは異なり、適度な量の脂肪の旨みも加わり(いわゆる交互作用も発生か?)超満足。
偶々、トヨタ同期の金沢出身の奥様が来宅して荊妻と雑談中だった。評価願うべく一皿提供。『里帰りの折に富山湾の氷見の天然寒鰤を外食で食べたことはありますが、これほどの厚切りとは無縁。こんなに美味しく感じたことはありません』とのお世辞。
気を良くした荊妻は、夜間の散歩に一緒に出かけているトヨタ先輩の奥様宅に刺身を持参。金沢夫人と同じお世辞を拝聴。鮮度抜群の寒鰤は誰にでも美味しく感じられる絶品のようだ。
大量のアラは冷凍せずに一部を試食。予期せぬほどに美味しかった。魚屋はアラを生塵として破棄し刺身を高値にして販売しているが、何処か可笑しい。今年になってテレビで『料理の基本講座』シリーズで勉強開始。出汁取りの材料には煮干や魚のアラなど直接の食用とは縁のない物が多いことに気付く。
出汁取りこそはアラの活用の場だそうだ。アフリカの肉食獣は草食動物を仕留めると内蔵から食べ始めるが、魚でもアラの方にこそ多種類のアミノ酸が集中していて美味しいのが当たり前、と感じられてきた。ラーメン屋がスープの材料に鶏ガラや豚骨どころか野菜屑にまで拘る理由も同じではないか?
A 真空包装機の評価
真空包装機の威力を一刻も早く確認したくて、冷凍期間が9日間では短すぎるとは思いつつも2月3日にその一部を解凍した。ドリップは殆ど出なかった。褪色も感じられず、瑞々しさも変わらなかった。触感や食味も期待通り。これならば、真空包装機は宣伝通りの価値がありそうだ。
私は鮮度の高い刺身の場合は、ワサビは使わない主義だ。ワサビは少し古くなった刺身を美味しく食べるための臭い消しにあると確信。松阪牛のヒレ肉のステーキの場合、どの肉屋も『松阪牛の旨みを味わうには、塩と胡椒以外の調味料(ステーキ用のタレなど)などは絶対に使わないで下さい』と強調するが、それと同じ判断だ。
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おわりに
暇つぶしを兼ねて料理への挑戦を開始して3回目。行き当たりばったりの独学の難しさも痛感。ケーブルテレビの番組検索を使ったら、数え切れないほどの料理番組の存在に驚愕。番組制作コストが安いからだけとは思えなくなった。需要があると推定せざるを得ないが、見ているうちに不満が爆発。
講師は薀蓄を披露したいためか、傍目には簡単な料理なのに細々とした調味料や補助材料を10種類くらいも動員。本当に意味のある調味料や薬味材料などに限定しないと、真似をしたい素人にはそれらの準備だけでも大変。家庭料理の本質はシンプル イズ ベスト。野生動物は調味料も使わず加熱処理もしない素材を美味しそうに食べているではないか!素材の良さを引き出すだけの簡単な調理で十分なはずと確信。
我がゴルフクラブ(豊田市ロイヤルカントリークラブと加茂ゴルフ倶楽部)の茶店にはおでんがある。共に準備はクラブハウスの本職のシェフの指示の元に造っているそうだ。でも、コンビニのおでんと比べると何故かイマイチの味覚。
テレビではファミレスやコンビニの食材の集中加工工場の見学・調査報道が娯楽番組として、毎日のように放映されている。今では全国各地の有名駅弁の加工工程の紹介までも入り乱れての報道合戦。昨年までは関心もなく視聴もしていなかったが、今年になって積極的に視聴開始。不思議な動きをする食品加工機械に驚くだけではない。関係者の不断の改善努力に拍手喝采!
おでんの本質は美味しい出汁を、如何にして素材に浸み込ませるかにあると判断。おでん造りにむらむらと挑戦したくなってきた。
新解凍技術に挑戦(平成23年2月20日追記脱稿)
テレビを見ていたら、宅配寿司業界(年商400億円)では45%のシェアを誇る『銀のさら』の冷凍ネタのユニークな解凍技術を知り、早速試みた。銀のさらの豊田店は拙宅から1Km。突然の来客時に時々利用していたが、一貫あたりの価格は売り上げ全国一の回転寿司『スシロー』(年商820億円、業界の年商は4,000億円)の約2倍。でも、ネタも大きくそれなりに美味しいことは体験していた。
銀のさらでは袋に入れて冷凍していた柵を、電圧を懸けた沸騰中のお湯に浸け、超短時間で解凍。ドリップは殆ど出ず冷凍前の状態に復活していた。設備メーカとは特許を独占使用できるとの契約下、各店舗に解凍機を設置しているそうだ。
我が物理学の知識程度では、電圧を掛けるとドリップの発生が抑制されるとの原理を推定することは出来ないままだ。熱伝導率が高まり、より短時間で解凍できるのではないかと推定するのみだ。
早速猿真似開始。皮付きのまま真空包装していた寒鰤の柵を20秒程度、電圧を掛けていないお湯に浸し引き上げた。それだけでも予期せぬ効果を発見。ドリップが少ないだけではなく皮が簡単に剥ぎ取れたのだ。我が腕では冷凍前の皮剥ぎは難しく、肉を10mm程度付けた状態で切り離していたが、この湯剥き効果には驚愕。皮を味噌汁の出汁に使ったら、大変美味しかった。
従来から冷凍魚は冷蔵庫内で時間をかけて解凍する方法が薦められていた。でも、冷凍枝豆(我が購入対象は台湾産)は熱湯による解凍は薦められていたし、何度も体験していた。何故魚の熱湯解凍法が提案されていなかったのか、インターネットで理由を捜したが分からないままだ。
銀のさらもスシローもネタの準備は従来からの街のすし屋のように、注文を受けてから取り掛かる本物志向だ。その方針が庶民に高く評価されたのか、今や破竹の進撃。職人が経営する富裕層相手のすし屋の倒産が続出し始めたそうだ。
2貫の価格はスシロー(105円)、銀のさら(200-300円)、町のすし屋(400-500円)。三者三つ巴の闘いの行方には、今や見えざる神の手が文字通り働いているようで、私には興味津々の世界だ。
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■第4回目ヒラメに挑戦
(平成23年2月27日脱稿)
64年前(昭和22年)、小3の時に学芸会で浦島太郎を演じさせられた。でも、『昔むかし浦島は・・・鯛やヒラメの舞い踊り・・・』の歌に出て来る鯛やヒラメの実物は、当時見たこともなかった。しかし、高級魚だろうとは子供なりに想像はしていた。
がん治療での入院は5回。精神的に苦しい闘病生活も既に8年余り。でも名医に支えられて72歳の今日まで、幸いにも生き延びられた。その間に寒鰤(約6Kg)・天然鯛(5.56Kg)・活タラバガニ(約5Kg)・活伊勢海老(1.95Kg/匹)・活岩牡蠣(約600g/個)等を通販で購入しては満腹。
しかし、残念ながらヒラメでの満腹体験はなかった。時々出かけていた近所のスシロー(回転寿司)のメニューにはヒラメはない。ヒラメが幾ら高価な魚であろうとも、死ぬ前に一度は腹一杯食べたいとの衝動が突然発生。 上に戻る
はじめに
長崎県壱岐の魚屋漁師島(http://www.ryoushijima.com/)から通販でヒラメを取り寄せた。天然物の魚は当然のことながら工業製品とは異なり、大きさはばらつく。漁師島のホームページでは3段階の価格表示だった。
1Kg・・・6,230円
3Kg・・・8,900円
5Kg・・・13,350円
重くなるとヒラメは重量あたりの単価が安くなっている。責任者に『大きくなると味覚が落ちるのですか?』『味には気付かれるような差はない。しかし、流通量の多い1Kgを基準にして重量比例で価格を設定すると、大物は高くなり過ぎ買い手がいなくなる。已む無く値下げせざるを得ない。大局的には市場のセリ価格を参考にしている』そうだ。5Kgといっても実態は四捨五入の世界と考えるのが妥当だ。
同店から1月25日に購入した6Kgの寒鰤は8,514円だったが、時化続きのためかいつの間にか14,900円(2/24現在)に値上げされていた。どの魚も変動相場だ。
冷静に考えると一本釣りの世界と工業製品の原価計算とは、本質的な差がありそうだ。一本釣りでは極端に考えれば魚の重さが変わっても原価は同じだ。需要が少ない大型の魚はセリで暴落し易いのではないか?
