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健康
           
糠漬けに挑戦(平成20年7月29日脱稿)

   子供時代、夏には母手作りの糠漬けを食べて育った私は、新婚早々の丁度40年前に糠漬けを食べたくなり、新妻に糠漬けを作ってくれるように所望した。見様見真似で暫くは作っていたが、臭いが嫌だとか言って沙汰闇になった。

   荊妻に見放された私は20年位前に、浅漬け用の容器セット(容器と重石と蓋)を買い、漬物の専門書を読んでは家庭菜園で収穫した高菜・二十日大根・野沢菜等を時々漬けたが、発酵食品とは言い難く、単なる塩漬けに過ぎず、サラダを食べているような食感に留まり、長続きはしなかった。



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はじめに

   5回目のがん治療を終えて平成20年6月25日に退院した直後に、NHKの人気番組『ためしてガッテン』の再放送で『糠漬け』編を偶然にも見た。この番組には時々『やらせ』が感じられるのが嫌なだけではなく、5分間で済む内容を45分も使う冗漫な解説に波長を合わせるのが苦痛になり、日頃は見ていなかった。

   ところが今回は、予想もしていなかった『コツ』らしき解説に出会って驚き、急に挑戦したくなった。体力不足から外出もママならず、テレビをのんびりと見ながら休養していた成果でもあった。

 
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準備

   糠漬けの本質は『乳酸菌による野菜の醗酵』にある。乳酸菌は嫌気性、醗酵を阻害する雑菌は好気性だそうだ。したがって甕に入っている糠床の上下を反転させれば雑菌の繁殖は抑制されるから、巷間で言われているような掻き混ぜ作業は必要ないそうだ。

   そのために便利な甕の形は直方体や円筒型よりも紡錘型。甕の中央部の糠を手のひらで押し下げれば底部の糠が壁面に沿って押し上げられて上部へと移動する。対流とは正に逆の動きだ。愛知県産の常滑焼が向いているらしい。早速、近くのホームセンターで常滑焼の甕を購入。糠・食塩・唐辛子等が既に調合されている糠材をスーパーで購入した。



   野菜にもともと付着している乳酸菌には大腸菌のような強い繁殖力はないが、夏ならば1〜2ヶ月くらい糠漬けを作り続ければ糠床も熟成するらしい。甕に糠材を入れ、説明書に従って所要の水を入れ、撹拌して準備は完了。

 
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挑戦

   家庭菜園では食べきれないほどのキュウリや茄子が毎日取れていた。野菜を水洗いすると塩も表面に付き易い。塩もみした材料を糠の中に埋め込み、6,12,24,48時間置きに取り出しては味見。皮を剥くのは面倒なので時間で調整した。24時間で十分と判明。

   一週間後に問題点を発見。浸透圧で野菜から吸い出された水分が増え、糠が流動状態になって来た。解説書を読むと布巾などで水分を吸引すればよいとある。でもこの作業は面倒だった。常滑焼のカタログに眼を通した結果『水抜きカップ』の存在を知った。

   細長いカップの壁面の上部には25個の穴が開けてあった。このカップを糠の中に埋め込むと、水分がカップの下部に溜まる容器だ。ホームセンターに出かけたら、この水抜きカップは特注品。発注後1〜2週間くらい掛かるとのお達し。

   このカップの使い勝手は抜群。新しい材料を漬け込むとき、カップの下部に溜まっていた水分を捨てるだけの簡便さだ。肝心の水抜きカップをNHKが紹介しなかったのは、担当者の調査不足だ。

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蛇足

   私は丁度6年前の夏(2002年)に築28年の我が家をリフォームした。風呂には追い焚き機能を付けた。過去28年間はセントラルヒーティングの給湯機能を使っていた。ボイラーが沸騰するまでに15分、給湯に15分の合計30分掛かったので、朝風呂抜きの生活だった。
   
   リフォーム時に選択した鋳物琺瑯製の浴槽は保温性が高く、朝食前に5分間の追い焚きで入浴可能となり、爾来朝夕2回の入浴が習慣になった。朝風呂後の一本のビールが在宅予定日の朝の楽しみだったが、5年半前に胃がんと食道がんとが同時に発見され無念にも断念。糠漬けの準備は追い焚きと同じ僅か5分で十分だったので時間の無駄もなかった。
   
