11:00ごろ  破水しているため、抗生剤を一つ飲む。寝ているよりも座っていた方がよさそうな気がして、布団の上に座ってときどき来る痛みに耐える。
 徐々に痛みが強くなってくる気がするものの、まだまだ・・・という感じ。
たぶんお昼はすぎるだろうと思ったので、とうちゃんに
「今のうちにお昼ご飯買ってきたら?」と言う。
 
 そして、一人になった。(助産師さんはたまに見にきてくれる。)
そうしたら、それを待ってたかのように、痛みが強くなってきた。
5分おきだったのが3分おきになっている。
痛みがおさまったと思ったら、すぐに次の痛みがくるといった感じ。

 助産師さんがピアノのイスを持ってきてくれる。くるくるまわる丸いのじゃなくて、四角いのね。
ピアノがあるわけではないが、ピアノのイスがある。
ここでは、ピアノのイスもお産のアイテムの一つなのだ。
それに寄りかかってお産する人もいる。

 そのスタイルで産む気はなかったけど、言われるままピアノのイスの座るところに頭をおき、正座を崩した形で寄りかかってみる。
 なんだかだんだんおしりに力が入っちゃいそうな感じになってきたんで、右足のかかとでおしりをおさえてがまんする。

 「そろそろちょこっとずつ、お産の用意をしましょうかね」と言って助産師さんが部屋をあとにする。
 
12:00ごろ  とうちゃんと子どもたちが帰ってくる。
お義姉さんも一緒だった。
家族以外の人にこの苦しんでる姿を見せるのは恥ずかしかったけど、痛みがきつくてあいさつすることも顔もまともにみられないほどになってきた。
「ただいま〜」と元気に部屋に入ってきたタクも苦しんでる姿にちょっとびっくりしたようで
「あ〜、そのかっこうがいいのか・・・」
なんて小さい声で言っていた。
 
 小さな一つの空間で、一人はひーひー言って陣痛に耐えてて、一方はお昼ご飯を食べているというのは、かなり変な光景だ。
もちろんわたしにもお昼ご飯が運ばれてきたけど、食べられるわけがない。
 とうちゃんは、立ったままご飯を食べてて、陣痛が来てわたしが呼ぶと腰をさすりに来る。
そして、「もういい」というと、またご飯を食べる。
とうちゃんは、3回目にして、腰のさすり方がとても上手になった。
強さ加減と位置がばっちりだ。
 それを見ていたハッチも
「ボクモ オシテ アゲル」(←いまだにしゃべり方が機械仕掛けのよう)
と背中を押してくれたのはうれしかった。

 お義姉さんがもってきてくれたCDデッキで音楽をかけてくれた。
選曲はディズニーだ。
多分子どもたちにあわせてということだと思うけど、この激しい痛みとディズニーの陽気な音楽のギャップはかなり大きい。
「なんで今、この音楽なんだろう〜〜」
と苦しみながら聞いた「魅惑のチキルーム」はずっと忘れないと思う・・・。

 息を吐くというか、「ひー!」とか「うー!」とか叫んでいる感じ・・・。
「隣の部屋に声がきこえないのかな」
と心配していたが、やっぱりいざとなるとそんなことはどうでもよくなる。

 手がしびれてくる。「手がびりびりだよ〜」というと、
助産師さんが
「え!びりびりする?そんなに一生懸命息をすわなくていいよ。なんなら、ビニール袋する?」
と言ったので、自分が過呼吸の状態になってることがわかった。

12:20  「一度診察してみる?」と言われ、布団に移動。
そしたらほぼ全開とのこと。
いつのまにか先生も登場。
そして、カメラで苦しんでいるところを撮影。
笑顔を作ることはもちろん、「先生それは勘弁してください」という余裕もなし。

 タクも前から張り切っていたとおり、ビデオ係として、活動開始。
ハッチはその周りをうろうろしていたようだ。

 「どういう体勢にする?」
と聞かれるが、どうなっても痛いものは痛いし、「こういう体勢で産みたい」という強い希望ももってなかったので
、「わかりませ〜〜〜ん」
と言ったら、
「横向いてみようか」
と言われる。

 どんな体勢で産むのかというのは、あかね医院でこれから出産しようとしている人にとって一番の関心事だと思う。
特に上の子を一般的な分娩台で産んだ経産婦にとっては、「好きな体勢で」といわれてもイメージがわかない。
 私の場合はこう。とうちゃんが枕もとにいて、あぐらの上に頭をのせ、壁に向かって横に寝る。右足は壁をけり、左足は助産師さんのお腹を蹴る感じ。その左足の膝を自分の左手でもち、右手はとうちゃんの手。
そんな感じですわ。
 だけど、四つん這いの人が一番多いらしい。

 「はい、いきんで〜」とか言われないので、
「いきんでいいんですか?」と聞くと、
「いきみたかったらいきんでいいよ」といわれる。
あぁ、このアバウト加減があかね医院らしい。
産む人と産まれてくる子の意思と力を信じて・・・という感じかしら。

 ここまでくれば、もうこっちのもの(?)思い切りがんばればいいだけだもの。
だけど、いざというときにこれだ!という陣痛がこない。

 「これだ!」を待っていると、せまいところで、はさまっているたまこは大丈夫なのか心配になってくる。
2,3回いきんでコツを思い出した。
ちょっと背中を丸めてお臍を見る感じ、あかちゃんがでてくるところをイメージすること。
そうしたら、「髪の毛が見えてきたよ!」って。
よし!たまこがでてくるぞ!
 それからまた2,3回。「出てきた〜〜」とタク!ずるずる〜っぷるんっとでてくる感じがわかる。

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