風力発電騒音とエコキュート騒音 2/7
新しい低周波音被害


1.エコキュート騒音

エコキュートについては「経済性と低騒音」が売り物なのだが、これについては既に拙文「"科学的"知見の欺瞞 静音化、低騒音そして参照値 エコキュートは本当に経済的で静かなのか」で述べたように、長期的に見れば決して経済的ではないし、低騒音=静音についてもその問題点について指摘したので詳しくはここでは述べない。(なお、経済性については08/12 「当初の設定を変えないとエコキュートは経済的でない」ことが報道されているまた、14/07/25には「パナソニック、給湯器103万台リコール」が報道されている。)

 
昨今、エコキュートとソーラーの電話や訪問販売などの営業が当地では激しい。訪問販売の中には「”ウニャウニャ”ですが、電気設備の調査、点検でお話ししたい(orご説明したいor調査したい)ので、玄関まで出ていただきたい」などと言うような、とにかく直接会いたがる営業が増えている。

 こうした営業はこれに限らず、我が家はCATVなのだが、「今度そちらの地域ではアナログからデジタルに切り替わることになりました。つきましてはブースターを交換したのですが、ご都合の良い日を…」などと、有無を言わさずアナログからデジタルに切り替えさせようとする様な営業をする。これは多分、外部の業者に出来高制で依頼しているのだろうが、このような詐欺まがいのことまでして、国策は進められていくのであろう。

 今回は私的時系列として、汐見先生や関係者の方により現地で測定されたデータを基に、エコキュートの「静音」(※)について、具体的に追加的に述べたい。これまでのボイラーなどに比較してエコキュートの騒音は数値的には確かに静かではある。が、問題は、絶対数値的には静かな騒音と言えども、それが現実的に今まで生活音などほとんどしない深夜11時頃から明け方6時頃まで”静かな騒音”が続くと言うことである

 この時間帯は、そもそも人間の活動が鈍り、電気の消費量が落ち、電気料金が比較的安価に設定されているので、エコキュートはこの間の電気を使用して、翌日の昼間から夜間までの一日に必要であろう一定量のお湯を沸かし保温しておく様に設計されている。稼働時間に関しては機器の大小(湯沸かし量)は関係なく、いずれも7時間前後である。エコキュートのしくみ


 この静か”なのだが、音的にそれまでの機器(例えばガス湯沸かし器など)と比べて静かと言うだけで、その間何の音もしないと言うわけではない。ある測定では図1クリックで拡大のように12.5Hz〜80Hzと言う超低周波音から低周波音域で5025dBと言う”静音”を発する。数値的には、むしろ、暗騒音の方が大きいのではなかろうかと思ってしまうくらいの“静かな騒音”である。これは確かに物理的数値的には静かではあるが、聞こえないわけではない。

 そして、その音が問題なのは、カエルの鳴き声や木の葉の擦れ合う音や川のせせらぎや波音などの様な自然の音ではなく、あくまでモーターが創り出す継続的機械音であり、そもそもの「音の質(=音色)が自然界に存在する音と違う」と言うことである。

 で、話は逸れるが私は「スタートレック」シリーズが好きでTVで殆ど見たのだが、恐らくこれらの音はドラマの主なる舞台である宇宙船の中で終始しているはずではなかろうかと私が想像する音(例えば、エアコンなどのファン音、防音室内に聞こえるであろう機械音、etc)ではないかと思う。ヒョトしたらその時代にはこうした低周波音問題は技術的に解決しているのか、あるいは、人類が”進化”(or聴感覚的に退化)して感覚的に感じなくなって居るのかもしれないが、どうもそうした事を考え始めてから、このドラマを見ていると宇宙船の限られた環境内での閉塞感と「ウオーン」とか「ウオンウオン」と静かに鳴り続ける音を想像すると息苦しくなってしまう。

 話を戻して、この”騒音”が、多分、これまでのような普通のボイラーが湯を沸かす程度の短い時間、(最長の継続時間でお風呂の40分くらい)なら恐らく問題は無いであろう。もちろんこの間ボイラーも状況によるが基本的には低周波音を発し続けており、その音圧はエコキュートに比べ遙かに大きいので、ある程度は騒音として問題にはなるが、エコキュートのように低周波音被害者を創り出すようなことはなかった。 

しかし、エコキュートが”低周波騒音問題”を発生させたのは以下の3点に問題が有ると考える。

@毎日、深夜に
A長時間(7時間程度)
B機械音を延々と発し続ける


 と言う点である。


こうした“当初は聞こえないかも知れない騒音”である「静かな振動とうなり」は、機器の稼働中発せられ続け、非常に狭い地域に、具体的に極端に言えば、その機器の室外機が設置された方向の隣家の特定の部屋(主に寝室)にだけに低周波(音・振動)を発し続け、結果として隣人に被害を与える。そして、その影響は周囲が静かであればあるほど、その”効果”は大きく、その他の部屋にも影響がある場合もある。