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調理
漁師島のホームページでヒラメの下処理は難しいとの解説記事を発見。責任者に『何故難しいのですか』『身の厚さが薄いからです。胴体の断面が丸に近い魚の下処理は楽です』。難題にわざわざ挑戦するのは『飛んで火にいる夏の虫』と判断してさっさと諦め、五枚下ろしを指定した。
『鰤は収獲直後に船上で活き〆するのに、ホームページの説明ではヒラメは生簀で活かしておくとあるのは何故ですか』『今は鰤と同じように収穫後直ぐに活き〆しています』。ホームページの記事の更新が遅れているようだ。
指定日の2月22日15:00に待望のヒラメが到着。壱岐から拙宅までの『フェリー⇒陸送』では一日弱は掛かるようだ。北海道の釧路の蟹屋の場合は航空便を使うためか、いつも午前中には到着するのだが・・・。
発砲スティロールの断熱性能は素晴らしい。氷はほんの僅か溶けていただけだ。ずっしりと重く感じた分厚い柵に満足。
皮付きのママだが、白い皮は腹、黒い面は表側。柵の重量は夫々450g,460g,570g,600g、合計2,080gだった。
アラ550gと内蔵400gはトレイに入れ、サランラップで包装されていた。輸送中の振動ではサランラップは破れていなかった。隙間がないほど氷で密封されていた効果と推定。
一尾が5Kgだったと推定すると3,030/5,000=0.606。破棄された部分(エラ・尻尾・ヒレ・内蔵)が約2Kgとなり歩留まりは60%。寒鰤の場合の歩留まりは5.4Kg/6Kg=90%だったので疑問を感じ電話で質問した。『ヒラメは4.8Kgでした。寒鰤は7kgくらいあったのだと思います』との回答だったが、些か疑問だ。
でも、送料(一万円以上の場合は無料)も下処理も無料だったし、ヒラメのヒレは魚体の全周囲にあるし、天然物相手の商売にこれ以上の質問は野暮と判断。
早速、一番小さな柵の半分をスライス。包丁の使い方にも慣れてきた。鋸のように往復運動をすると身が崩れることに気付き、手前に単純に引くだけにした。
やや赤みを帯びているのがエンガワ。食べ比べるとエンガワの勝ちで超満足。撮影準備をしているうちにビールの泡が消滅。段取りの悪さを露呈!!
えんがわ(縁側、エンガワ)とは、魚の部位の通称で、刺身や寿司のネタのひとつ。ヒラメ、カレイの鰭を動かすための筋肉のことをいい、コリコリとした舌ざわりが好まれる。身の形が家屋の縁側に似ていることからそう呼ばれる。
寿司ネタで「えんがわ」といえば、「ヒラメのえんがわ」を指す。えんがわ部分は、ヒラメ一匹からとれる量が限られているので白身部分よりも価格が高い。回転寿司で単に「えんがわ」と表示して安価で販売されている場合、カラスガレイやアブラガレイやオヒョウといったカレイ目の代用魚のえんがわが使われている。
ヒラメの美味しさは味覚よりも触感にあった。歯ざわりや舌触りに特色が現われた。粘膜のように柔らかくても腰があり、舌に纏わり付く感触に感嘆。味覚センサーではその美味しさを数値化するのは難しそうだ。
ヒラメでは伊勢海老・鯛・タラバガニと良く似た感触と柔らかで淡白な味覚が楽しめた。この美味しさはワサビ抜きで味わうものだと嫌でも気付かされた。
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真空包装
真空包装機も使い慣れるに連れ、経験知が嫌でも自動的に蓄積される。専用の包装袋に食材をそのまま入れると、汚染された内部の面倒な洗浄は不可避。柵を1食分の大きさにすべく2分割し、夫々をサランラップで包んで包装袋に3個ずつ入れた。
真空包装後の1袋は冷凍、残りはチルドルームへ。真空包装すればチルドで一週間は保存できると皮算用。結果は如何に?
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おわりに
細々と生きている年金生活者でも、多少のメリハリを工夫するだけで人生が明るくなる。来る3月4日は今年最初のがん検診。新発食道がんが発見されると鬱病になりかねない。チルドに保管したヒラメはそのときまでに食べつくしたい。
食道がんの内視鏡による剥離手術を受けると1週間は絶食に近く、数Kgも体重は減少。体力の激減を何度も実感した。過去40年間の管理体重54Kgを遂に放棄し、次回のがん治療(直近は平成20年6月18日の手術)に備え『痩せ代』分として5Kgを必死になって1年間も掛けて獲得した。
しかし、喜んでいたのも束の間。昨春の豊田市老人保険健診でコレステロールが多いとの判定を受けた。已む無く昨秋から食事療法に断固たる決意の元に着手。でも、薬や所謂健康食品に頼る気は全くない。
それまでは三重県松阪市の瀬古食品(松阪牛を数百頭肥育している三重県では最大級の牧場。口蹄疫が宮崎県で発生した途端、瀬古社長は一躍時の人となり、大手マスコミ“NHK、全国紙、テレビのキー局”に追い回されていた)からは厚さ5cmとのオーダーカットでヒレ肉を買っていた。
鹿児島県からは黒豚のスモークレバー、熊本県からは馬刺しの霜降り、大阪府からは鯨の刺身、そのほか産地不明の合鴨のスモークや生ハム等、今をときめく通販を駆使して酒の肴を取り寄せていたのだ。『必要な人が、必要な物を、必要なときに、必要なだけ取り寄せれば済むこと』と嘯(うそぶ)く荊妻には、酒の肴の準備などは全くする気がないらしい。
でも、がんに加えて成人病にも取り付かれては、昨年考え出した『世界百余国漫遊大居士』との戒名を彫った墓石を発注中の我が身が、墓に先行して命尽きれば無念千万。肴は哺乳類から魚類へと転換。摘みの主力は松坂屋豊田店での18:00からの刺身半額セールで調達。一度に買い物籠一杯(10-15パック)買い込んで白身魚や甲殻類は冷凍、マグロや大好きな鰯等の青魚は冷蔵。
成行き任せだった我が『料理事始』のテーマもようやくにして固まった。趣味と実益を兼ねた健康料理だ。
継続は力なり。効果覿面。総コレステロール値は昨年3/5(316)⇒6/11(289)⇒9/3(301)⇒12/10(280)と着実に下がってきた。適正値(120-219)も射程圏内に入ってきた。昨秋から測り始めたLDH(119‐245)は9/3(250)⇒12/10(209)。GOT(8-38)は3/5(50)⇒6/11(36)⇒9/3(42)⇒12/10(28)。早々と目標到達。
人生最後の課題は『遺影』の準備。当初は写真館に出かけての撮影を考えていたが、戒名を考案したら気が変わった。世界の秘境の一つ『パプアニューギニア』の密林に出かけて、酋長(村長)への挨拶がてら、一緒に記念撮影が出来る旅行社を選定中。3/4のがん検査で異常が見つからなければ、年内に敢行予定だ。
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第5回目(紅鮭の燻製に挑戦)
平成23年3月22日脱稿
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過去数十年間、懇親会とか同窓会の類ではホテルの大宴会場での立食パーティが多かった。会費は概ね1万円。お酒(日本酒・ビール・ワイン・ウィスキー・焼酎・・・)は飲み放題。料理は数十種類の和洋中華のメニューが彼方此方のテーブルに並ぶバイキング形式。広間の周辺には各種(握り寿司・そば・・・)の屋台。
私はいつの間にか食べるメニューも順番も固定してきた。紅鮭の燻製⇒殻付の生牡蠣⇒鯛の刺身(伊勢海老は滅多と出ない!)⇒握り寿司⇒そば。これだけで満腹。ヒレ肉のステーキは胃に重く敬遠。乾杯用にほんの少しのビール⇒白ワイン⇒ウィスキー。
コンパニオンに飲食の調達を頼むのは面倒。食べたいメニューがなくなる前に、真っ先に飛びつく貧者の行動に恥じらいもなく終始していた。
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■はじめに
