数百年近くもの長い間、周辺の大国に蹂躙され続け、遠くは30年戦争の、近くは両大戦の発火点ともなっただけではなく、戦火にさらされながらも、民族のアイデンティティ(民族・宗教・言語・風俗習慣文化等)を頑ななまでに守り続けていた中欧諸国にも、待ちに待っていた『我が世の春』が、ソ連の崩壊を契機として遂にやってきた。
緑豊かな大自然に恵まれた郊外では、行き届いた国土への過剰とも思える手入れを感じる一方、各都市の中央広場は、廃墟にされた不幸な過去を忘れさせるかのように、美しく復元された中世の街並みに取り囲まれ、地域の老若男女が集う憩いの場としてだけではなく、海外からの観光客をも引きつける観光スポットとしても見事に復活。
蕩々と流れるドナウ川と悠々たる時の流れに身を任せ、この世の幸せを満喫しているかのような人々の姿に接していると、眩しささえ時には感じられた。バブルが崩壊した結果、老後の不安に襲われているのか、世界に冠たる貯蓄を持ちながらも、心のゆとりを失いかけたかのような日本人とは、実に対照的にすら感じた。 |