「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書 (平成23年6月)」について へのコメント3

第2章 風車騒音に係る
(国外の)最新知見 へのコメント2

 風車の低周波音問題的にはなかなか興味深い、「風力発電施設の設置を環境影響評価法の対象事業として追加することを検討すべき」とする答申を受けて開催された「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」において行った結果の取りまとめが平成23年6月環境省総合環境政策局により風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書[PDF 488KB] として出されたと言うのは前回の話だが、その続きと言うより第2章で「風車騒音に係る最新知見」で国外の「風力発電所からの風車騒音に係る文献等」の「最新の研究論文や調査報告書、学術書籍等」が資料として以下の2〜7の6つファイルが翻訳、要約されている。

 さて、前回に続き今回は3から始める。

2 アメリカ・カナダ風力エネルギ協会報告書 Wind Turbine Sound and Health Effects An Expert Panel Review 85P
3 オーストラリア国立保健医療研究評議会報告書(2010) Wind Turbines and Health A Rapid Review of the Evidence 11P
4 Wind Turbine Noise 2011 の会議総括レポート Wind Turbine Noise 2011-Post conference report
5 オレゴン州における風力エネルギ開発に係る戦略的健康影響評価 Strategic Health Impact Assessment on Wind Energy Development in Oregon 134P
6 風力発電設備の健康影響の研究:独立専門家研究班の報告 Wind Turbine Health Impact Study: Report of Independent Expert Panel164P
7 風車騒音 Wind Turbine Noise
環境省戦略指定研究「風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」において得られた研究成果概要(中間報告)

オーストラリア国立保健医療研究評議会報告書
Wind Turbines and Health A Rapid Review of the Evidence

この報告書は、風力発電と人の健康への影響に関して、最新の文献に基づく証拠の検討から知見を提示することを目的として、「風力発電所による直接の病理学的な影響は無く、人への影響は既存の開発ガイドラインに従うことによって最小化される。」という主張が証拠によって支持されるか否かを明らかにしようとしたものであり、結論としては、この主張はもちろん支持されるのだが、その過程が中々強引である点が興味深い。早い話"専門家"の論文という名の”学会・業界の噂話”をまとめたレポートに過ぎない。

と言うことで、2とダブる点が多く、取り分けて述べることもないが、要約と結論にはおもしろい点が少なくなく、彼らは海外資料の中から”引用整理”しているだけであり、もちろんその引用にはかなりのバイアスを感じるが。