欧州への海外出張で宿泊するホテルの朝食はバイキング形式が多かった。刺身はないが各種魚の燻製は豊富だった。でも、鮭の燻製は日本の王子サーモン製(大手百貨店の本店では必ず買える。贈答品としての人気は抜群だが高価。標準価格は100g=1,600*1.05円)に比べると食味が落ちるだけではなく、塩分過多が多くイマイチ。
乗り継ぎ空港としてしばしば利用したヒースロー空港(ロンドン)には、格式では欧州一との評判の高いハロッズ百貨店(売り場面積では同じロンドンのセルフリッジに次いで広い92,000平米)の小さな売店がある。そこで売られている紅鮭の燻製は我が味覚を虜にする超高級品。自家消費用に持ち帰っても、一度に満腹するほどには勿体無くて食べられなかった。
20年位前に意を決し、王子やハロッズの品質を目標に自宅での燻製作りに挑戦開始。
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■かつての体験
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@ 燻製装置
名古屋市内の東急ハンズで家庭用の簡単な装置を購入した。輸入品を初め大小10種類くらいの装置があったが、組み立て式の『商品名=くんちゃん。進誠産業製』を購入。筐体内部で素材を吊り下げる方式だった。網棚に並べるタイプは使いやすいが大型過ぎ見送った。
A チップの調達
大型ホームセンターでチップを発見。当初は一辺が3〜5mmくらいの立方体に刻まれたチップを使った。筐体下部に電熱器を置き、その上にチップを入れた鉄板製の箱を載せて加熱。発煙の管理が難しく監視を常時迫られた。直ぐに方針を変更。木材を粉末にしたあと棒状に固めたスモークウッドに転向。簡単に着火できるだけではなく電熱器も不要。線香のように持続して煙を発生。燃え尽きるまで4時間は放置可能だった。
B ハーブやスパイス
豊田そごう(その後、残念ながら倒産⇒松坂屋豊田店が同じ建物のテナントになり開業した。でも売り場面積は半減し、魅力度は激減!)に出かけ、小型ガラス瓶入りのローズマリー・セージ・タイム・白胡椒など10種類くらい購入した。各種料理用にハーブやスパイスが何十種類も売られているのには驚いた。
C 参考書
丸善に出かけ数種類の燻製作りの書物を購入。工程の証拠となる写真が豊富な本を選んだ。手書きの絵が中心になっている本は、他書の孫引きが多く敬遠した。
D パン(浅い容器)の特注
ソミュール液(後述)に素材を浸す容器を豊田そごうに発注。56cm*33.5cm*9cmのステンレス製だ。店頭には在庫がなく、そごうはメーカーに再発注した。
E 素材の調達
現役時代はトヨタ生協(本支店合計の年商は600億円強。豊田市最大の小売商。全国の生協でもベストテン上位に入る規模。出資者はトヨタ自動車の従業員と地域住民)の魚屋に電話で注文し、帰宅途中に立ち寄って素材を受け取った。定年退職後は、毎週出かけていた名古屋グリーンテニスのレストランのシェフに買い付けを委託し、帰宅時に受け取っていた。シェフは毎朝豊田市公設市場(一般消費者は無資格なので入れない)に出かけていたのだ。
残念ながらシェフは8年前に、自宅のお風呂で不慮の溺死。爾来、素材の入手が面倒になり燻製作りは長い間中断していた。
でも、酒の摘みとして大好物だった鮭の燻製への魅力は絶ちがたく、近所の老舗食品スーパーの魚屋と交渉し、チリ産のサーモントラウト(養殖物)の燻製を購入していた。
マス(鱒)は、サケ目サケ科に属し日本語名に「マス」がつく魚、または日本で一般にサケ類(ベニザケ、シロザケ、キングサーモン等)と呼ばれる魚以外のサケ科の魚をまとめた総称。タイヘイヨウサケ属、タイセイヨウサケ属、イワナ属、コクチマス属、イトウ属などの魚を含む。
サケとマスの境界が厳密でないため、国により区分方法が異なる。たとえば英語圏でキングサーモンはサケに区分されるが、日本では同じ魚をマスノスケと呼びマスとして区分している。英語では、サケがsalmon、マスがtroutに対応している。単にtroutというと淡水産を意味し、海産のものはsalmon troutと呼ばれるが、シートラウト(ブラウントラウトの海降型、Salmo trutta morpha trutta)という例外もある。(⇒ サケ類#サケとマス)
マスは淡水の川や湖、また一部は海洋に生息し、北アメリカ、北アジア、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドに分布している。 ほとんどの種が美味であるか、毒性が無く独特の旨みがあるため、世界的に食用にされる。
店頭にてサーモントラウト、トラウトサーモン、トラウト等と表示される切身は、ノルウェー、チリ産の海面養殖されたニジマスである。これらの名前は商品名であり、魚種を示す名前ではない。国産の養殖の大型ニジマスはこれらに比べて、生産量や人件費の関係で比較的高価であり、輸入物のサーモントラウトと比較すると2〜3倍の価格であることが多いようである。
この真空包装された冷凍燻製品は一袋500g。業者間の流通単位は10袋ずつ梱包されたダンボール箱だった。小売商は店頭で概ね100g単位に小分けして販売していた。仕入れ責任者に『私は一度に5Kg入りのダンボール箱で買いたい。小分けして少しずつ販売するコストが貴社では発生しないから、店頭価格の1割引にせよ』と強要したら、いとも簡単に交渉は成立。
でも、この燻製品には多少の不満が残った。スパイス不足(無使用?)だけではなく、保存性を考慮したのか塩分濃度が高めな点にあった。しかし、安直に調達できたので、摘み専用の我がミニ冷凍庫(100リットル)に欠かしたことがなかっただけではない。連絡もなく突然訪ねてきた子供達への手ごろなお土産にも使えた。
F 標準工程
食塩水にスパイスなどを入れ沸騰したら加熱は中止。冷めた溶液(ソミュール液と呼ばれている)に素材を入れて一晩放置。流水で適当に塩抜き。素材を乾燥させる(風乾と呼ぶ)。素材を燻製器に入れて燻煙を掛ける。出来上がった素材を風乾させる。
燻製作りの工程を定性的に書けば大変簡単に感じる。しかし、定量的に書こうとすると、実に厄介だ。食塩水の濃度、スパイスの沸騰時間、ソミュール液に漬け込む時間、塩抜き時間、燻煙前の風乾時間、燻煙時間と温度、燻煙後の風乾時間の何れについても参考書では曖昧模糊とした記述になっている。所謂ノウハウが不明に近い。
何度も試行錯誤しながら自己流を発見する以外に解決策はなかった。私の体験では10回目くらいで落ち着いてきた。工程数が多いので試行錯誤の回数は増加せざるを得ない。最終的な評価法は完成品の試食に尽きる。
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■今回の方針
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@ 素材の調達
今やインターネットによる通販全盛時代。下記の手ごろな甘塩紅鮭販売店を発見。
http://www.northbussan.co.jp/gyokairui/benizake.html
養殖物のサーモントラウトに不満だった私は、天然物の紅鮭に早速飛びついた。我が燻製器の容量は紅鮭の半身(1〜1.5Kg)の場合、6枚が上限。でも4枚程度が作りやすい。6枚注文し、2枚は焼き魚にして燻製と食べ比べることにした。
東北・関東大震災(3/11)後の注文だった。物流に不安を感じ代引きでの注文法を選択。真空包装された冷凍品は輸送途中に解凍されることもなく、二日間で無事到着。背側は白く輝き腹側の色も鮮やか。花が印刷されている画面中央の紙はサイズを比較するための葉書。
1.1Kgと0.8Kgのフィーレの二種類があったが、1.1Kgを発注。1.1Kg〜1.4Kgにばらついたが平均値は1.25Kg。逆算すると尾頭・内蔵付の一尾の重量は3Kg前後??
