風車問題は誰が責任を取るのか5

風車3基建てれば、1基はタダ!

5-1 風力発電に関するQ&A集」

 風力発電導入に関しては、一般人が見るにはNEDOの「風力発電導入ガイドブック2008」(以降「ガイドブック」)があり、既述ではあるが、そのP.101に、以下のような記述がある。

(d) 騒音

風車による騒音には、ブレードが回転する際に発生する風切り音と増速機等から発生する機械音とがある。風車騒音のレベルは機種や出力によって異なるが、図4.2.1-9 の例に示すように、一般に風車から離れるほど騒音レベルは減衰する(風車出力:800kW, ハブ高:50m)。

 風力発電システムの設置に際しては、この距離減衰および風車の種類を考慮して設置地点を決定する必要がある。また、参考として騒音レベルの目安を図4.2.1-10 に示すように、風車が1基のみの場合、通常250m 程度離せば生活への影響はなくなるとされている。これは住宅街の夜間の環境基準(45dB)によっており、身近なものとしてはパソコンの冷却ファンが45dB、静かなオフィス内の音は50dB 程度と言われている。なお、風車の設置数が増えると騒音も大きくなるので、この場合は風車からの距離を離す必要がある。

 その中の、風車が1基のみの場合、通常250m 程度離せば生活への影響はなくなるとされている。」と言う、一体全体、どこの、誰が、どうした根拠により「影響はなくなるとされている」のか不明のまま、”公式的”に広くに当てはめられ、風力発電施設は造られ、今日のような風車騒音問題の事態を招いた。

実はこの「とされている」と言う言い回しは典拠も示されず低周波音問題についても数多くの場合に適用されている。

 と言うような良く訳の解らない様な事を言っているNEDOだが、、昨年の政権交代による行政刷新会議により、11/27日の事業仕分けの結果

【独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所の運営費交付金】要求額計1941億円に対し「見直し」と判定。仕分け人は、人件費や事務管理費が高いことを問題視。効率化のため両機関について組織統合を含めた検討をするよう求めた。NEDOには「天下りと、産業技術総合研究所への(研究費の)横流しの構造がある」との声も上がった。省エネ・リサイクル支援法債務保証基金については「見直し」とし、不要額全額の国庫への返納を要求した。

2009/11/27 21:50   【共同通信】

 と言うことになったのだが、拙サイトでも低周波音問題をウダウダ述べていた頃から、「参照値」作成に関し、しばしば採り上げていた産業技術総合研究所(=産総研)はNEDOと完全同類項の上、むしろNEDOのおこぼれを戴いていたらしいことを知った。

 で、風車の騒音問題というと、これまで、こんな“ろくでもないガイドブック”を造ったNEDOが遺憾と、エネ庁と供に、被害者から標的にされてきたが、更に、風車に対する政府からの1/3の補助金が問題とされるようになったのだが、実はその申請・交付窓口がNEDOであったからなおさらである。

そこで、本来NEDOは、「日本の産業技術とエネルギー・環境技術及びその普及を推進する日本最大規模の中核的な研究実施機関」として存在しているのであり、そもそもが“下々の風車苦情者の窓口ではない”のであると言うことからか、さらには新エネルギーの交付金事業はNEDOの総事業における金額的には、ホンの一部であり、正直“そんな些末の事”にいつまでも手間暇は避けないとばかりに、補助金の窓口は2009/9から「一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会」(名前が実に長い。NEDOの人間も何度も言いよどんでいた。以降「新エネ協議会」)に替わった。


5-2 風力発電施設建設は如何にして白羽の矢を立てるか

さて、Q&A集の能書きは、風車が建設されるまでの手順を、「風力発電に関してよく聞かれる質問と回答をまとめたQ&A集です。風力発電の導入に役立つ情報をまとめています」としているに依れば、以下のようになるらしい。

3.7 建設までの手順

Q.風車を建設するまでの手順は?

A.風車建設までの手順は、概ね次ぎのとおりです。

1)立地調査 @有望地域の抽出 A近傍風況デ−タの収集 B地理的条件の調査等

2)風況精査 @風況観測 A経済性の概略検討等

3)基本設計 @機種選定 A輸送調査 B地権者交渉C発電量予測 D環境影響評価(騒音・電波障害・景観等) E経済性検討 F電力会社への事前協議依頼 G資金調達先検討

4)実施設計 @測量調査 A地質調査 B設備設計 C工事設計 D工事計画

5)関係機関等手続き @電力会社との事前協議 A許認可手続き B地元説明 C補助金申請DRPS 交渉 E工事計画の届出等

6)建設工事 @土木工事 A風車設置工事 B電気工事 C試運転

7)運転・保守 @風車設備・電気設備の保守点検

「手順」1)2)の段階の、「風況調査」では例えば、風力発電適地選定支援システム「WinPAS」(Wind Power Assesment System)」などで目星を付け、幾つかの場所に大凡の見当を付けて、可能性の有りそうな現地に向かい、少しでも、風況が良く、取り付け道路があり、送電線が近くにあり、、残っている中の設置条件の良好な所からある程度優先的に、白羽の矢を立てていくのだろう。