要約
@ 感覚閾値以下の超低周波音が、生理的もしくは心理的な影響を生じさせるという信頼できる証拠はない 証拠はないかもしれないが、事実はある。でなければこうした問題は起きてこない。しかもこれは随分古い言説だ。(1995)
A 最新の風力発電からの超低周波音は、風力発電所近傍の住民に健康被害を及ぼすようなレベルの音源とはならない。 現在問題になっている風力発電の騒音は最新の風力発電施設ではない。従って、如何に最新のモノが問題無くても昔の”前科”は今時余程風車に関し無知な人でもない限り慎重になるのは当然である。只しかし、催眠商法が一向に無くならないように同じ手(”関係者のみ”囲い込み、建設の美味しい所だけを説明することは、特定商取引法71条1号、6条4項の「公衆の出入りしない場所で契約の勧誘を行うこと」にかなり近いと思うが)は問題とならないのだろう。(2006)
B 風力発電が人の健康に影響を及ぼすことを示す査読を受けた科学的な報告が無いことを調査結果が明確に示している。 査読」と言うのを学者業界では非常に有り難がるが、こうした問題のように風車事業者側に付けば講演の一つでも来て美味しい思いができるかもしれないが、被害者側について”現行理論”を否定するような極めて少数派になれば、当然ながら業界からの爪弾きとなり、兵糧を絶たれることは明らかで、専門家として暮らしが立たなくなる、などと言うまでもない。従って、「風力発電が人の健康に影響を及ぼすことを示す科学的な報告。」に査読を行うような専門家はおらず、当然ながら”査読付き報告”が無いことは明確である。(2009)
C 風力発電からの騒音は、聴力損失もしくはその他の人への健康影響のリスクを引き起こさない。風力発電から生じる可聴域以下の低周波音や超低周波音は、人の健康に対するリスクではない。 (2009)
D 風力エネルギは、従来の他の発電方法よりも健康影響への関連は低く、むしろ人類の健康にとって有益である 原文に依ればこれはWHOの2004年の論らしいが、これは「放射能は返って体によい」と同じ様な事?それとも訳し間違いと言うより訳したり無い、説明不足か。
E 現在のところ、問題となっている風力発電所からの騒音放射の中に、特別な特性について科学的に確認された事例はほとんどない。現段階で、信頼できる公表された文献は、騒音影響評価の計画段階に特別な特性を含めることに賛成していない。
F 風力発電に関する超低周波音について多くの議論がメディア上で行われている一方で、超低周波音が最新の風力発電から発生しているという検証できうる証拠はない。 「最新の風力発電」が必ずしも問題というわけではない。問題になっている風力発電の騒音が問題となったのはこのころなのだから造られたのはこれ以前のモノであり、「問題となる風車は最新のモノではない」。最新ではないモノについてはどうなのか検証しろ。(EPHC, 2009).
G 風力発電からの騒音が、風力発電症候群(WTS)と呼ばれる症状を引き起こすという主張があるが、超低周波音や低周波音に関連するWTS の症例を紹介している症例研究でしかない。査読を経て、学術雑誌に掲載されてはおらず、音響学の専門家から厳しい批判を受けている。 また出ました査読が。これについてはBで済み。そもそも一部の症例研究から一般的、広範な研究が生まれてくるのではないか。「症例研究」と言う各論が積み上がり総論が出てくるのではないのか。それ以前に総論として、「風車は大丈夫」と言う、証明は何ら無い。(2007)
結論
@ 風力発電のような再生可能エネルギを利用した発電に伴う健康影響は、従来のそれほど評価されておらず公害を伴った発電と比べて、健康への影響とは関連していない。 「公害を伴った発電」とは何を指すのか。原発のことか。
A 学術論文、調査、文献調査や政府報告書を含む入手可能な証拠を再検討した結果、「風力発電所に係る直接の病理学的な影響はなく、人への影響は既存の開発ガイドラインに従うことによって最小化される。」という文章は、容認される。 南オーストラリア州で定められたセットバック(p.10)は「暗騒音レベル+5dB  固定値として以下を満たすこと。 郊外35dB 郊外以外の地域 40dB (風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会 諸外国における風力発電所に係る環境影響評価について(騒音・低周波音関連))であるが、因みに南オーストラリア州の人口密度1.65/km2、日本は2005年(平成17年)で343人/km2である。南オーストラリア州でこれが遵守される可能性は非常に高く、「風力発電所に係る直接の病理学的な影響」がありそうなところに風車は出来ないし、風車の有るところに人間は住んでいないのであろう。オーストラリアの例を日本に持ってきても全く意味が無い。
風力発電に伴う影響を低減する方法
@ 風力発電に関する地域社会の懸念を増やす要因として、自らの意志に反して不公平と思える風力発電騒音に曝露されること、工業的に奇抜とも思われ、記憶にも残りやすい風力発電の性質、マスコミによる頻繁な報道、社会的行動や地域社会の意見を無視した状況などがある。  ここに有ることは全て正しい、等と思っていたのだが、あに図らんや下段にある南オーストラリア州で”自らの意志に従って己の利益(風車1基につき年間50万ドル(このところの為替相場85円前後では4千万円超になるが、この金額では権利金というか地代ではなく経営権でしょうね。)の為に自らの意志に従って風力発電騒音に曝露」された(即ち、広大な土地を持つであろう)地権者でさえも近くに住んでいれば超低周波音に侵され所謂「風車病」になるというオーストラリアABCTodayTonightのニュースがYouTubeで紹介されている
 言うまでもないが、字幕無しでは到底理解不能だが、有り難いことに鶴田さんにより字幕が付けられている。また、その字幕の文書化がこちらのでなされている。超低周波音の苦痛は金儲けに換えられないモノで有ることを所有者が身を以て証明しているのである。オーストラリアでは「マスコミによる頻繁な報道」がなされているのであろうか。最近日本では富者に関しての「マスコミによる頻繁な報道」などトント聞かない。スポンサーの電力会社に遠慮して自主規制して報道しないと言う噂もあるが、どうなんだろう。(12/11/28)
A 風力発電に関する騒音問題を低減するために、風力発電の騒音に曝露される者を明らかにして、定められたセットバックを行い、調査研究によって支持されていない超低周波音に関する噂を払拭するようなガイドラインを遵守すべきである。  南オーストラリア州で定められたセットバック(p.10)は「暗騒音レベル+5dB  固定値として以下を満たすこと。 郊外35dB 郊外以外の地域 40dB (風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会 諸外国における風力発電所に係る環境影響評価について(騒音・低周波音関連))であるが、因みに南オーストラリア州の人口密度1.65/km2、日本は2005年(平成17年)で343人/km2である。南オーストラリア州でこれが遵守される可能性は非常に高い、などと思っていた。しかし、それを遵守しても駄目であることが上記の例で解る。要するに超低周波音は騒音ではないのである。実はエネファームの”騒音”についても同じ様なことが言えるようなのだがそれはまたの機会に。
 いずれにしても風車騒音において、払拭されるべきはまずは、ガイドラインを遵守しない事業者であるが、決定的に排除されるべきは「超低周波音に関する被害は噂である」という事実を意図的に排除しようとする調査研究を支持する関係学会、政府機関等である。行政が風力発電に強気な所ほど、否定しなければならないよう甚大な事実を隠蔽しようとしているのではなかろうかと勘繰ってしまところだが。
B このガイドラインには、高レベルのリスク評価、データ収集、影響評価、詳細な技術的検討、および地域との協議などの様々な手段が含まれているべきで、これによって風力発電所に対する反対が減少し、アノイアンスや関連する健康影響は、避けることができるだろう。