A 工程の短縮
参考書通りの標準工程だと時間が掛かりすぎ(概ね1週間掛かった)不満。過去の経験から多少疑問に感じていた工程は省略した。ソミュール液作り・ソミュール液浸け・塩抜き工程は全部削除した。
新鮮な紅鮭本来の食味を活かすためにはスパイスは不要だ、と判断したのが主な動機だ。
******************************蛇足***********************
惰性だったとは言え70年強も生きながらえていると、経験知が多少は積み重なった。今では食品添加物にはどんなに合理的な理由があろうとも、反射的に苦々しく感じるようになった。その幾つかを挙げたい。正しく蓼食う虫も好き好きだ。
A スパイス
欧州人は胡椒に代表されるスパイス類を求めてアジアに進出。大航海時代の幕開けの一因だ。肉類の保存技術が未熟な時代、腐敗臭を打ち消して食べるためにスパイスは必需品だった。松坂牛のヒレ肉のステーキを食べるとき、私はステーキ用のソースは決して使わない。ソースとは駄肉をおいしく食べるための添加物に過ぎないからだ。
B ワサビ
刺身や握り寿司を食べるときには、擂(す)り下ろしたばかりの新鮮なワサビは必需品のように珍重されているが、私はワサビの使用を断固として拒否している。新鮮な食材本来の食味を打ち消すからだ。ワサビは古くなった食材を美味しく食べるための補助材に過ぎない、と評価している。
C ビール
今をときめくスーパードライなどのビールのラベルに記された原材料名を読むと、トウモロコシから作られたコーンスターチ・米(米食用には使われない安価な等外米?)などを発見してがっかりする。私は数百年前に制定されたドイツのビール令(原材料は水・麦芽・ホップのみとする)通りに作られているサントリーの『ザ・プレミアム』しか飲まない。
D 日本酒
私は純米吟醸酒しか飲まない。どんなに有名な賞を取ったと宣伝されても、醸造アルコールを混入して、原材料費を下げているような日本酒には嫌悪感が沸き起こるからだ。
E 加工食品
ハム・ソーセージなどの加工食品のラベルに無数の原材料名が記されている場合は、幾ら製品が美味しく食べられるように加工されていても、私は敬遠している。食品本来が持つ食味を活かすのが目的ならば添加物の種類は激減するはずだ。
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B 風乾
燻煙前の風乾工程は大変重要だ。
鮭は水分が意外に多い。程ほどに乾燥しないと、燻煙途中で身が軟化し過去には落下させた失敗も体験。ネットに広げて屋外で乾燥させた。背側を上にして腹側の過大乾燥は避けた。野良猫にフィーレを1枚盗まれたことがあり、テラスの上に設置した格子(キューイフルーツ・アケビ・ムベ用の棚)からネットを吊るした。
C 燻煙工程
鮭のカマにS字型のフックを取り付けて燻製器に吊るした。カマが外れかかっていたフィーレの場合は、逆さに吊るした。フィーレには背骨と肋骨が残されており落下防止には役立った。写真は燻製器の蓋を取り除いた状態だ。底には素材の落下に備えた格子の桟がはめ込まれている。 |
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■大成功! |
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燻煙時間は約4時間。スモークウッド1本の燃焼時間だ。その後、再びネットに並べて一昼夜風乾。重量は約20%減少した。
飴色に染まった完成品は美しく輝く。平均重量は約1Kg。写真に示す細長い直方体の木片状の物体はスモークウッドだ。スモークウッドは破損防止のため薄いフイルムで包装されている。発煙時にはフイルムを剥がして使う。
背骨などの骨はずしには平成23年3月2日に放映された、NHKのためしてガッテンのコツが大変役に立った。ビフテキ用ではなく魚用のナイフを使った。片側から少しずつ骨を外した。骨は曲面状に配置されており、刃面の長い包丁で一度にはがすことには、幾何学的に無理があるのだ。
1枚を1回分の大きさにすべく4分割し、フィーレ3枚分は小型真空包装器で包装後冷凍。1枚は4分割後に1枚ずつ薄いフイルム製の袋に入れてチルドで保存。
手持ちの2枚のフィーレを適宜切り、荊妻に塩焼きさせて燻製と食べ比べた。私にはダントツの差で燻製に軍配! 私に強要されて試食した荊妻は『時間を掛けた燻製が美味しいのは当たり前』と、我が頭脳労働を無視したかのような感想。
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■おわりに |
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昨年末から暇つぶしを兼ねて始めた料理事始だった。テーマの一つに燻製作りが脳裏に浮かんではいたものの、8年間も中断していた結果、再開するのには気が重かった。でも、鯛やヒラメの刺身造りに取り組んでいるうちに、調理への垣根(閾値)が徐々に下がり、再開する貴重な切掛けになった。
今や我がミニ冷凍庫は紅鮭の燻製・サーモントラウトの燻製・イベリコの生ハム・国産の生ハム・辛子明太子・ヒラメの柵・台湾産の枝豆などで満杯。早く食べ終わらないと次なる料理に取りかかれない。
知る人ぞ知る北海道野付(のつけ)半島(国後島と対面する北海道東部の小さな半島)産の日本一大きなホタテ貝(一枚400g前後・4年物?)を20枚取り寄せて、刺身を造りたいのに・・・。
http://www.northbussan.co.jp/sashimi/hotate4.html
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■読後感 |
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かつてニクソンが来日した折の晩餐会が実況放送された。ニクソンがビフテキを食べるとき、鰐のように大口を開けた一瞬がテレビ画面いっぱいに大写しされたときの驚きは、我が記憶に今尚新しい。NHKは強く非難された筈と推定。国賓の晩餐会の実況放映は爾来見たことが無い。
しかし私も好物料理くらいは誰にも遠慮せずに、ニクソン流に伸び伸びと鰐口で食べたい。おちょぼ口の真似では食べた気がしない。でも、鰐口に見合った大きさのホタテの貝柱は松坂屋豊田店やイオン・ショッピングセンター内レベルの片田舎の魚屋では、残念ながら発見できなかった。
いわんや売上額こそ日本一にはなったものの、『スシロー』の回転寿司(2貫で105円)レベルに大物貝柱を期待するのは、もともと無理というものだ。
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今まで帆立貝に関する知識は私には全くなかった。この機会にインターネットで少しだが調べた。眼が80個あるなどとは想像すらもしていなかった。
形態
殻径は20cmほどになる大きな二枚貝である。貝殻はふくらみが強い殻と弱い殻とが合わさっているが、ふくらみが強い方が右殻である。殻の中央には大きな閉殻筋(貝柱には断面円形の横紋筋とその傍らに断面三日月形の平滑筋)がある。
二枚貝は普通2つの貝柱を持っているが、帆立貝には一つしかない。生まれた直後は2つの貝柱を持っているが、成長にするにつれて一方が退化し、もう一方が中央に移って大きくなる。
また、外套膜(ヒモ)の周囲には、およそ80個の小さな眼点(眼)があり、明るさを感じることができる。
分布
生息に至適な海水温は+5〜+19℃の冷水であるが、-2〜+22℃の間なら生きていける(稚貝はさらに4℃ほど高温でも耐えられる)。
浅海の砂底に生息し、自然分布の日本での南限は日本海側が能登半島、太平洋側が東京湾とされている。しかし、大規模な商業的漁業が可能なのは東北地方の三陸海岸以北である。
天敵はヒトデ、オオカミウオ、ミズダコなどである。ただし、ヒトデに襲われると閉殻筋で力強く殻を開閉させて海水を吹き出し、泳いで逃げることができる。
漁法
小型底びき網による漁獲は、地撒き養殖用の1年貝(稚貝)を放流後3〜4年自然成長する貝と、自然発生する4〜5年貝を併用しているので「天然物」と称している。
しかし、養殖といっても人工飼料を与えているわけではなく、あくまで外敵に襲われないように保護しているだけなので、天然物と養殖物とは区別が付かない。
調理法
貝柱は肉厚で淡白だがほぐれやすく、舌触りと風味がよい。刺身や煮込み、バター焼き、スープなど様々な料理で使用される。また、乾燥して干貝(干貝柱)にも加工し、一部は輸出もされ、具材や調味料として利用される。
また、俗にヒモ(貝ヒモ)と呼ばれる外套膜も燻製や塩辛などにして食べる。貝殻以外はほとんどの部位が食べられるが、「ウロ」と呼ばれる中腸腺は食べても美味しくない上、生物濃縮により貝毒や重金属(主にカドミウム)が集中するため、健康に影響を与える可能性があり食べない方がよい。
味覚
食用として多く漁獲されるが、現在では養殖もされている。
うま味成分であるアミノ酸、グルタミン酸、コハク酸やタウリンなどが豊富に含まれている。ホタテ貝特有の甘味はグリコーゲンによる。
旬
帆立は養殖技術が確立されたお陰で年中安く美味しく食べられる。しかし、天然帆立の旬の時期は10月〜2月の冬の時期。この時期の帆立は、他の時期のものより身が大きくしまっている。お刺身はもちろん、お吸い物やバター焼などいろいろな食べ方で楽しめる。
貝柱の成分が高タンパク質・低カロリーなことから、ホタテ貝は「貝の王様」と呼ばれるほどの健康食品だ。
貝毒
魚介類には天然に存在する有毒成分を含むものがあり、魚介類による自然毒を「マリントキシン」と総称している。マリントキシンの主なものに「フグ毒」と「貝毒」が知られている。
貝毒は、海水中に異常増殖した有毒プランクトンを二枚貝が摂食し、貝の体内に毒として蓄積することにより発生する。
貝殻の成長
貝殻の成長は、その外縁に新たな殻が付加されて殻が大きくなる成長と、殻の内側全体から層が付加されて厚くなる成長とに分けられる。前者は外套膜縁の上皮細胞から、後者は外套膜全体からの分泌物によって形成される。
海底での姿勢
ホタテ貝は海底では平らな殻を上にして生活する。もう一方の膨らんだ殻を下にすると海底の砂礫に密着できて座りが良い。⇒ 平らな側は海草等が付着して汚いが、膨らんだ側が綺麗な理由は砂で擦(こす)られているからか?
