定年退職後11年余り経った。その間、『細々と生きている年金生活者』としての私は、自動車技術とは無縁な余生を過ごした。しかし、マスコミに氾濫する電気自動車に関する無責任な情報への不快感を、とうとう抑えきれなくなった。
馬鹿丸出しの記者達の生き方とは、『みんなで渡れば怖くない』式に、他人に同調した人真似報道に参加するだけだ。そこで私は『目には目を』とマスコミに負けないように、蟷螂の斧とは承知の上で、敢えて乱暴な推論を書くことにした。賢人各位からの読後感を通じて議論の精度を上げたいのが本音だ。
自動車の価値を大きく支配するのは走行コストだ。ガソリンエンジンであれディーゼルエンジンであれ、燃料1リットル当たりの走行距離で比較評価されている。
かつて、燃費は一定の速度(日本では普通自動車の制限速度の上限である60km/h)でテスト走行を行った結果(定地燃費)を燃費として表示していた。しかし加速回数が多くなる市街地の走行では燃料の消費量が大きくなること、また、60km/hにおける定地燃費を意識するあまり、極端なギア比と出力特性のエンジンを組み合わせた自動車が登場するなど、表記上の燃費と実際の燃費が乖離し実態とそぐわない状況が生じてしまった。
そこで新たに採用されたのが、市街地を想定した10項目の走行パターンを想定した10モード燃費、そして郊外を想定した15項目の走行パターンを加えた10・15モード燃費である。
なお、このテストは実走ではなくシャーシダイナモ上で行うが、その際に駆動輪に与える負荷は車両重量ごとに区分が分けられている。そのため、同じエンジンや駆動系を備える同一車種の中でも、グレードによってはわずかな重量差から負荷の区分が異なってしまい、燃費の差が生じている。
例として、2代目フィットでは同じ1.3LのFF車で、1,010kgの車体が24.0km/Lであるのに対して、1,030kgの車体は21.5km/Lとなる。また、前者にサイドエアバッグなどのオプションを装着すると、燃費表記は後者と同じ21.5km/Lの扱いとなる。
なお、定地燃費よりは乖離は小さいものの、依然として実際の燃費とは差が生じている。また、アイドリング状態の燃料消費も測定対象に入るため、停車中に自動的にアイドリングストップを行う一部の車種については極端に良い値が出ることもある。
国土交通省認可時の測定条件
- 3,000km 慣らし走行後の車両
- 完全暖機状態 60km/h 15分暖機後モード測定
- 走行抵抗設定 車両(空車)状態+110kg(2名乗車分)
- 搭載電気機器 OFF状態
- エアコン OFF状態
2011年4月より新試験モードとしてJC08モードに変更される事が、2006年11月1日付けで国土交通省より公示されている。
測定方法
- アイドリング状態 (20秒)
- 20km/hまで加速する (7秒)
- 20km/hをキープして走行 (15秒)
- 20km/hから減速して停止 (7秒)
- アイドリング状態 (16秒)
- 40km/hまで加速する (14秒)
- 40km/hをキープして走行 (15秒)
- 40km/hから20km/hまで減速 (10秒)
- 20km/hから40km/hまで加速 (12秒)
- 40km/hから減速して停止 (17秒)
- アイドリング状態 (65秒)
- 50km/hまで加速する (18秒)
- 50km/hをキープして走行 (12秒)
- 40km/hに減速して走行 (4秒)
- アクセルをオフにした状態 (4秒)
- 40km/hから60km/hまで加速 (16秒)
- 60km/hをキープして走行 (10秒)
- 60km/hから70km/hまで加速 (11秒)
- 70km/hをキープして走行 (10秒)
- 70km/hから50km/hまで減速 (10秒)
- 50km/hをキープして走行 (4秒)
- 50km/hから70km/hまで加速 (22秒)
- 70km/hをキープして走行 (5秒)
- 70km/hから減速して停止 (30秒)
- アイドリング状態 (10秒)
- 上記10モードでの測定3回、15モードでの測定1回の結果から算出される。
- この間、車両から排出されるガス中のHC, CO, CO2の排出量(g/km)を測定し、カーボンバランス法により燃費を計算する。
自動車会社は新車の発売前に、行政が決めた走行パターンに基づいた走行試験結果を公表している。走行時に燃料を消費しない電気自動車の場合は暫定的に、走行距離当たりの消費電力量(電気代金)で内燃機関搭載型自動車と比較されている。
でも、内燃機関搭載型自動車(以後、本論ではその代表としてガソリン自動車と書く)でも電気自動車でも性能をよく見せたいからか、エアコンの消費エネルギーは意図的に除外されている。
両者を比較する時にエアコンの運転負担を除外すると、電気自動車推進派には商品価値の評価に直結するほどの致命的なハンディが隠せて好都合のようだ。販売を開始すれば、予想外に走行距離が短い、とのひ弱な実力が直ちにばれる筈なのに、目を覆いたくなるような卑しい商魂!
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