4 Wind Turbine Noise 2011 の会議総括レポート(Wind Turbine Noise 2011 Conference)

 以下の文は上記サイトのトップ・ページの「Wind Turbine Noise 2011 ? Post conference report」の部分を訳したモノだが、それなりに経費をもらっているのだからCDになっている論文の幾つかを訳してほしいモノである。以下の文の前に、この会議は隔年開催で今回が4回目で最大だったとあり(the fourth conference, the biggest)、始まりは2005年と言うことになり、会としてはかなり新参者と言うことになろうが、以下のようにこうした現状イケイケドンドンの中ではなかなかに”革新”的な事を言っている。因みに日本から山田伸志先生が委員会に名を連ねてみえる。やはり日本に於けるこうした関係では御大なんですね。

@風力発電設備からの騒音の中で、swish(シュッシュッ)やそれに関連するthump(ドンドン)は、残された騒音の問題である。しかし、2005 年の最初の国際会議に比べて、これらに対する理解が進み、解決は遠くない。 ”低周波音や超低周波音が聞こえる人”を除けばこの問題が解決すれば”一般的な風車騒音問題”はほとんど解決してしまうのではなかろうか。
A 超低周波音は、人々の知覚に関する問題として継続している。しかし、聴覚が超低周波音にどのように反応するかに関する新しい研究にも関わらず、この影響を裏付けるような証拠は見当たらない。 「この影響を裏付けるような証拠は見当たらない」本当にそうだとして、実際に誰か具体的に調査研究しているのだろうか? 現実にこうした状況がありそれをにべもなく否定しているのだが、そうした問題はないとしている主流より遙かにこの会には期待が持てるところではあるが。
B 昼間の風力発電設備からの騒音による主要な影響は、アノイアンスである。夜間における影響は、睡眠妨害である。これらが一部の人々に疾患に繋がるストレスへ導いている。風力発電設備からの低レベルの騒音による影響が想定される以上、なぜこの影響を生じるのかの解明についての研究が必要である。 将にそうなのだ、「参照値」を遙か下回るような「低レベルの騒音による影響が想定される」という現実を実際に把握している点に於いて、被害現場に行くor被害者の生の声を聞いている本当の専門家という感じがする。まー、「しかし、要は風車をもっと造りたければ研究にもっと金を出せと言うことだろうか。