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かつて最北の海鮮市場(http://www.northbussan.co.jp/sashimi/hotate4.html)からロシア産甘塩冷凍紅鮭のフィーレを1.1Kg*6枚、燻製用に購入した。同じ会社の商品の中に今回購入した活ホタテを発見。
産地は根室半島と知床半島を結ぶ海岸線の中央に位置する、小さな『野付(のつけ)半島』だった。その東側には北方四島の一つ国後島がある。我が地理の知識は60年前の中学時代のママ。地名すらも全く知らない小さな半島だった。
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帆立貝の体は大きくは5種類の臓器に分離されると知った。ウロ・エラ・貝柱・ヒモ(ミミ)・生殖巣(精巣は白く、卵巣は桃色)だ。
二枚貝とはいえ、貝殻の形状は対称形ではなく、表面が白い側は球殻、反対側の茶色の殻は平面に近かった。平面側の身は同梱されていたステンレス製の、全体が平らなしゃもじのような形の道具を使い、説明書通りに殻に沿って水平に滑らせれば、小さな力でも簡単に剥離できた。
茶色の殻から貝柱が剥離されると二枚貝を強く連結していた貝柱は存在意義を失い、身は白い殻にくっついた状態になった。二枚の貝殻を両手で強く抉(こ)じ開けると、半円弧の端(直線状)の中心には黒くて堅い小さな蝶番が一個あった。蝶番が破壊されると茶色の殻は簡単に取り外せた。白い殻側に張り付いていた貝柱と身はステンレスの板で簡単に剥離できた。
最終的に手にしたものは、水分が大変多い柔らかなぶよぶよとした身だった。5種類の臓器は色と形で大体の区別はできた。でも、捌き方の説明書のように指で綺麗に分離するのは難しかった。形が崩れるのが嫌だったのだ。
テレビで何回か見たがん手術の外科医の慎重さを連想しながら、刺身包丁で少しずつ剥離した。手持ちの料理バサミやナイフを使うのをうっかり忘れていた。一枚を解体するのに10分。10枚で100分の労働だ。
加工地のパートの女性達の解体作業は多分、一枚1分以内に達していると推定。どんな世界でもプロには一目!!
追記(平成23年4月28日)
インターネットの動画で簡単な加工法を知った。白い殻に身が付いた状態のときに、貝柱を除く身の周辺を平たい道具を使って殻から外し、ヒモを指で摘んで引っ張ると、貝柱だけが殻に型崩れせずに残る。残った貝柱を道具で外す。僅か10秒で完了。生殖器等の可食部位は剥ぎ取った臓器から分離すれば済む。
上の写真が可食部位の一部だ。残りは長い紐状のミミだが、機能は何か分からない。頭脳や消化管の一部と推定。ミミは4種類の臓器の周辺を取り巻くような状態で貝殻に張り付いていた。塩もみをすればコリコリとした感触の刺身になるとか・・・。美観が感じられず撮影対象から外した。
分離した貝柱を平らなまな板の上に置いたら形が歪んだ。解体中に一部を取り残したと即断した。貝柱の形は円柱とばかり信じて込んでいたからだ。ところが貝柱は断面円形の横紋筋とその傍らに断面三日月形の平滑筋とから構成され、幾何学的な真の円柱ではなかったと知った。
精巣にも卵巣にも中空の突起物が付いていた。過去何回も食べたことがある生殖巣だが、今回の解体体験まではその存在に気付きもしなかった。インターネットで調べたが何か分からなかった。精子や卵子の出口ではないかと連想している。
卵巣や精巣の相対的な大きさにも驚いた。貝柱よりも大きいくらいだ。貝柱だけを冷凍にした商品はよく見かけるが、同時に取れたはずの卵巣や精巣だけの商品を見かけないのが不思議。破棄しているとは思えないのに!!
魚卵(カズノコ・イクラ・キャビア・・・)、加工魚卵(辛子明太子・カラスミ・・・)のように、ホタテの卵巣も何か工夫をすれば名物になりそうな気がするのだが・・・。河豚の卵巣は毒抜き後には珍味として高値で販売されているのに、ホタテの卵巣の珍味化は何故無理なのか、私には想像すらもできない。
大きな卵巣があるシシャモや鮎は小さな卵巣持ちよりも別格の高値だが、鮎とは異なりシシャモのオスは売られていない。魚屋に質問するとシシャモのオスは鮎のオスとは異なり美味しくないので、分別して破棄しているのだそうだ。
世の中には不思議なことが一杯ある。鳥類(鶏・アヒル・鶉・駝鳥・・・)の卵は大きくて取り扱いやすいからか、大量に食用として売られている。一方哺乳類(牛・豚・羊・・・)の肉類は大量に食用として流通しているのに、商品として単独で販売されている卵巣(どんな物か写真ですらも見たこともない)を見かけないのも不思議でならない。
植物の場合、種子(米・麦・トウモロコシ・大豆・・・)に栄養素が集約されて人類の大量繁殖を支えているのに、哺乳動物の卵巣や精巣が商品化されない理由が私にはこれもまた全く推定できない。
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魚屋や寿司屋では貝柱のみを見ていたため、帆立貝の貝殻の中身の殆どは鮑の身のように、貝柱が占めていると誤解していた。貝柱よりも大きな卵巣や精巣も今回発見して驚いた。
殆どの貝類(アワビ・牡蠣・シジミ・ハマグリ・アサリ・大アサリ・・・)の場合、臓器の全てを食べていたので、帆立貝には有毒素が濃縮されているといわれるウロ(中腸腺)のような部位があるとは夢にも思わなかった。でも、ウロは皮膚がんのように如何にも何かイワクがありそうな黒い嫌な外観をしており、可食部位と言われても敬遠していた筈と予想。
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過去を思い出すと、豊田市内の魚屋でのホタテの貝柱と牡蠣の剥き身の売られ方は、同じ貝という種類なのに全く異なっていた。
牡蠣の剥き身は豆腐のように水と一緒に容器に密封し、生食(なましょく)用と加熱料理用とにはっきりと区別されたラベルを貼り付けて売られていた。私は無菌処理をした牡蠣とそうではない牡蠣とに分けられていると解釈していた。
一方、貝柱の生食用は全て冷凍品だった。産地が寒冷地であるホタテの場合は無菌とか要加熱とかの表示は不要なのだろうと推定していた。
偶々4/16に荊妻は不在。昼食はスシローで済ませ、何時ものように持ち帰り用に10種40貫の握り寿司を購入。いつもは持ち帰り用にはホタテの貝柱は買わなかったが、今回はホタテに強い関心があり、ホタテも買った。お持ち帰り後30分以内にお召し上がり下さいとの注意書きのラベルは無視し、冷蔵室で保存。
夕食時に10種10貫を食べた。そのときである! ホタテの貝柱に微かな異臭を感じた。ホタテの腐敗速度が大変速い事を初めて体験したのだ!! 魚屋での貝柱の売り方には過去の経験が凝縮されていた、とやっと気がついた。
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ああ、美味しかった |
活ホタテの貝柱を調理直後に初めて食べた。大げさに言えば生まれて初めてだ。さくさくとした感触、鮮度の高いグリコーゲンがこんなに美味しく感じられるものとは知らなかった。食道がんのがん細胞が好むはずだ。
蛇足。食道がんの有無検査に最強の手段はルゴール染色法だ。健康な食道の内壁にはグリコーゲンが付着しているが、がん細胞があるとグリコーゲンが消費されヨード反応が起きない。ルゴール染色法とはヨード反応を利用したがんの検査法。私は3ヶ月置きに愛知県がんセンターで同検査を受け続けている。
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おわりに |
昨秋来『料理事始』と称して、他愛無い調理に独学しながら挑戦している。その体験をホームページに発表する予定でいざ開始すると、余りにも知らないことが多すぎるのに気付く。
疑問点はインターネットで調べてはいるものの、誤解したままの分野も多そうだ。賢人各位からの誤謬のご指摘を拝受するのが楽しみだ。
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第7回目(キャラブキ造りに挑戦)
平成23年5月20日脱稿
