1個の標準的な台風が持つ総エネルギーがどのくらいあるのか、インターネットで検索しても、孫引き情報ばかりで、計算根拠が示されておらず、信頼性に乏しい。そこで、自分で考えることにした。
台風のエネルギーの源は太平洋で蒸発した水蒸気の潜熱である。水蒸気が上昇して冷却されると潜熱を放出して水滴に変わる。このときに放出された熱エネルギーによって大気が加熱されて膨張し、風が発生する。従って、台風の持つ総エネルギーの推定とは、水蒸気の総量の推定問題に置き換えられる。
@ 飽和水蒸気量からの推定
台風の広がりの大きさを100万平方Km、高さを10Km、温度も気圧も一様ではないが、1気圧、10℃、湿度100%の空気で満たされていると仮定すると、飽和水蒸気量は1立方メートル当り9.4gなので、総水蒸気量は940億トンになる。
台風の中では水蒸気の発生と降雨が同時に起きているから、台風の一生で発生した水蒸気量はもっと多くなるのは当然だが、計算方法を思いつかないので割愛。
A 降雨量からの推定
台風通過地点の降雨量はこれもまたバラツキが大きい。100〜1000mm位のばらつきは常時のことだ。降雨量は定点の累積量だが、台風自体の直下の降雨量は台風の一生涯に亘るので、降雨時間は定点よりも長い。
平均的な累積降雨量を100mmと仮定すると、100万平方Kmの広がりを持つ台風の総降雨量は1000億トンになる。
琵琶湖の総水量は275億トンと推定されているので、台風1個はその数倍と言うことになる。
B 太陽定数からの推定
理科年表に寄れば太陽定数は1.37Kw/平方メートル。日射時間を半日の12時間、平均入射角度を45度と仮定すると、これらから概算される1平方メートル当たりの日射エネルギーは(1.37*12*860Kcal*sin45°=9997Kcal)原油1リットルに相当する。
しかし、太陽エネルギーは雲で反射されたり、海水の加熱などにも消費されるので、蒸発に消費されるエネルギーは50%と仮定し、台風の発生海域の平均面積を台風の大きさと同じ100万平方Kmとすれば、原油換算の総エネルギーは、5億トン/日となる。
C 台風の総エネルギー
水の蒸発熱は1g当り概算539cal。原油の発熱量は1g当り概算10000cal。おおざっぱに言えば、水蒸気20gと原油1gには同じ熱量が含まれていることになる。
以上に示した我田引水の計算法から、大雑把に言えば、台風1個の総エネルギーは原油50億トンに匹敵する。この量は、全人類が1年間に消費するエネルギー(最近の推定では原油換算で90億トン)の半分にも達するのだ!
また、台風の発生海域の面積へ投入される太陽エネルギーから計算すると、10日に1個もの頻度で台風が発生したとしても不思議ではない。台風の発生海域の表面積が2倍と見積もれれば、年間発生数は数十個となる。
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