5 オレゴン州における風力エネルギ開発に係る戦略的健康影響評価
(Strategic Health Impact Assessment on Wind Energy Development in Oregon )

 全134頁と大部なファイルであり、以下を目的とし、結論的にも解らないことは解らないと極めて真っ当なモノであるようだ。

@風力エネルギ施設からの健康影響に関する質問や懸念を理解し、オレゴン州の関係者のために最も優先順位の高い健康影響に関する証拠を評価すること。
Aオレゴン州エネルギ省、エネルギ施設設置委員会、公衆衛生局、風力エネルギ産業および市民に対して、将来の風力エネルギ施設の設置判断を検討するための証拠に基づいた勧告を行うこと。
B健康影響評価に市民を参加させ、その他の関係者とともに適切で有用な情報を提供すること。
C健康影響評価を理解し知識を高め、特定の風力発電所の設置判断に役立ててもらうこと。


 そして、知見を以下のように整理している。(私の主観の範囲で行に当てはめているので、必ずしもそれぞれが適応するとは言えない)

知見 理由 結論
@ 地域社会に存在する環境騒音は睡眠妨害、アノイアンス、ストレス、認知能力の低下と関係があり、それぞれ本来好ましいものではないが、身体的健康に影響を与えることもある。環境騒音に曝露されることによる慢性的な睡眠妨害やストレスは、心臓血管系疾患のリスクを増加させ、免疫力の低下、内分泌系の異常、精神障害、その他の障害を引き起こし得る B少数ながら疫学調査によれば、風車騒音はアノイアンス、ストレス感やいらいら感(irritation)、睡眠妨害の増加や生活の質の低下と関連し、欧州の研究では風車騒音によるうるささが35〜40 dBA を超えると発生し易くなることが分かっている。
C風力発電からの超低周波音(infrasound:20 Hz より低い周波数)は人によって知覚され得るレベルより低い。
A 風力発電からの音によって起こり得る影響としては、度を越さない程度の妨害感から深刻なアノイアンス、睡眠妨害、生活の質の低下などが考えられる。慢性的なストレスや睡眠妨害は、心臓血管系疾患、免疫機能の低下、内分泌系の障害、精神障害、その他の影響の危険性を高めることがある。長期にわたる健康影響の多くは、夜間の風力発電からの音による睡眠妨害によって引き起こされるか、あるいは悪化させられるかも知れない。
A 音を騒音として感じるのは、音、人、社会的/環境的条件の要因に影響された主観的印象である。これらの要因によって、人々が音を個人あるいは集団としてどのように聞いているか、またそれにどのように反応するかが変動する。常に拒否的な社会反応と結びついている要因は、音源に対する恐怖、騒音に対する感受性、曝露される騒音の変化(すなわち、新たな音の発生あるいは音の大きさや質の顕著な変化)、および人工的な音の増加である。 D少数ながら現場調査によれば、風力発電施設の近郊で低周波音(low frequency sound:250 Hzより低い周波数)が人に聞こえるかそれに近いレベルになるかも知れないことが分かっている。しかし、風力発電からの耳に聞こえる低周波音がうるささや妨害感の増加と関連性があるか否かを決める十分な証拠はない
E風力発電の近くに住む人々は、遠く離れたところの人々に比べて風力発電からの音の影響を受け易い。その影響の程度は、施設からの距離、局地的な地形や水域、気象パターン、バックグランド騒音のレベルなど、場所の特性に依存する。
B 我々の調査における不確実性の主な原因は、音に対する人の反応が主観的であり、人々が音をどのように感じ、反応し、また対処するかに大きな幅があることに関係する。また、以下の分野においても証拠が十分でないことも不確実性の原因である。
・風力発電からの音に関する疫学的研究
・風力発電からの音の振幅変調
・風力発電による室内における低周波音(low frequency sound)の影響
B 風力発電からの音は同じ大きさのレベルでも他の環境騒音や産業騒音に比べより気付かれ易く、うるさく感じられ、邪魔になるということを示すいくつかの証拠がある @風力発電は、大きさと種類が変動する、すなわち、シュッシュッ(swishing)や脈打つ(pulsing)ような振幅変調の環境騒音を発生させる。一般に、変動音は定常あるいは一定の音よりもうるさく感じられるので、風力発電からの音は、他の環境音や産業に伴う音に比べてうるさく感じられるのであろう。
A他の環境音とは違って、風力発電からの音は夜間予想通りに小さくなるとは限らず夜間には昼間と同じかあるいはより気付き易くなることもある。これによって近隣の住民の睡眠妨害が生じることがある。
@ オレゴン州において、風力エネルギ施設からの音がバックグランド騒音レベルを10 dBA 以上増大させる、あるいは長期の屋外環境騒音レベルを35〜40 dBA 以上にすると、住民の健康と福祉に影響を与える。