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戦中・戦後の栄養失調時代(カロリー不足⇒昭和22年10月11日、法を守り闇米を拒否した東京地裁の山口判事は34歳で遂に餓死)から、低栄養(ヴィタミン・ミネラル不足⇒免疫力低下⇒がんも治り難くなるらしい)が話題になる偏飽食時代へと食環境は激変。
人類がその発生以来雑食で生き延びてきた歴史を軽視し、松坂牛や名古屋コーチン、鯛やヒラメ、伊勢海老やアワビなどを追いかけていた私は、パンダ・コアラ・蚕のような偏食に向って愚かにも走り始めていた。
でも昨年来、料理事始に取り組み始めた私は一気に覚醒。猫の額ほどの狭い敷地内で野生化している山菜に心が早速引かれ始めた。山菜は主食(カロリー源)には成り得ないが、栄養のバランスを維持し、食欲を亢進させる貴重な存在であるだけではない。
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はじめに
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加熱調理が基本の中華やフランス料理では香り成分は気化蒸発して失われたのも同然。しかしマツタケ料理に象徴されるように山菜は、香り重視の和食ではその真髄を支える貴重な脇役だ。幼少期の食体験への回帰を通じて、山菜は余生短い翁の心に、安らぎを感じさせてくれる食材だった、と遅まきながら気付き始めた。
香りがいかに高く評価されているかはひとり食材だけではない。ウィスキー・ブランデー・日本酒でも高級酒は独特の香り成分の多寡で価格が決まるほどだ。愛知県では幻の酒と評価され春秋2回の発売と共に、店頭から一瞬にして蒸発するほどの人気を永年に亘って誇っている関谷酒造の『空』も香りが命。
我が古希の祝いの席で子供達と一緒に飲みたくて、関谷一族の1人、職場先輩でもある元トヨタ専務・故関谷氏に特別ルートで入手していただいた折に、氏は『空は冷蔵庫で保管し開栓後、2時間以内に飲み干して下さい。空の価値は香りにあるから』と念押しされた。
山菜は深山幽谷だけではなく、三河(一説に寄れば、旧国名三河の語源は一級河川、矢作川・その支流の一つ巴川・豊川に由来するとか)の山々の至る所に群生している。結婚以来、土筆とワラビだけは春の息吹を感じたくて荊妻と一緒に、一年に一回だけだったが採取に出かけていた。
料理の基本は味覚と嗅覚とを同時に満足させる調理にあると確信していた私は、新築移転以来取り組んできた家庭菜園でも、嗅覚を満足させるためのハーブ類などもナスやトマト、大根や白菜などの主力野菜と一緒に育て続けていた。
これらは概ね小型野菜が多く、しかも1〜2株あれば十分な上に何故か虫にも強く、育てやすかった。それらの一部の種が風に吹き飛ばされるのか、敷地の彼方此方で野生化していた。しかし今年に入り日ごとに山菜への関心が深まると、余命ある間に善は急げと山菜の採取だけでは無く、荊妻任せだった調理にも取り組み始めた。
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山菜の我が調理法
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料理の本やテレビの料理講座での山菜調理法は、天ぷらを何れも馬鹿の一つ覚えのように推奨している。でも、私は特にニーズがない限りお浸しにしている。天ぷらにすると山菜の命とも言える香りや苦味などの成分が減少し、歯ざわりだけを楽しむ結果となり、物足りなくなる。
でも、高温処理が特色の天ぷらには山菜の軽い有毒成分を除去する効果があるばかりではなく、殆どの野生植物の新芽も食べられるようになるのだそうだ。
お浸しでは、沸騰水の中に山菜を投入し20秒以内に材料を引き上げて冷水に晒すと、色彩が一層鮮やかになり、歯応えだけではなく香りも十分に楽しめる。調味料は普通の醤油。シンプル イズ ベスト。鰹節や昆布など余分な物は一切付け加えない。
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キャラブキ造りに挑戦 |
蕗には二種類がある。その一つは蕗の薹(とう)や葉柄が春の到来を告げるかのようにスーパーの店頭に並んでいる栽培種だ。
もう一つは山野に自生しているツワブキだ。秋には黄色い花が咲く。育てやすいためか観葉植物としての愛好家も多い。イギリス人は日本から持ち込んだツワブキを英国式庭園の彩(いろどり)に活用している。でも、ツワブキの薹は、栽培種の蕗とは異なり見た事がない。蕗とツワブキは一見似ているが植物としては別種なのだろうか??
我が生家の510坪の敷地内には昔も今もツワブキが群生している。母が生前、キャラブキを時々造っていた。『原料としては少し堅くなった古い葉柄の方が煮崩れし難く、皮を剥く必要もない』といっていたのを思い出す。
昭和49年12月7日に新築移転した年の暮れの帰省時に、故郷の記念にもなると考えツワブキの株を持ち帰って敷地の片隅に移植したものの、食用にしたことはなかった。時々、荊妻の友人にキャラブキの原料として差し上げていた程度だ。
去る4月25日に飛騨高山へ友人達と共に一泊温泉旅行。翌4月26日に満開の桜を眺めながら全国的にも有名な高山の朝市に出かけると、無数の野菜・山菜・漬物に混じってキャラブキを発見。その瞬間、私も『キャラブキ造りに挑戦』しなくては、との強いトリガー(引き金)にもなった。
お婆さん達が一所懸命に準備し、親しく声も掛けてくれた商品を買わずにその前を通り過ぎるのは忍びなく、むかご(自然薯の実)とヒメタケの佃煮を購入。キャラブキは我慢して買わずに帰宅。
キャラブキ造りは『案ずるよりは産むが易し』だつた。インターネットで造り方を調査。易しそうで且つ納得性も感じられた方法を素直に猿真似。初体験なので欲張らずに程ほどの大きさの葉柄を収穫。葉を切り取った状態の素材重量は900g。
@ 煮沸工程
葉柄の表面の綿毛を布巾で拭い取り数cmの長さに切り揃え、食塩を50g振り掛けて混ぜ合わせ、沸騰水で15分煮沸。煮沸時には大変強いアクの臭いが発生して驚く。
A アク抜き工程
大きなザルに移し替え、冷水を掛け流しながら1分間アク抜きしたら手にアクの臭いが浸み込んだ。大きな容器に移し変え30分間隔で冷水を4回取り替えてアク抜き。アクの臭いは少し残った。アクも味覚の内と考え2.5時間で切り上げた。
B 味付け工程
水500cc、塩昆布20g、醤油400cc、みりん400cc、砂糖100gを混ぜた溶液に材料を全部投入し沸騰するまで強火。沸騰後は吹き零れない程度の火力に落とし時々ヘラで掻き混ぜながら1時間加熱。水溶液の70%は蒸発。
その時点で花かつおを10g投入して掻き混ぜた。花かつおが残っていた水分の半分近くを吸収した。その後は焦げ付きを更に警戒し、ヘラで常時掻き混ぜながら弱火で20分加熱して全作業を完了。完成品の重量は800g。
全作業時間は約4時間。途中工程では目を離すことも出来ず、テレビや新聞だけではなく、酒を飲みながらの暇つぶしの筋肉労働。完成品の歯応え・味覚にも満足。後10Kg程度は造れる材料はあるが消費量を考えるともう一回の作業で十分。夏にはキャラブキよりもナスやキュウリの糠漬けを食べたくもあり・・・。
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近くで収穫する山菜 |
@ 土筆
昭和20年代の前半、小学生時代に1人で何度も土筆取りに出かけていた。我が生家は既に廃線になっている室木線(全長11.2Kmの石炭運搬線。側面が逆三角形をした石炭積載車の後に通勤通学用の客車が2〜4両連結されていた。蒸気機関車の動輪は片側2個。時速40Km程度と推定)とは道路を介して隣接していた。
室木線は田園地帯では5m位の盛り土の上を走行していた。盛り土の斜面こそは土筆の群生地だった。私には一面に生えている茅の中から背の高い(30cmもあった)土筆を発見し採るのが面白かったが、袴(はかま)を取るのは嫌いだった。
結婚以来出かけていた矢作川やその支流の土手の日当たりの良い大抵の場所には、土筆が生えていたが、河川管理が徹底するに連れて土筆が少なくなってきた。平成時代の若者達は土筆には関心がないらしく、ライバルは高齢者が主。それなのに、土筆が消滅しつつあるのは不思議だ。土手に撒く除草剤の影響か?