3)の「地権者交渉」の段階で、「何か風車を造るらしいぞ!」と言うことが、”地域の一般人”にも何となく解るのであろう。もちろん、仮に解ったところで、風況、地の利の良いところなどそうそうあるモノではなく、特に昨今ではそうそう簡単に見つけられるモノではない。もうこれは石油、鉱山などの山師的感覚で、もうほとんど宝物探しに近い訳であるから、折角見つけたところにクマタカとか天然記念物なんかがいれば密かに処分してしまいたいところだろうが、残念ながら、これらは風車適地ハンターが見つける前から知っている人が結構居る訳だからそうそう簡単には行かない。しかし、もし、知っている人が居なくて、自分たちの方が先に見つけたとすればそれは絶好のチャンスなのだが、そんな”奥地”なる場所は既に日本にはほとんどないであろう。

多分こういった事前探査を経て、いよいよ、技術的なところは除くと、地域の有力者、地主、関係者、役所、の了解を得て、まー、いわゆる”根回し”を経て、公的な風況調査が始まるわけで、ここまでは建設全体から見れば、表に出てくる金としては小さいかも知れないが、既にそれなりのカネは掛かっているわけで、実はそこまでが、建設の要なのではないでしょうか。従って、”その後の地元の一部の反対”程度では、事業者は建設をそうそう簡単に諦めるわけには行かないであろう。


5-3 一度立てた白羽の矢は

そして、今一番問題になっているのが、5)B地元説明 C補助金申請の間のことである。本来ならDの前後に「補助金交付決定」と言う項目が無くては明らかにおかしいのだが、このパンフレットでは「申請」すれば「交付」されるという大前提に立っている。そこで、実際には、「5)関係機関等手続き」と言うのは、全て平行して行われ、実際には「Bは“地元説明進行中OKの予定”」で、これまでは「交付」に漕ぎ着けてこられたのであろう。だが、0909改訂でそれが難しくなった。

更に、0911中央環境審議会から新たに風力発電施設等の建設も環境アセス対象事業として追加される様な答申がなされては、その為にかかる更なる費用と時間的ロス、そして、その後の苦情処理の問題の面倒等を考慮すると、風車事業者的には全く無駄な負担を、これまでとは比較にならないほどの時間と金を強いられることになるとすると、風車事業はこれ迄ほどは美味しくないのではなかろうか。

 従って、事業者としてはこれまで以上に、場所の選定を厳選し、
一度申請すれば、二度や三度、ハネられたくらいで、諦めていては、事業として丸損額が増えるだけのことになる訳であるから、申請審査に落ちて、事業者は全額自己調達するようなことせず、次年度以降に繰り越す事になる。一度白羽の矢を立てたら、まず、そうそう簡単には諦めることはないと住民は覚悟すべきである。

もちろん調査にも補助金が出ている訳だから、最終的に申請に通らなければ、そもそもが、まるっきり建設の可能性のない様な所を調査していた事になるわけで、これまで以上にコンサルタントや事業者の資質が問われることになるのであろう。


5-4 風力発電施設の建設資金後2/3はどうするのだろか?

実際には全額自前で建設し、建設後の売電は丸儲けと言うようなら何の問題もないが、基本的には建設費の1/3は国から補助金として出る訳で、事業体に自治体などが加わっていれば1/2が補助金として出る訳で、後の分は自分で勘考するわけだが、とにかく数億、時としては10億円単位の補助金を手に出来るわけであるから、これは何としても成し遂げなくてはならない事業であり、事業者にとっては近隣住民が少しくらい「グダグタ」言ったところで、宥め、騙し、すかし、も田舎の町村長や議員は縋り倒して、自治体を事業体に引っ張り込む理由が解ろうというモノだ。

が、仮に目出度く審査に通って1/3をゲッとしても、とにかく残りの2/3は自分で何とかしなくてはならない

で、これを1番目の風力発電施設の建設として考えてみよう。基本的には自己資金が有れば全然問題はないが、多分そんなのは無いから、多分、その1/3の現金と完成物と完成後の売電料を担保にして、残りは銀行から借り入れるのではないかと思うのは素人の単なる想像で、本当のところは風力発電会社か銀行に聞いてみなくては判らないなどと思っていたが、やはり、蛇の道は蛇、チャンとそうした手はずを整えてくれるところが有る。(


実のところは、NEDO自体が、平成18年7月7日に「NEDO政策金融業務の見直しについて」として経産省がえらく力説している様に債務保証をお約束しているのだが、実施のその利用率は低い。民間金融機関の利用の方が面倒がないのであろうか。それにしても至れり尽くせりの”待遇”で風力発電を初めとする新エネルギー推進は開始されたのである。

(2)新エネ債務保証について
・新エネルギー導入事業者として、特に中小企業の場合は、事業固有の特殊性により民間金融の調達(市中融資)が困難であるため、政策金融の必要性あり。
・利用実績は少なくなく、風力発電に関する事業規模の拡大に応じて、今後の利用増加が見込まれる。
・京都議定書における排出量等削減目標の達成に向けた必要な様々な取組の1つとして重要であり、政策支援の必要があるため、廃止は見送るべきだが、その実施機関がNEDOである必要性につき検討すべき。
・利用実績の更なる向上に向けて、利用ニーズに合わせた見直しやPRの充実等、適切な対応を行う。

 それにしてもこの「見直し」はどうなったのであろうか?

