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随想 |
漏電火災事故(平成19年6月4日脱稿) |
単に生きているだけでも、人生では意図せざる現象に遭遇するようだ。
去る平成19年4月10日〜27日までのバルカン六ヶ国旅行から帰宅した時刻の30分前に、我が居間で漏電事故が発生した。
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近くのマンションに住んでいる我が長男の長男(当時1歳5ヶ月)の趣味は電気掃除機による掃除。
勤務医である嫁が当直(夜勤)の夜は嫁の実家と我が家が交互に孫の育児を支援させられている。言葉が未だ発せられない孫は来宅するや否や、掃除機の電源コードをコンセントに挿入するようにと、周りの大人に2ヶ月前から指で指示するようになった。
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火災発生 |
孫を預けに来宅した嫁がコードをコンセントに挿入後、ホース(箒部)に取り付けられているリモコンのスイッチを入れた瞬間、コンセント周りから黒煙がモクモクと発生すると同時に火炎も発生。驚いて電源コードを引っ張り抜いたらコード先端の差込金具の二本のうち、一本が根元で溶断されてコンセントに溶着。火は自然に直ぐに鎮火。
金属片が溶着したコンセントは使えなくなり、コードが破損した掃除機もそのままでは使えない状態になったが、焼損したコンセントに繋がっている小ブレーカも、80Aの電源のメインブレーカも何れも落ちなかった。大電流が流れてもブレーカが落ちるまでには若干のタイムラグがあるようだ。
一昔前の私だったら、元エンジニアの端くれとしてホームセンターに出かけて所用の部品を購入してコンセントは取替え、掃除機のコードの先端はペンチで切断後に新部品を取り付ける努力をして一件落着にしていた筈だ。
しかし、ここ数年、各種保険(生命・自動車・がん・医療・・・)の不払い問題がマスコミを賑わすたびに、保険会社が苦慮しているらしいとの報道をふと思い出した。
『火災保険会社が想定している火災の定義とは何か、火災と非火災とを区別する原理とは何か』を今までまともに考えたことはなかったが、『細々と生きている年金生活者』の最大の資産は『時間』。『ダメモト』覚悟で暇つぶしも兼ねて火災保険会社の意見を、日頃の態度とは正反対に謙虚に聞くことにした。
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私は1974年12月7日の新築移転前日から、下記の保険会社2社と火災保険の自動継続契約を交わしていた。
[1] 三井住友海上火災保険株式会社
同社との建物(2,000万円、保険料9,400円/年)および家財(500万円、保険料3,150円/年)の保険料は銀行口座からの自動引き落としにしていたので、幸い支払い忘れはなかった。電話で上記の現象に関する伝聞情報と証券番号とを報告した。
『この件は保険の対象に該当するのでしょうか』
『一度、現物を見に伺います』
私の都合に合わせて名古屋市から担当者が来宅した。
『今回の事故は保険の対象になるのでしょうか。尚、掃除機の本体が正常に作動するか否かは電源コードが使えないため確認はしていません』
『炎が発生しましたか』
『私は目撃者ではありません。炎が一瞬ですが発生したと、長男の嫁から聞いています』
『炎が発生していたのならば火事です。その場合は漏電火災扱いになります』
『私は三井住友とは別に、全労災とも建物と家財の火災保険契約を交わしています』と言って、共済契約証書を見せた。
『全労災とは独立に支払うことになっています』と即答。
『家の設計図がありますか』。変色した設計図を見せたら間取りを手書きで写した。更に、コンセントや掃除機の写真を撮った。
『コンセントには異常がなく、掃除機のモータが焼損した場合は火災扱いにはなりません。その場合の電気製品の修理代金はお客様とメーカの負担になります。しかし、今回の場合は建物の一部であるコンセントから火炎が発生しているので火災保険の対象になります』
『この掃除機はいくらで買われましたか』
『昔のことなので忘れました。型式から調べることは出来ますが面倒です。最近流行している高価なサイクロン方式ではなく、2万円くらいだったと思います』
『古くなったとはいえ今まで支障なく使えていたわけですから保険金としては半額の1万円、そのほかに保険金の30%を臨時費用として支払います』と即答。更に
『コンセントは建物と一体になっていますから建物の保険の対象になります。最近は電気工事店の工事費も高くなりましたから、今回は掃除機と同額の13,000円を支払います』と、これまた即答。
三井住友の担当者が上記の同意事項を即座に書面に書き込み、私が署名したら手続きは完了。この間、僅かに20分。数日後には保険金が指定口座に振り込まれて一件落着。
[2] 全労災(全国労働者共済生活協同組合連合会)
全労災も名古屋市から担当者が来宅して、間取り図の作成や写真撮影をした。
『私は三井住友海上火災とも火災保険を契約しています』と言って、契約書を見せた。
『損害額が20万円を超えた場合は、保険会社と按分(あんぶん)の相談をしますが、今回の場合は小額ですから、夫々の支払いは独立に実施することになっています。但し、全労災の場合は第三者による確認後の署名が必要です。書類を一式お渡ししますから記入後、後日郵送して下さい』