今春、我が家から僅か1.5Km地点、国道155号線脇の空き地で土筆の超高密度群生地を発見。文字通り灯台下暗しだった。僅か3坪程度の面積で洗面器一杯、荊妻と二人で所要時間は僅か15分。未だ数十メートルに亘り大量に生えていたが、袴取りが大変だし、季節を味わうにはこれだけあれば十分。
それにしても土筆の調理法は昔も今も、誰に聞いても玉子とじのみ。何の進歩も発想も湧かないらしい。
A セリ
小学生の頃はしばしばセリとタニシを採りに水田に出かけていたが、昭和26年から除草剤としての2-4-Dが一気に普及し、タニシや農業用水の魚(鮒・ドジョウ・朝鮮ナマズ・メダカなど)だけではなく、蛭までも死滅。農薬の怖さを感じると共にセリ採りは中止。
結婚直後、過去を思い出し近くの水田にセリを採りに出かけた。水田のセリは背丈が低くずんぐりむっくりしていたが、浅い溝に生えている徒長したセリよりも歯応えがあるだけではなく香りも強く、大好きだった。でも、農薬被害が心配になり、2〜3回で止めてしまった。残念ながら復活する気は今尚起きない。セリの代わりになったのが家庭菜園でのミツバだ。
B ワラビ
ワラビは南面傾斜の日当たりの良い荒地(潅木が茂る原生林)には大抵生えている。針葉樹が密植されている人工林では日光が地面に届かないためか、ワラビは殆ど見かけない。その独特の穂先の形から他の山菜と間違えることもなく、日本では最も人気のある山菜だと思っている。スーパーでは山菜の主力だ。しかし、人気抜群の東北産の軸が太い取れたての品は高価なためか、こんな分野にまで防腐剤入りの水と一緒に袋詰めされた中国産が進出。
海外でもワラビの群生地を彼方此方で見かけたが、食べる習慣のない国も多い。中華料理では何でも食材にするといわれているが、私は格式のある中華料理店でワラビ料理は見たことがない。
我が郷里では国有林を官山(かんざん)と呼称していた。潅木が茂るだけの官山は手入れをする人もなく荒れ果てていた。こんなところがワラビの宝庫だった。小学生の頃は毎年一回、実兄と共に官山にワラビ採りに出かけていた。
結婚後、毎年春の連休に西三河の山々(豊田市東南部)にワラビ採りに出かけたが、ライバルの多さに驚く。群生地を発見しても翌年に出かけると、大抵は見えざるライバルに先を越されていた。毎年群生地探しに追われていた。
数年前から一計を思いついた。春の連休前、4月中旬に出かけた。先んずれば何とやら。予期せぬほどの収穫。でも、この方法にもライバルが出現。昨年は5月下旬にも出かけたら、ライバルなし。ワラビの収穫は4〜6月まで続けられるのだ、と地元のお婆さんから耳寄りな情報を聞いた。今年は6月にも出かけるつもりだ。
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我が家の山菜 |
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@ タラの芽
今やタラの芽は温室で人工栽培(10cmくらいに切断した幹を温室内で密植し、出てきた芽を収穫)され、何処のスーパーでも手ごろな価格で売られている時代だ。タラの木はワラビと同じような条件の場所に生えている。しかし、ワラビ採りに出かけると、タラの芽は先客に採られていて悔しい思いをすることがしばしば。
数年前にタラの木を売っている通販を発見。70cmくらいの苗が細長い段ボール箱に自然薯のように詰められて送られてきた。でも、梱包の都合で根を切りすぎていたためか、移植後に枯れた。その旨を販売元に連絡したら、無料で新しい苗を送ってきた。
通販のタラの木は改良型。棘がない。先端の芽を切り落とすと残りの幹の葉の付け根から新しい芽が発生。野生のタラの木の場合、芽を全部採ると枯れるとの伝説(真偽は不明)を聞いていたが、改良型にはその欠点が無いどころか小枝がどんどん増える。新芽の成長は野菜類よりも格段に速く、二日間隔で収穫しながら楽しんでいる。
タラの芽を根元から折り取ると収穫は一箇所から一個。でも葉柄単位で付け根から料理バサミで摘み取ると次々に収穫できる。自宅栽培の利点だ。
タラの木の根は竹と同じように地中を直線状に延びていくらしい。次々と直線に沿ってタケノコのように芽が出てきた。それらの中から数本をそのまま成長させている。老夫婦二人だけの生活にはこれだけで十分だ。料理の本では紋切り型のように天ぷらを薦めているがそんな教えは無視し、私は軽く茹でてお浸しにし、ほろ苦さと香りを楽しんでいる。
A コシアブラ
コシアブラはスーパーでは今尚見たことが無い。数年前に高島屋東京店で発見。山で収穫した野生の新芽を取り寄せているのだそうだ。まだ人工栽培はしていないらしい。当時、地域一番店の松坂屋名古屋店でも見かけなかった。
ところが本年5月13日久しぶりに松坂屋豊田店に出かけたら、新潟産コシアブラを鹿児島産春大根と一緒に発見。産直市場で賑わう道の駅とは一味違うのがデパ地下(注。地下のない豊田店は一階)の魅力。でも昨年だけでもデパートは全国で10店も閉店。ゆくゆくは100万人に一つ、売り場面積5万平米以上の巨艦店だけが残るらしい。豊田店も風前の灯か??
我がゴルフ場の一つ『加茂ゴルフ倶楽部』の『憲法記念日杯』は月例杯とは異なりABCクラスミックスで参加できるクラブ競技だ。此処は野生のコシアブラの宝庫。いつもABクラスの仲間と一緒に参加。そのうちの1人がコシアブラに詳しく、Cクラスの私がOBの玉探しをしている時間内に山に飛び込み採取。帰りにお土産として貰っていた。
コシアブラの若葉は櫨(ハゼ)にそっくり。熟知している人と一緒に採取しなければ危険。私には1人で採取するほどの勇気は無い。
コシアブラの方がタラの芽よりも一層香りが強く、これぞ山菜の王様といいたくなるほどの味覚だ。こちらも通販で苗を購入したが枯れてしまった。去る5月13日に園芸店でコシアブラの苗木を発見。店頭販売では通販とは異なり、根を大きく切り落とす必要は無く鉢植えつきなので活着するはずと楽観。
植え穴を大きく掘り、14リットル入り(75cmサイズの標準的なプランター1個分)の培養土を投入して移植完了。大事に育てれば2年後には収穫可能と期待半分。後、2年間は何としてでも生き延びなくては!!
死期が近づいたと既に自覚していたゲーテは、子孫のためにと称してリンゴの木を植えた。イタリア人は子供のために葡萄の木を、スペイン人は孫のためにオリーブの木を、日本の山林地主は子孫のために檜や杉を植えるそうだが、私が残すのは高々一本のコシアブラ程度だ。
B ミツバ
ミツバの種は大変小さく、播種の際に周辺にも風で飛び散った。それらがいつの間にか野生化し冬以外は収穫できるようになったが、だんだんと葉も茎も堅くなった。しかし、早春の葉はいつも大変柔らかく美味しかった。
荊妻が旅行中とか帰省の折の高々一週間の1人暮らしでは、毎日の味噌汁は永谷園のインスタント味噌汁で我慢している。宇宙食用に開発されたといわれる乾燥野菜の熱湯による復元力にはいつも驚かされる。
調味料が既に混ぜてある味噌の味にも満足しているが、悲しいことには乾燥野菜には香りが無い。私は庭からミツバや山椒の若葉を一枚収穫し、小さく刻んでインスタント味噌汁の欠点を補強している。この程度で十分だ。
C 蕗
蕗は地下水位の高いじめじめとした半日陰で良く育つそうだ。我が家は高台にあり地下水位が低く庭はいつも乾燥している。食道がんの外科手術(平成20年6月17日〜25日まで入院)を受けた後の酷暑の折、無気力感が取れず散水を一週間怠けていたら庭の芝生の半分が完全に枯れた。さりとて時計付の自働散水機を設置するほどの熱意も沸かなかった。天罰覿面!