オレゴン州は広大なアメリカの中でも広大な地域で人口密度は15.41人で、336人の日本とは人間の住み具合が全然違う。ここらではそもそも問題が起きそうにない様に思える。、


6 風力発電設備の健康影響の研究:独立専門家研究班の報告
Wind Turbine Health Impact Study: Report of Independent Expert Panel

 164Pとこの中で最も大部なファイルである。「マサチューセッツ州環境保護省は、同州公衆衛生省と協力して、風力発電への曝露に関連すると考えられる、確認されたあるいは潜在的な健康影響を見極め、特に科学的な知見に基づいた風力発電と公衆衛生に係る議論を促すために、独立した専門家による研究班を招集した。研究班による評価と報告の目的は、風力発電による騒音、超低周波音、振動、シャドーフリッカーが健康に影響を及ぼすかも知れないという市民の懸念に度々対応するマサチューセッツ州環境保護省や同州公衆衛生省、さらには地方自治体に対し、これらの懸念を調査し有益な情報を提供するような科学的な検討結果を示すことであり、その成果として本報告書が取りまとめられた。」のだが、資料が多く、まとめも長い(と、日本文に書いてあるわけではないが、原文を見てみると)、報告書では「風力発電による騒音と振動の生成について」、「騒音と振動に伴う健康影響について」がまとめられているのだが、それも何とも整理されていない。とは言え、それは必ずしも日本文だけではなく、そもそもの原文が、多くを盛り込んであり、ポイントが絞りにくいのは確かである。

@風力発電に対する人の反応に関する疫学的研究の論文は自己申告によるアノイアンスに関するものがほとんどであり、この反応には音だけでなく、風力発電の見え方や風力発電事業に対する態度などが複雑に絡んでいるようである。 ・風力発電(騒音)への暴露とアノイアンスの関連を示す疫学的証拠は限定されている。
・風力発電の視覚的な影響を切り離して風力発電からの騒音とアノイアンス(あるいはその逆)の関係の有無を決定できる疫学的証拠は十分ではない。
・風力発電からの騒音と睡眠中断との関係を示す疫学的研究に基づく証拠はないとは言えない。すなわち、風力発電によっては睡眠中断を引き起こすことはあると言える
A非常に音が大きい風力発電は感受性が高い住民に対してある距離では睡眠中断を起こす可能性はあるが、静かな風力発電では同じ距離で浅い睡眠中でもそれを中断させるようなことはありそうにない。しかし、風力発電による騒音が睡眠中断を起こす特定の音圧の閾値を示す十分な証拠はない
B風力発電によるアノイアンスが睡眠問題あるいはストレスの原因となるかどうかについては、まだ十分に定量化されていない風力発電によるものかどうかは別として、睡眠中断が気分や認識機能、ひいては全体的な健康や幸福感に悪影響を及ぼすことは明らかである
C風力発電からの騒音が健康問題や病気を直接的に(すなわち、アノイアンスや睡眠による影響とは別に)引き起こすかどうかについては、十分な証拠はない(波線部は、原文中で斜体で記述されている)。 これは何度も言っているように「音波(音響)兵器」でもない限り「直接的に引き起こす」ことはなかろう。風力発電がもしそうであれば言うまでもなく兵器になってしまうことくらい解りそうなモノだが。
原発は最初からその可能性がと言うより最初は兵器ではなかったのか。
D風力発電から発生する超低周波音が前庭器官に直接影響を与えるという主張は科学的には明白にされてはいない。風力発電に近い場所における超低周波音のレベルでは前庭器官に影響を与えることはあり得ないという証拠はある。 最新のアップウィンド型の風力発電設備から68 m 離れた点で測定された超低周波音のレベルは、非聴覚的な感覚(体で部分的に感じる振動感、胸部の圧迫など)が生じるレベルよりも十分に低い。
・超低周波音が構造物に伝わるとすれば、その構造物の内部にいる人々は振動を感じることになる。別の問題では、このような構造的な振動が不安感や一般的なアノイアンスの感覚を引き起こすことが示されている。しかし、最新のアップウィンド型の風車について測定によってそのような現象が起こる証拠は何ら示されていない。
・風力発電設備や風力発電所の近傍の地面上における振動測定の結果からみて、振動が構造物に影響することはあり得ない。