『私ですら目撃はしていません。この件で第三者の目撃者を探せる筈がありません』
『これは形式的な書類です。署名者に確認のための電話をすることは有りません。通常、マンションの場合は管理人、戸建ちの場合は組長とか隣人の方にご署名していただいています』
『今回の場合は幾らくらいの保険金が下りるのですか。三井住友は26,000円でしたが』
『即答は出来ませんが2〜3万円と思います。掃除機の型式は分かっていますし、帰社後に社内規定に基づき計算します。結果は後日連絡します。余計な事ですが、石松様の場合は居住者が二人とは言え、住宅と家財が夫々たったの100万円(保険料は合計年間800円)では少なすぎると思いますが・・・』
『両社は二重に支払う契約と聞いていたため、火災保険の主力は三井住友と契約し、全労災とは今回のようなぼやを想定して契約しました。数年前に落雷でパソコンのモデムが焼損した時にも保険金が両社から下りました。その後、落雷対策のための高電圧の遮断器具を取り付けたため落雷事故の再発はありませんが』
全労災とも約20分で相談は完了。
早速、隣人の肉屋(名古屋市内のスーパーに5店、上海に2店テナントとして出店。外車を乗り回している実業家。時々、米沢牛のヒレ肉{ステーキ用では最も価格の高い部位の肉}とF1交雑種(ホルスタインの牝と和牛の雄との一代雑種)のカルビ{肋骨の間の肉。焼肉用}を、今は潰れた豊田そごうのテナント時代から2割引で一度に数Kg纏め買いしては冷凍保存していた)に相談したら、気楽に署名してくれた。
後日、全労協から住宅共済金28,000円、家財共済金8,000円、臨時費用共済金5,400円、合計4,1400円が振り込まれた。
全労災との契約開始は1974年。爾来自動継続。振り込んだ累積保険料よりも多くの保険金が下りた。それにしても保険料が三井住友よりも少ない全労災の方が、同じ火災に対して保険金が6割も多いのは不思議だ。民間保険会社が結果としては大儲けをしている何よりの証拠に思えてならない。 |
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漏電の原因は現物を幾ら観察しても私には解明できなかった。コンセントの中に綿埃が蓄積し、たまたまショートしたのではないか。ショートの瞬間に綿埃は燃焼しつくして消滅ししただけではなかったと推定したが・・・。
コンセントを取り替えたり、掃除機のコードを修理したりするのは簡単な作業とは分かっていたが、保険金が下りたにも拘らず自前で実施して現金を節約するのは些か気乗りしなかった。
近くの大手家電量販店『エイデン』に出かけて、東芝とエイデンの共同開発のサイクロン型掃除機(特売価格21,600円)を我が指値の18,000円で購入した。『指値で売らないのならば類似品を通販で買う』と言ったら、商談は瞬時に成立。
コンセントの取替えは、日曜大工的な仕事をいつも頼んでいたシルバーセンターの75歳のお爺さんにお願いした。
序にタコ足配線をしていたパソコン周りと50インチのフルハイビジョンプラズマテレビ周りにも三口コンセントを各一個ずつ取り付けてもらったら、材料代と工賃で6,000円だった。パソコン周りで合計9口、テレビ周りで5口のコンセントになったがフル活用。
それにしてもパソコン周り(印刷機とかディスプレイとかモデムとか・・・)やテレビ周り(DVD&VIDEOプレイヤーとかケーブルテレビ会社のホームターミナルとかカラオケマイクとか・・・)には、いつの間にか予想外に関連付属機器が増えるのが不思議だ。
それでも、文字通りの『焼け太り』になった、のではないかとの良心の呵責が若干だが残った。
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今回の漏電火災に関する保険会社の対応は伏せたままにして友人達に『火災保険が下りると思うか』と質問したら『下りないのではないか』と殆どが予想した。
一昔前だったら、保険会社は何かと奇妙な理由をつけて保険金を下ろさなかった、のではないかと思えてならない。近年の保険金未払い問題がかくも簡単な処置の援軍だった、のではないかと推定している。
私は末っ子が社会人になり親としての義務を完了した時点(平成10年4月1日)を契機に、それまでの掛け捨て型生命保険契約(死亡時3,000万円+傷病など)は解約し、自動車任意保険・火災保険・ホールインワン保険(50万円の保険、保険料は2,500円/年)のみを残した。
ホールインワンの可能性は我が腕では全くないが、ゴルフでは予期せぬ加害者(ボールが他のプレイヤーを直撃するなど)になることを怖れて加入している。しかし、この保険でも役立ったことがあった。ホンマ製パーシモン(柿)のヘッドがプレイ中に真っ二つに割れた(疲労破壊だったので寿命だったのだが・・・)とき、新品の購入代金を支払ってくれた。
一方、海外旅行保険は日割りにすると意外と高いので加入したことがない。ある旅行社は申込書に同封された海外旅行保険に加入しなければ団体旅行の参加を受け付けないと言ってきたが、JCBのゴールドカード(年会費1万円)の約款(死亡時5,000万円+傷病等)を送付したら即座に受け付け、約款を返送してくれた。ゴールドカードに付けられている旅行保険の方が補償範囲も広いから当然のことだが・・・。
保険とは『1人は皆のため、皆は1人のため』に存在すると聞いたことがあるが、我が短い人生でもほどほどには役立ってはいるようだ。賢人各位のご体験は?
