荊妻のコルサは平成7年2月の登録。中古車として購入したので車検は平成18年5月まで、走行距離は7万km余りだった。
コルサは前後が中破したものの、前後の三菱の軽自動車は殆ど無傷だったのに驚く。自動車ボデーの設計者は、如何にして車室の変形を防いで乗員を保護するのかに最大の努力を払っている。そのための最大の武器は40年前くらいから実用化が始まった有限要素法である。そのために一流の大手自動車各社は、世界最大級のスーパーコンピュータを駆使しての構造解析に鎬を削っている。
トヨタ車はその結果として、衝突時の運動のエネルギーを車体の弾塑性変形で吸収するように進化してきた。つまり車室の周辺は潰れ易いのだ。研究開発費が乏しいのか、技術の蓄積が不足しているのか、三菱車の前時代的な設計技術が図らずも、我が目前で暴露されてしまった。
電話で荊妻に呼び出された私は10分後、二輪車で急行した警察署員達よりも現場に早く到着した。加害者に
『この事故は貴女に100%の責任があると判断しますが、同意しますか?』
『勿論、同意します』
『私は車の修理代金を支払っていただければ十分です。但し、荊妻は昨年夏ペースメーカーの埋め込み手術をした結果、身体障害者1級になりました。事故による体への影響は解りませんから病院で検査を受け、経過観察の結果として、人身事故の手続きはいたします。異議はありませんか?』
『異議はありません。修理代など全ての費用は保険で支払います』
『貴女の希望される修理工場がありますか?』
『ありません』
『それでは、此処から100m地点にある、私の行きつけで且つ豊田市では一番大きい車の整備業者、しかもトヨタ自動車の協力工場でもある新明工業の広久手工場で修理をします』
『私の車の後についてきてください』 |