   入浴前に糠漬け作業を済ませると、手に付いた糠の臭いは入浴で落とせた。我が糠漬け作業は、入浴時に洗い場で済ませる歯磨きや髭剃りと同じように、大げさに言えばいつの間にか『人生の一部』に組み込まれ、何の負担感も感じられないようになった。
   
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おわりに

   幼少時に慣れ親しんだ食習慣には古希を迎える歳に至った今でもなお、私には限りなくも心地よい想い出として残っている。

   46年前の1962年にトヨタ自動車に就職。独身寮の味噌汁は郷里(福岡県)の黄色い米麹味噌とは異なる赤味噌だった。この味覚に慣れるのには10年を要したが、いつの間にか赤味噌ファンに転向。でも未だに『納豆』には手が出せない。納豆は子供や孫の好物なので、食習慣には当然とは言え遺伝性はないようだ。

   商品としての糠漬けは防腐剤の混入を怖れつつも、スーパーや百貨店で時々購入していたが、やっと自前で作れるようになった。糠床には味付け用の昆布等も指南書に従って混入。日を追うごとに本物らしい食感に成長。

   もう直ぐ夏野菜の収穫は終わるが、糠漬け向きの秋冬もの野菜を8月下旬の種蒔に間に合わせるべく探し始めた。

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読後感

極暑お見舞い申し上げます。糠漬けのお話なんとなく涼しげに感じます。

お元気そうで何よりです。小生外の暑さを避け室内のクーラーの中で、変わらず元気に過ごしております。

@ 40年以上も前に我が職場に実習にこられた社外の方・工・珍しい種類のがんに罹り闘病中

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石松さんにかかると糠漬けも理屈の連続ですね。恐れ入り、またまた教えていただきましたので、一報したくなりました。

乳酸菌は嫌気性、雑菌は好気性ということで、糠床処理を簡素化される件が有りました。私も乳酸菌に気配りする毎日で、石松さんほどの厳しい取り組みが欠如していることを、痛く思い知りました。

私の場合は、ヨーグルトです。カスピ海ヨーグルトなる菌を入手して、毎日 食しています。毎日3分の1程を残し、新鮮な牛乳を追加して、置いておくだけですが、これがうまく行かない。以前は、蓋付きの容器に入れ、シェイクしていました。始めの頃はうまく行っていたのですが、夏頃から雑菌にやられました。

最近は、スプーンでかき混ぜるようにしていますが、雑菌のため劣化と回復の繰り返しです。最近は、少し回復していますが、うまくやるための要領がわからないままでした。嫌気性・好気性の使い分けであると判れば、分離するように環境を整えるだけですから、改めてやり直してみようと思っています。

私も糠漬けで育ちましたが、懐旧よりも健康優先で、64歳の現在はメタボ対策で食生活が一変しています。

朝は、納豆1パック、寒天の作り置きの塊り200cc、ヨーグルト1グラス、大きめの目刺1尾、生卵1個、ウコン1さじ、です。ヨーグルトは大変重要な位置づけですので、今回の情報は大助かりです。

5回目の挑戦の後は、充実した毎日をすごされているご様子。改めて勉強になりました。

A トヨタ&大学後輩・工・引退後猛勉強をして技術士の国家資格を取得⇒東奔西走しながら活躍中

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さすがに石松さんの挑戦意欲に感心した次第です。私も豊田へ来る前にはおふくろの糠漬けを毎日食べていたから懐かしいです。自作のキューリや茄子の糠漬けは最高でしょうね。

また味噌汁の話も同感です。私も長崎出身ですから赤味噌になかなか慣れずに困惑したことを思いだします。同期に入社の友達が赤味噌汁に慣れきれずに、会社を辞めて長崎へUターンしてしまいました。

私はなんとかクリアーできました。では暑い最中、体調に気を付けてお過ごしください。

B 荊妻の知人・中小企業の経営コンサルタントとしてご活躍中。

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