・超低周波音と前庭器官とのカップリングのメカニズム(内耳の外有毛細胞(OHC)を介して)の可能性が提案されているが、まだ完全には理解されておらず、また十分な説明もされていない。風力発電近傍における超低周波音のレベルは、十分OHC で感じうる大きさであることは示されている。しかし、風力発電によって発生する超低周波音が前庭を介して脳に影響するという証拠はない。
・ネズミを用いた実験的研究で、周波数16 Hz で130 dB の強さの音に短時間暴露させたところ、心臓と脳の細胞の一時的(short-lived)な生化学的変化が認められたという限定的な証拠が示されている。このようなレベルは、最新の風力発電で測定される超低周波音のレベルを35 dB 以上も上回っている。
ここにおいてもそうだが、風力発電について否定的な話に於いては「証拠はない」として退ける。そして、現役で現在問題を起こしている風車の問題については格別に否定的な証拠を示すことはなく、あたかもそうしたモノは無いかの如く、「最新の風力発電」について取り上げる。
これは、「当時の証拠関係では間違いではなかった」よりもっと悪く、「犯人は当時の風車であるに拘わらず、今の風車は犯人ではない」というような犯人すり替え論法でお話にならない事が解らないのだからお話にならない。詰まりは、「今後の再捜査は困難」と言う見通しなのだろうか。この段は「東電OL殺人事件」での「冤罪」を認めない検察の論理を借りてみた。
E「風力発電症候群」として特徴づけられるような風力発電からの騒音に暴露されることによって生じる一連の健康影響に関しては、全く証拠はない。 「風力発電症候群」に関しては他の報告では「単なる症例研究である」程度にしているが、ここでは「全く証拠はない」と手厳しい。即ち、「風力発電症候群」苦情者は詐病か単なるクレーマーと言うことである
F最も有力な疫学的研究では、風力発電からの騒音と心理的なストレスあるいは精神面の健康問題の間に関連性を認めていない。それより規模が小さく説得力が弱い二つの研究があるが、一方は両者の関係に言及しており、他方では言及していない。したがって、これらの研究における根拠の重さから考えて、風力発電からの騒音と心理的苦悩あるいは精神面の健康問題の関連性はないと結論づける。 多数決で決まるような話ではないと思うが。
G検討した疫学的根拠の中で、風力発電からの騒音と苦痛と肩こり、糖尿病、高血圧、耳鳴り、聴力障害、心臓血管系疾患、頭痛/偏頭痛との関連性を示すものは全くなかった。と報告書は述べている。 「風力発電からの騒音と苦痛と肩こり、糖尿病、高血圧、耳鳴り、聴力障害、心臓血管系疾患、頭痛/偏頭痛との関連性」は被害現場を調査すれば相当の有為の確率で有ると思われるが、そうした事は大規模に為された訳ではないから「全くない」のであろう。
騒音限度値は、それを測定あるいは計算する場合の時間の長さによって変わる。
研究班は、新たな風力発電を設置する際の州全体の政策の一部として騒音限度値を含めることを推奨する。

