資産を売却し借金を返済すれば、支払っていた利子が利益に変わる。原材料価格の切り下げはそのまま日産の利益になる。設備投資を縮小すれば減価償却費も直ちに縮小し利益になる。研究開発費を絞ればそのまま利益になる。社員が減り人件費が減少すれば、その分が直ちに利益に変わる。
つまり日産の利益の実態とは自らの生産活動で生み出した付加価値からではなく、外部からの資金の移転と内部の経費節減に過ぎない。
直近の連結決算(平成17年度の決算)発表を会社四季報から取り出してトヨタと比較した。
トヨタ自動車 日産自動車 対トヨタ比率%
総資産 28.7 兆円 11.5
40%
自己資本 10.5兆円
3.1
30
自己資本比率 36.8%
26.9
73
売り上げ 21.0兆円
9.4
45
税引き利益 1.37兆円 0.52
38
利益率 6.5%
4.5% 69
設備投資 15,288
億円 4,750
31
減価償却 8,914
億円 3,071
34
研究開発費 8,126
億円 4,476
55
人員
28.6 万人 18.2
64
一人当たりの売り上げ 0.73 億円 0.63
86
一人当たりの人件費 804万円(37.0歳) 730万円(41.2歳) 91
日産の復活が喧伝されても上記のように、絶対値でも自己資本比率や利益率などの相対値でも、トヨタに勝てる項目は一つも無い。真の企業力は規模ではなく、一人ひとりの競争力にあるが、一人当たりの売上額も低く、そのためか人件費も低い。平均年齢を同じにすればトヨタの80%だろうか? 尚、一人当たりの人件費は連結対象者ではなく、単体の平均値。
その上、コミットメントを導入して販売店にノルマを課した。需要の先取りであれ何であれ、販売台数が増加すれば、企業の実態は同じでも利益が瞬間的だが激増するのは、計算するまでも無い。
膨大な利益が発生すれば以前とは異なり、膨大な配当金として手元の虎の子の資金が流出するが、ルノーから見れば出資金に対する正当な配当だ。
しかし、一見完璧に見えるこの手法に、死角は無いのであろうか?
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