新築直後に山で採取した野生の蕗を庭の片隅に移植した。化成肥料をいくら撒いても育ちが悪い。でも、僅かではあるが蕗の薹も出てくるし、葉柄も季節感を味わう程度には採取できている。
D アケビやムベの新芽
我が家の6畳大のレンガ張りテラスに20年以上も前にアルミの格子棚を設置。その両端にキューイフルーツの雄と雌、アケビとムベの苗を移植。棚の下には昨春、タカラスタンダードの琺瑯鋳物製露天風呂(五右衛門風呂タイプ)を設置。
夏は棚全体が夫々の蔓と葉で覆われ涼しくなるだけではなく、露天風呂も快適だ。初夏にはアケビとムベの蔓が勢いよく延びる。その先端を20cm程度切り取ると柔らかな山菜として食べられる。秋にはアケビとムベが熟し、実を食べた後に残る分厚い皮はそのままでは苦味が強すぎるが、天ぷらにすると美味しく食べられる。私が天ぷらにして食べる数少ない山菜だ。
E 山椒
数年前に植えた山椒は大きく育った。葉は食べきれない。
待つこと久し。今年初めて実が生った。まだ青いが・・・。
F 柿
柿の種を落としたのが自然に発芽し、大きく育った。
5月上旬の柿の葉は柔らかくて美味しい。毎年一回だが賞味。
G スイートマルベリー
5月13日に園芸店で実付の苗木を発見。マルベリーとは木イチゴの一種ではなく、桑の実を意味するそうだが、同じ桑でも養蚕用とは別種だそうだ。
アントシアニンがブルーベリーよりも数倍も多いとの説明書を読んで衝動買い。若葉は山菜として食べられるそうだが、実は名前の通り甘かった。桑酒にも使えるらしい。
コシアブラ同様、14リットル入りの培養土を一袋、ブルーベリーの横に掘った大きな穴に投入して移植。ベリーと名付けられてはいても、ブルーベリーの葉は柴のように堅く食べられない。
H 茗荷
新築直後に地元出身の職場の先輩から苗をプレゼントされた。茗荷の栽培は手入れ不要、大変育てやすいから邪魔にはならないといわれた。植えっ放しなのにその言葉通り、夏〜秋には食べきれないほどの花蕾が群生。
夏の素麺には欠かせぬ薬味として愛用。それでも食べきれない分は酢浸けにしたり、柴漬けを造ったりして保存食にしていた。5月には若い茗荷たけが芽生え、柔らかい間に少しだが賞味。
I ユキノシタ
垣根の陰になった部分の高麗芝は日光不足なのか成長が悪い。そのままにしていたら雑草が進出。荊妻がカバーグリーンとしてユキノシタを植えた。
大変繁殖力が強く、同じ場所に植えていた蕗や茗荷だけではなく芝生すらも駆逐する勢いだ。でも、可憐な花が美しい。お陰で雑草が生えず役立っている。時たま丸い若葉を天ぷらの材料にしている。
J 大葉(青紫蘇)
大葉は大変逞しく成長する。高さ1m以上にもなり、薬味としての僅かな葉の採取程度ではたった一本でも持て余す存在だ。素麺などの薬味としての食欲亢進材だ。晩秋には大量の実がなり、佃煮にして保存。
大変繁殖力が強く、翌春には落ちた実から数え切れないほどに発芽する。でも、数年もすると葉の形も色も悪くなり雑草のように感じられるので、園芸店から新しい苗を購入している。
K アシタバ
今日採っても、明日も採れるほど成長力があるのがアシタバの語源だそうだが、我が家の土とは相性が悪いのか、言葉ほどの成長力は感じられない。
真夏、ナスやキュウリに飽きた頃、荊妻が時々天ぷらにしている。
L ドクダミ
ドクダミは食べるために植えたのではないのに勝手に生えた。いつの間にか逞しく繁殖し始めた。
幸い荊妻の友人にドクダミ茶の愛好者がいて、毎年1〜2回大量に採取。雑草取りの代わりとなり感謝している。私はドクダミの強すぎる香り(匂い)に馴染めないままだ。
M コンフリー
一昔前健康食品ブームが発生した頃、家庭菜園の一角に植えた。時々若芽を天ぷらにしていたが、肝障害を起こす恐れがあるとの報道に接し、以後そのまま放置。大変丈夫な多年生の雑草だが、花が可憐で美しい。
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おわりに |
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@ 山菜(木を含む)
山菜とは、野菜〜山菜〜薬草のように、品種改良された野菜と今尚民間では愛用者もいる薬草類の中間的な存在だと評価している。
モンゴロイド系の諸民族が大勢暮らしている、中国・東南アジア・中南米の市場では数え切れないほどの、これら3種類の植物が混在して売られている。しかし、私にはその分類原理も分からないし、無理やり分類するニーズも感じない。
一方日本では山菜は今や珍味にまで昇格し、デパ地下の一等地で売られるようになった。我が家の山菜は毒にも薬にもならないが、栽培は小面積で可能だし家庭菜園の一角で楽しみながら付き合っている。手持ちの『山菜全科』という本には何と135種類もの国産の山菜が紹介されている。
『みよし市(豊田市西部に隣接)』の愛知県最大の園芸店『三貴フラワーセンター』は我が家から程近い10Km地点にあり、時々出かけて珍しそうな山菜を発見したら栽培する予定だ。
A 薬草
狭義の薬草だけでは無く、得体の知れない木や草の根・動物の臓器とか骨や巣・キノコや昆虫なども総動員している所謂漢方薬は、何も漢民族だけの専売特許ではない。世界各地の先住民の市場では、漢方薬と類似の品が山のように積まれて売られている。
でも、日本では西洋医学が普及したためか、道の駅でも薬草はセンブリくらいしか見かけない。藁をも掴む思いのがん患者の間で一時は人気も沸騰し、高値を呼んだアガリクスなど各種のキノコ類も影を潜めた。日本人も少しは賢くなった証拠か?
何処の空港か忘れたが私が購入した漢方薬は20年以上も前、腎臓がんで片方の全摘手術を受けた義母(今年は何と卒壽)に贈った、豪華な容器に梱包された一万円の朝鮮人参だけだ。信者には貴重な薬草らしい。私も試飲したが苦いだけでお茶の代わりにもならず失望。アルカロイドの含有率が高いだけの雑草と判定した。
B キノコ
山菜と並んで貴重な山の幸はキノコだ。蕨を求めて山に入ると随所でキノコに出会う。マニアはわくわくするそうだ。でも、私は食用キノコと毒キノコを区別できないので一度も採取したことが無い。
キノコが大好きな私が食べるのは商品として売られているキノコだけだ。マツタケ・トリュフのような超高額品はほんの少しだけ購入。でも、今や中国産の冷凍マツタケは2Kgが1万円以下の価格。一年中通販で売られているので気楽に購入。香りは殆ど無いがマツタケご飯などでやせ我慢しつつも楽しんでいる。
世界的に見ればキノコ狂い民族は予期に反し少ない。でも、北欧の森はキノコの大産地のようだ。市場では日本では見たことも無いいろいろなキノコが山のように積み上げられている。中国南部雲南省でもビックリするほど多種類のキノコが売られている。彼らにとってはマツタケも単なるキノコの一種。他のキノコと類似価格なのに驚く。みんな天然物だ。
一方、日本では天然物のキノコ類は殆ど姿を消し、今や人工栽培時代に突進。シイタケ・シメジ・マイタケ・キクラゲ・ナメコ・エリンギ・マッシュルーム・・・枚挙に暇なし。これらの中で私が絶対に買わないのはおがくず栽培のシイタケ。シイタケはクヌギや楢のほだ木栽培品に、馬鹿丸出しで今尚拘っている。おがくず栽培品は偽物に思えて食べるのが嫌なのだ。
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