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随想
           
台風(平成16年9月8日脱稿)

   今年は台風の発生数が例年に比べ大変多いだけではなく、大型も多い。我が愛しの家庭菜園は何度も壊滅的な打撃を受けた。

      昭和20年代には台風が襲来するたびに、犠牲者が数百人から数千人に達することも珍しくはなかったが、最近は、犠牲者がかつての百分の一にまでも激減した。我が国の防災対策がここまで完備したことを喜びたい。

 
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はじめに

  台風は通常、赤道に近い太平洋上で発生している。最大風速が毎秒17.2mを越えた熱帯低気圧(昔は熱帯性低気圧と言った)を台風と定義しているが、17.2mといった中途半端な数値に何故決めたのか、インターネットで手抜きをしながらの検索では解らなかった。

   台風の気象情報を聞いていたら、上陸したとの表現は九州など4島の場合に使い、沖縄などの島に到達した場合には通過したなどと表現するようだが、これまた何故か理由が解らない。

   とはいえ、これほどの数の台風に出会うと、暇潰しに台風の特徴とは何か、我が貧弱な頭で考えてみた。賢人各位からのご批判をいただけるのが楽しみである。
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台風の総エネルギーの推定
 
  1個の標準的な台風が持つ総エネルギーがどのくらいあるのか、インターネットで検索しても、孫引き情報ばかりで、計算根拠が示されておらず、信頼性に乏しい。そこで、自分で考えることにした。

   台風のエネルギーの源は太平洋で蒸発した水蒸気の潜熱である。水蒸気が上昇して冷却されると潜熱を放出して水滴に変わる。このときに放出された熱エネルギーによって大気が加熱されて膨張し、風が発生する。従って、台風の持つ総エネルギーの推定とは、水蒸気の総量の推定問題に置き換えられる。

@ 飽和水蒸気量からの推定

   台風の広がりの大きさを100万平方Km、高さを10Km、温度も気圧も一様ではないが、1気圧、10℃、湿度100%の空気で満たされていると仮定すると、飽和水蒸気量は1立方メートル当り9.4gなので、総水蒸気量は940億トンになる。

   台風の中では水蒸気の発生と降雨が同時に起きているから、台風の一生で発生した水蒸気量はもっと多くなるのは当然だが、計算方法を思いつかないので割愛。

A 降雨量からの推定

   台風通過地点の降雨量はこれもまたバラツキが大きい。100〜1000mm位のばらつきは常時のことだ。降雨量は定点の累積量だが、台風自体の直下の降雨量は台風の一生涯に亘るので、降雨時間は定点よりも長い。

   平均的な累積降雨量を100mmと仮定すると、100万平方Kmの広がりを持つ台風の総降雨量は1000億トンになる。

   琵琶湖の総水量は275億トンと推定されているので、台風1個はその数倍と言うことになる。

B 太陽定数からの推定

   理科年表に寄れば太陽定数は1.37Kw/平方メートル。日射時間を半日の12時間、平均入射角度を45度と仮定すると、これらから概算される1平方メートル当たりの日射エネルギーは(1.37*12*860Kcal*sin45°=9997Kcal)原油1リットルに相当する。
   
   しかし、太陽エネルギーは雲で反射されたり、海水の加熱などにも消費されるので、蒸発に消費されるエネルギーは50%と仮定し、台風の発生海域の平均面積を台風の大きさと同じ100万平方Kmとすれば、原油換算の総エネルギーは、5億トン/日となる。

C 台風の総エネルギー

   水の蒸発熱は1g当り概算539cal。原油の発熱量は1g当り概算10000cal。おおざっぱに言えば、水蒸気20gと原油1gには同じ熱量が含まれていることになる。

   以上に示した我田引水の計算法から、大雑把に言えば、台風1個の総エネルギーは原油50億トンに匹敵する。この量は、全人類が1年間に消費するエネルギー(最近の推定では原油換算で90億トン)の半分にも達するのだ!

   また、台風の発生海域の面積へ投入される太陽エネルギーから計算すると、10日に1個もの頻度で台風が発生したとしても不思議ではない。台風の発生海域の表面積が2倍と見積もれれば、年間発生数は数十個となる。
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台風は人為的に潰せるか?

@ 原爆とのエネルギー対比

   広島投下型の原爆の発生エネルギーはTNT火薬に換算すると20000トンと俗に言われている。火薬は原油と異なり成分の中に酸素を含んでいるので、重量当りの反応熱(発熱量)は意外と少ない。原油の半分と仮定すれば、広島投下型の原爆の総エネルギーは原油1万トンに過ぎない。

   前記の計算が正しいと見なせれば、台風1個の総エネルギーは、何と原爆50万個分にも相当するのだ!

   人類が開発した最大級の水爆はTNT換算100メガトンといわれているから、原油換算5000万トンになる。これとても台風の百分の一に過ぎない。

A 台風は原爆で消せるか?

   世間ではしばしば、台風を原爆で吹き飛ばせないかとの問題提起をし、最初に台風とのエネルギー比率を持ち出し、最後に原爆では力が足りないとの結論を誘導する、といった馬鹿話がしばしば現われるが、笑止千万である。
   
   たとい、全く無害で且つは台風よりも大きなエネルギーを発生させる核融合爆弾を開発して投下しても、台風を消滅させる事は不可能である。それは何故か?
   
   火事を消すのに水を掛けるのは、燃焼物を燃焼可能温度以下に冷やすためである。台風は熱エネルギーの塊である。従って台風を消滅させるためには熱エネルギーの吸収手段が必要である。台風の中に、巨大爆弾を投入するのは、熱エネルギーを供給することに他ならない。火に油を注ぐとは、正しくこのことだ!
   
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おわりに

   長文をメールに添付すると文字化け騒動が発生するだけではなく、読むのも大変だとの声もしばしば拝受しています。

   今回程度だと、然したる問題は発生しないと予想しています。賢人各位からの反論などを心待ちにしています。      
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