100412追記


しかし、実は銀行からの借り入れは、大手商社、電力会社、建設参加の企業が「信用を供与」を即ち保証に人になってくれれば全く問題はないはずである。因みに、風力発電会社として日本で唯一上場している「日本風力開発」の塚脇正幸社長は三井物産出身である。謂わば、三井の風車部門と考えればいい。CEFの鎌田宏之社長は調べたが不明。


 等とアホと言うより、「まとも」なと言って欲しいのだが、なことを考えていたら、そんな必要など全くない事が解った。先に示したQ&A集」によれば、@補助制度、A融資制度において、次ぎのような手厚い優遇制度が国により為されているのである。

【風力発電フィールドテスト事業】
問合先:()新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)風力発電の立地が有望と考えられる地域において、当該地域における詳細な風況観測(高所風況精査)を1年間実施し、風車立地に必要な詳細な風況データを収集・解析し、導入普及に有用な資料の取りまとめを行う。(補助率:1/2相当額)

【新エネルギー事業者支援対策事業】
問合先:
(補助金) :経済産業省資源エネルギー庁、
(
債務保証)() 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」の認定を受けた計画に基づき、新エネルギー導入事業を行う事業者に対し、事業費の一部を補助するとともに、金融機関からの借り入れに対して債務保証を行う。

(対象システム出力:1500kW以上補助率:補助対象経費の1/3以内、債務保証:保証範囲 対象債務の90%:保証料率 保証残高の0.2%

※すべての制度の利用に当たっては、詳しい条件の確認が必要で、その他の制度が適用される可能性もあるため、その都度関係省庁に相談・確認をして下さい。


と言うことなのである。即ち、風車の建設額を13億円とすると、NEDOの認定を受けたモノに関しては、国からの補助1億円の残りの2/3の2億円の内の90%1.8億円)に関しては債務保証が得られるというのである。風車は元手で無し作れると言いたいところだが、流石そうはいかず、ひとまず、0.2億円、即ち、2000万円のゲンナマさえあれば3億円の風車を1基造ることが出来るのである。まー、実際にはそれまでのカネとか、保証料が必要ではあるが、それにしても、これは“初めの一歩”の”見せ金”でもあるので別に後で使ったり、返済してしまっても構わないと思ったが。
 それ故に、風力発電事業体の子会社であるような各サイトの資本金は1000〜2000万円もあれば充分なのである。

もちろん、借入金はその後発電した売電料でチマチマと返済するのが常道なのだろうが、実際には止まったままの風車も少なくないと聞く。それではとても17年の償却までに済むはずはない。止まっている居ないに関わらず、とにかく2番基の建設に着手する。すると1/3の現金が入る。もちろん、2/3の借金は残る。更に、3番基の建設に着手する。またまた1/3の現金が入る。この結果、風車にかかったカネの2/3の借金は残る。即ち、3番基までに、単純に2/3+2/3+2/3=6/3、即ち、風車2個分の借金は残るが、1/3+1/3+1/3=3/3=1即ち風車1個分は補助金だけでマルマル出来てしまう!事になる。

個人の場合だと、数百万も借金が有れば返済は一生モノだ。下手をすれば数十万円の借金で死ななければならないような場合もある。零細企業でも百万、千万円単位の借金で死ななくてはならないことは少なくない。

しかし、流石に個人でも「銀行は、億単位の借金をしている人間に死なれては困る。とにかく此奴を生かして利息だけでも延々と納めさせた方が得であると考えるらしい」と、私などでは夜も昼も眠れないような借金をして、豪邸に住み、高級車に乗っている知人が昔言っていた事を思い出す。もちろん事業的な借金ではあるが。多分この論は今も同じであろう。
 庶民はとかく銀行は預金を集めるのが仕事と思いがちだが、言うまでもないが、それは商売で言う単なる仕入で、チリのように集めたカネを山として、庶民に払う利息より高い金利でお金が必要で返せそうな人に貸し出して、利ざやを稼ぐことこそ仕事なのである。


 腹の据わっている、或いは、しっかりした企業のコネさえあれば風車事業は中々に美味しい事業であるようだ。そして、後一つ、被害者住民の苦しみの声を無視できるような無神経さである。


100312/100812

(続く)風車問題は誰が責任を取るのか6
CEFは二匹目のドジョウとなれるか


最後まで読んでくれて有難う


HOME