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漏電事故の随想読みました。
こう言うことは起こるのですね!以前コンセントからの発火実験をテレビで放送していましたが、その時のケースはコンセントに埃がたまって、若干水気を含んでいる時発火したようでした。
我が家もそろそろ20年になるので、カバーを外してコンセントのチェックをせんといかんかな・・・と思いました。それにしても保険金は結構下りるのですね!参考になりました。
以前住んでいた家で、日立の冷蔵庫で床が焦げてしまって、部品を取り替えて貰ったことが有りました。そのケースは冷蔵庫のモータ不良でしたが、考えて見るに床の焦げた弁償は為されずじまいでした。(もちろん、床がこげたまま売ってしまいましたが)今だったら一言メーカーに言っていたかも。
いずれにしても、意外と身近な所に危険が潜んでいるのを感じました。
@ トヨタ&大学後輩・経
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「漏電火災事故」を拝見しました。
それにしても、1歳5ヶ月のお孫さんが電気掃除機の操作とは驚きました。たしかに、あのパワフルなモータ音と、“アラジンのランプ”よろしく全てのものを吸い込んでしまいそうな魔法の吸い口は魅力的です。
何はともあれ、火災がコンセント部で納まり、大事に至らずよかったですね。鉄筋コンクリート作りの石松邸では燃え上がるはずもありませんが...。
その程度で火災保険が出るとは思いませんでした。多分、保険会社と全労災の担当者は、即座に電話を貰った主の氏名をネット検索したに違いありません。「この“有名人”には最大限の保証内容を即答するよう」支店長命が出たものと思われます。
コンセント部分の修理ばかりか、掃除機は最新式のものとなった『焼け太り』振りは結構でした。しかし、保険会社の太り様は石松さんの比ではなさそうです。
D生命にいた高校時代からの友人によれば、生命保険会社が上げた利益は預かった保険金の運用益によるものは殆ど無く、常に会社が設定した平均寿命よりも日本人の寿命が延びてきたことによるものだそうです。火災保険の利益も、火災発生率の見積りよりも加入者の努力で火災が起きていないのが最大の原因でしょう。
A トヨタ先輩・工
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久しぶりに気分もよく貴方様のホームページに訪問しました。大変なことが色々起こるものですね。身近な問題に感心しております。
過去と違って企業も大きく変わったように思います。コンプライアンスをはじめとした良き社会人としての規範が、日本にも定着しかけたのかと思います。善良な市民が助かることは良いことと思いますが、世の中は良い人のみとは言い難いのも現実です。このあたりが難しいことと思います。
それでは又、お会いしましょう。
B ゴルフ仲間(ハンディ・10)・関連会社の業務監査で全国を飛び回っている方
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『漏電火災事故』顛末 興味深く拝見いたしました。
きっと現役のときであれば、保険のことまで気が回らなかったり問い合わせの時間がなかったりで、つい自分で対処されていたでしょうね。年金生活者の資産である『時間』を有効利用されてお見事です。
拙宅でも昨年の夏、読みかけの本と虫眼鏡を机の上においたまま外出して3時間後に帰ってみると、真夏の太陽光と虫眼鏡が作用して燻ぶっており、机の表面は無残な姿になってしまいました。
その時は火災保険(対象になる、ならないは別にして)の事など全く考える術もなく、泣く泣く化粧板を敷いて使っています。
C 高校同期・年に一回の同窓会やゴルフ(70台も時々とか)で一緒になる方
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拝読するのが遅くなり申し訳ありませんでした。先ずは大事に至らなくて良かったことと、お孫さんが掃除機扱いとは血筋は凄いと吃驚です。
漏電とはプラス、マイナス線が何らかの事情で繋がるから起きると思いますが、その原因が解明できないようで自分も不安に思えてきました。しかし自分はそんな事故は起きないとの楽観論者なので、自動車任意保険以外は掛けておらず複雑な気持ちで拝読しました。
ゴルフ保険は必要と思いつつ保険会社が分からないので未だ。宣伝してくれれば考えるのにと言うところ。
人生色々数多い体験も宝になりますね。
D トヨタ先輩・ゴルフ仲間(年間100ラウンド以上、そのうち海外が1/3)・工
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