風力発電騒音とエコキュート騒音 5/7
新しい低周波音被害


5.二枚舌の「参照値」

 「新しい低周波音問題」はこれまでのように高速道路や空港や鉄道や工場地帯の様に元々明らかに騒音が有りそうな地域ではなく、これまで「静かな地域」にこそ発生する事になった。それは「可聴域の騒音を低周波音や超低周波音に追い込む」という“静音化”技術の進歩によりなされた。

その技術の裏付けとなっているのが、今や低周波音問題に“君臨”する「参照値」である。もちろん「参照値」と静音化の技術は、「鶏と卵」の関係にある。“「参照値」は単なる参考であり、規制値ではない”としながら、一方、行政の現場では既にれっきとした「ガイドライン」として存在している。

 そして、一方、普天間爆音訴訟の「低周波音10Hzで97.5dB以下なら問題無い」と言うような「参照値」を明らかに大きく超えている場合には、「参照値はあくまで規制値ではないから仮に超えていても問題はない」として行政は逃げてしまえると言う、何とも卑怯極まりない二枚舌の代物なのである。だが、「ガイドライン」と名が付けば法的には規制値であることは間違いないのだが行政はそれを黙殺してしまう。

 上記のエコキュート、風力発電の騒音測定データを見れば解るように現地での測定値が「参照値」を超えることは恐らくなく、更にはこれまでの低周波音被害に特徴的な卓越周波数もほとんどなく、挙げ句に、暗騒音にも等しいような3050dBと言う比較的小さい音圧では、タダでさえ問題にすることが難しい低周波音被害の中でも、問題にする事自体を一段と難しくしている。


 6.「超低周波複合音」

「参照値」がある限り、低周波音被害は現状に於いては、最早、法的、またそれに基づき行政的(法的)に解決することは難しい。従って、この現状を打破するには、「聞こえない音で被害は生じない」と言う、「参照値」等が依って来たる、(聞こえる、聞こえないを基準とする)”感覚閾値理論”で人間の感覚を律する発想を根本的に覆すしかない。

 
と言って、私ごとき個人がワーワー喚いたところで現実としてどうなるモノではなかろう。が、ひとまずは、新たな低周波音被害であるエコキュートや風力の被害から得たヒントを基に、一つの「低周波音被害発生理論」を提示したい。それは先ほど「ライトさん」が掲示板で展開した、“263.「卓越周波数」についての考察”、“281「超低周波複合音」に感染した人の空間”として提示した理論の延長線上にある。

 ライトさんの理論を紹介すると、

 騒音を周波数分析すると、ある特定の周波数のみが突出した数値を示すことがあります。これを卓越周波数と言います。特に、可聴音(騒音周波数20Hz以上の騒音)において、卓越周波数があるとそれが耳について気になることがあります。
 非可聴音(騒音周波数20Hz以下の騒音)である「超低周波複合音」では、卓越周波数に被害の原因を求めたり、又は、周波数分析値の中で卓越周波数を特定しようと探すことは、無駄な努力になります。
 「超低周波複合音」の被害者の中は、夜間は頭に響いて眠れないが、昼間は楽になるので、昼間に睡眠をとり、夜間は起きているという、昼夜を逆転して生活されている方がいます。


 昼夜逆転の理由を説明します。これは、騒音のエネルギー総量が原因です。昼間は、普通騒音のエネルギー総量が、「超低周波複合音」のエネルギー総量に勝るので、「超低周波複合音」を感じません
 夜間は、普通騒音のエネルギー総量が下がり、「超低周波複合音」のエネルギー総量が勝りますから、被害者は夜間になると苦しみ眠れなくなるのです。

 「超低周波複合音」において、卓越周波数に固執すると、周波数分析の中に卓越周波数らしきものが無いと、被害が無いという、間違った結論になってしまいます。

 騒音の原則は、騒音エネルギーの勝った方が聴こえてくる、負けた方は感覚として存在しないということです。


 7.超低周波複合音私論

 これを私なりに考えてみると、

超低周波音の被害については「有り得ない」「知見がない」と言う事で”低周波騒音被害が全面的に否定されたのが、「横浜市営地下鉄における振動・低周波音被害責任裁定申請事件」である。この現場では、10Hz-68dBにピークが有るのだが、10Hzにおける「参照値」は92dBであり、尚かつ、”世界的にも超低周波音による被害は知見がない”と言うことで被害は全面的に否定された

 しかし、定説や知見がない言うことは、言い換えれば、単に学者が研究していないのか、研究しても解らないのか、解りたくないのか、それとも問題にならないのか、問題にしたくないのか定かではないが、少なくとも、被害者の現実的被害を「否定」した方が、”都合”が良い立場のほうの人間が沢山居ることは確かであろう。

 超低周波音が数値的に20Hz以下とされているのは、単に人間の可聴域以下(聞こえなくなる)であると言うことに基づいている。しかし、20Hzを境にして音の物理特性が劇的に変化するわけではなく、20Hzと言う数値で単純に仕切れるモノでないことは多くの専門家も認めていることである。
 では一体全体、何Hz以下を超低周波音と考えてみると、ひとまずこれまでの閾値理論の延長線上で考えれば、聞こえるか、聞こえないかで区切るのが妥当なのであろう。が、それは単に実験の平均値でなく、人間個々人の聴覚閾値以下の“音“(=聞こえない音)と「不明瞭」に考えてみたい。

そもそも、音は音として聞こえなくても、音そのものは発音体の振動によって生じる空気の振動エネルギーであり、それを人間の聴覚が音として認識すれば「音」であるが、仮に聞こえなくても、そのエネルギーは厳として存在するわけである。

 従って、音を「聞こえる、聞こえないとしてだけで捉える」聴感覚閾値に基づく「参照値」は、単に可聴域の空気振動エネルギーだけを対象にしているのであり、人間が音として認識しない部分、すなわち、不可聴域の空気の振動エネルギーを全く無視した考え方であり、エネルギー理論的には完全に間違っているとしか言いようがない。



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