日本人の名目所得は今や世界のトップクラス。活用可能な国土が狭いため、高価な土地と食料を買わされることさえ我慢すれば、日本は名実共に一流国の仲間入りを果たしたとの所見にしばしば出合う。
▼そもそも物の取引は価値イコール価格という方程式を、満足すると相互に認めたときに成立しているはずである。ところが日本で欧米品は、同レベルと見なされている国産品よりも格段に高く、欧米で日本品は現地品並みの価格で売られている。この矛盾をどう判断すべきか。
▼欧米人が産業革命を起こし、以来二百年間にわたり人類の進歩に貢献し続けた事実を日本人が高く評価しているだけでなく、ノーベル賞を独占し、先端科学技術から芸術・ファッションに至るまで、今なおリーダーシップを執り続けている彼らへの尊敬と信頼の念からではあるまいか。
▼日本人が、明治以来彼らから受け取った情報に匹敵する独自の成果を挙げ続けて初めて、日本は一流国グループへの入会金と会費とを払ったことになるのではあるまいか。そのときにこそ国際摩擦も根本的に解消されよう。
▼日本の小型車技術は世界一との世評がある。それが真実ならば“桃李もの言わざれども下おのずから蹊を成す”ように、豊田市は日本語を必死で話す欧米人であふれ、われわれは彼らにいやでも追い回されているはずだ。
▼既に始まっている低燃費・高品質車の世界競争でさすがはトヨタ車だと、欧米人が本心から敬意を払いながら喜んで買ってくれる車を開発することこそ、彼らに借りを返し、日本を真実一流国に押し上げるための、われわれに課された応分の義務ではあるまいか。(I)
蛇足。文末の(I)のIは石松のイニシャルを表す。あれから27年が経った今、豊田市には外人が溢れるようになった!
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