 エコキュート被害者の訴えに依れば、”この「静かな振動とうなり」

被害者に絶えず襲いかかり、睡眠を奪い、被害者は苦しみ、痩せ細り、果ては全身が衰え、日々の生活もままならなくなり、鬱的状態に落とし込められ、明日への生活力を無くし、地獄のどん底に落とし込まれ、果ては生きる力まで奪い、なす術もなく死に至る場合もある。”

 と言うことである。

 もちろんこうした死の原因は医学的には、あくまで騒音ではない。被害者は騒音の継続による苦しみに耐えられず、なおかつ、それを除く術のないことを知り、鬱状態にいたり、自殺するのである。これは化学公害等のように毒物で死に至るのではないので、音という証拠の残らない、さらには、低周波音と健康被害の因果関係が、国策的に”科学的”に証明されていない現在、もちろん法的にも加害者を責める事は出来ず、第三者的には「原因は良く解らないがとにかく鬱で死んだ」と言うことになる。

 さらには、低周波音の影響は個人差が大きく、いわゆる工学系の専門家が望むような一律による数値(例えば、聴覚閾値、参照値など)によっていわゆる”科学的に因果関係”を証明することは理工学的分野だけのアプローチだけでは不可能であろう。これは他の感覚公害などにも言える特徴ではなかろうか。もちろん、”46%の人が花粉症”(提供:DIMSDRIVE)と言われるくらい低周波音を感じる人間が存在すれば、研究も予防も進むのであろう。

 話を戻して、低周波音の苦しみによる自殺という結果は、元を正せば「騒音による殺人」であるが、その方法は、「ブスリ」と一気にやるのではなく、長期にわたりジワジワと慢性的に責め続け、”本人が勝手に死ぬ”のであり、”加害者的には”格別な証拠は残らない殺人方法としてはなかなかに完全犯罪と言えよう。これが「エコキュート騒音被害」だ。


 では、”エコキュート殺人”の真犯人の主犯はと言うと、図1の12.5Hz25Hz(常用電流の1/4と1/4の周波数)を主とする継続的「唸り」と、12.5Hzが引き起こす継続的(空気)振動と考えられる。

 ※静音化 音を小さくして、人間の耳に聞こえにくくするには、モーターを小さくするとか、距離を離せば問題ないのだが、その性能を維持するために、モーターの回転数を少なくすることにより騒音=回転音+風切り音を小さくする。その結果、聞いた感じでは音は低く、小さくなるのだが、それが深夜長時間続くとなると、その低周波音が低周波音被害者を生み出す。


エコキュートの被害は既に複数の低周波音被害者団体に全国から”点々と”寄せられているが、一般の低周波騒音被害と同じく、全体としての被害状況をまとめることは難しく、団体でも訴えのあった被害を知るのみで、全容を把握仕切れていない。多分、メーカー等にはそれなりの苦情が寄せられ、全メーカーを集計すればそれなりの数が出てくるはずだが、電力会社も、メーカーも、そして環境省も「そう言った被害事実は無い」としている。

こうしたことになる理由はこれまでの低周波音被害と同じく大きく3つ有る。

 @  恐らくこれが現在でも一番多いと思われるのだが、(予定)加害者である設置者と(設置業者はこうした問題が有るであろう事は既に充分知っているはずであろうが)(予定)被害者である「お隣」はエコキュートが低周波音が被害をもたらすと言うことを全く知らないと言うこと。
 A  次に、被害者側としては、被害後、低周波音についてある程度知って来てはいても、一般的には、騒音でさえ、騒ぐとキチガイ扱いされかねない日本で、ましてや「聞こえない」とされている低周波音で騒ぐと、「こんな事で騒ぐのは間違いなく××××と思われるのではないかしら」などと考え、己の心情を押さえ込んでしまう日本人特有と言っても良い「世間体を重んじる、事なかれ主義」である。流石最近はぶち切れる人が出てきた。”良識”のある人は自分で死んでしまうか、それよりもまずは避難とか、引っ越すとか考えるが、現実的にはなかなかそうもいかない場合も多い。 
 B  そして、現在において決定的なのは、あまりの苦しさに、世間体をかなぐり捨てて、行政に訴えても、民民の問題でもあり、さらには処理の難しい低周波音問題と言うことで門前払いを喰わされてしまうことである。運良く、行政が音源の騒音測定をしても、その大きさ(音圧)はもちろん環境基準値を下回り、更に運良く低周波音域の測定まで漕ぎ着けても、その測定値は図1のように現今における“低周波音専門の規制値”とも言える「参照値」には全く届かず、行政としては「全く問題なし」として相手にされないことである。

こうした状況からも、行政的にはエコキュートによる被害は全く無いことになっているのである。

 この間の事を'08の秋に環境省に被害者の声と被害状況アンケート集計と共に送付したが、”問題なし”となったのか、選挙が近づいていてそれどころではないのか梨の礫であった。


90 110731 エコキュート被害訴訟

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