7 風車騒音Wind Turbine Noise

 これまでのモノはネット上でも見られるレポートのようなモノであるが、これのみは$94.50(7000円くらい)と言う値段からすると相当大部であろう書物である。そのホンの一部を訳出してある。そして、基本的には。「ここでは、騒音規制についての評価を行うことより、むしろ異なる規制的な取り組みの概要や事例を示すことである。規制は時とともに変化するので、読者に関連当局に現行の規格を確認することを薦めている。」とか、「関連する評価方法が異なるので、別の区域での基準を直接比較することは適切ではない。」であり、これは新たに風車を造る際の地域での住民との質疑で”如何に合法的である”とかの”逃げ方”と言ってはいけなければ、”住民の理解を頂く”方法論にむしろ詳しいのかも知れない。

 この頁についてもまだまだ校閲を要するがひとまずアップする。


 とここまで見てきて「風車騒音に係る最新知見」には欧州のモノがトンと無いではないか。風力発電先進国である、欧州のドイツ、デンマーク、スペイン、…のものが全くないのはどう言ったことであろう。本当にないのか、それとも日本騒音制御工学会の探しようが悪いのか、或いは意図的に”割愛”したのかと思わないでもない。
 と思って検索していたら、ころっと見落としていていたのか、National Wind Watch(国際風力発電監視委員会)の欧風阪とも言えるEPAW(The European Platform Against Windfarms 大型風力発電施設に反対する全ヨーロッパ機構)……ヨーロッパ20カ国、376団体(09年12月現在)が参加している、ウィンドファーム(大型風力発電施設)事業の無意味さと破壊性を告発する組織が”Country folks! Demand that infrasounds be monitored!”(諸国民の友よ!超低周波音の監視を要求せよ”)なんてページがあり、そこの「風力発電機から発生する騒音のアセスメントを実施して下さい」の日本訳が上記の鶴田さんが訳していました。こうしたページはスルーしてしまうところが、日本騒音制御工学会、しいては環境省が風車問題を真摯に採り上げようとしていない事の証左でしょう。勿論このサイトには”査読”は付いていないでしょうから当然のことでしょうが。(13/12/02)



 それにしてもこのところの殺人を厭わない凶悪犯罪の多発と「ゴメン」を決して言わない冤罪を厭わない司法の横暴は良い勝負だ。尼崎事件において角田美代子被告(64)が創り出していた”閉鎖的環境設定で絶対的に支配する状況”と言うのは警察や検察が取り調べにおいて創り出している状況とその客観的構造は良く似ていると言うより同じではないかと思うのだが。
 そして、ここに来て”権力”と”業務”を勘違いと言うより完全に誤解してしまっている人間の典型としての真紀子の迷走が終わった。彼女は官僚が勝手に何でも支配すると思っているようだが、我々から見れば文句なしに彼らは同じ穴のムジナだ。ゴジラに荒らしまくられた3大学は早々に立て直しを図らねばならない。だが真紀子狂乱と文科省の奴隷的態度には裏があったようで、いやー、昨今の現実の舞台は小説も太刀打ちできない見ものだ。とこのところ全然本を読まなくなった自分を正当化しているのだが。


 真紀子狂乱で被害にあった三大学の一つ岡崎女子短期大学の地元紙でもある中日新聞はネット上には美味しい記事を出さないのは勿論だが、今時浅くでもそれらしい美味しいところをネットにも出さないと取材能力が劣ると思われることを知らない田舎新聞と思われると言うことを知らないかの如く、本誌でも本家本元の地元であるにも係わらず取材が大いに甘く、遅く、大いに失望していたのだが、今日(12/11/20)の社説小沢代表無罪検察の“闇”を調べよ中日春秋(「政府の立場は「冤罪を厳密に定義していないので、事件が冤罪かどうか言えない」)には大いに頷いた。「冤罪を厭わない司法」などと何とも認識の甘いことを言っていたのだろう。彼らには冤罪と言う認識がないのだから冤罪に墜としいれたと言う認識がないのであるから、どこを割っても彼らから「ゴメン」という言葉など出てきようがない。これでは「ゴメンで済めばケイサツは要らない」と言う言葉の本来の意味は「警察にゴメンと言ってもダメ」と言うことなのだろう。そう言ったことを思うようになると、どうも最近「相棒」で杉下右京の”異常な正義感”に全く同感できなくなっている自分が、作者の本来の意図だとすれば、いやこのドラマは凄い。

121107

最後まで読んでくれて有難う

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