11th lnternational Meeting
on
Low Frequency Noise and Vibration and its Control
Maastricht The Netherlands 30 August to 1 september 2004
VlBROACOUSTlC DISEASE - WHAT IS KNOWN TO DATE
NunoA.A. Castelo Branco ,Mariana Alves−Pereira
Center for Human Performance,2615 Alverca,Portugal(n.cbranco@netcabo.pt)
New University of Lisbon,DCEA−FCT,2825 Caparica(mariana.pereira@oninet.pt)
振動音響病-今までに解っている事
要約
背景:
ポルトガルに於いては低周波騒音(Low frequency noise 以下LFN)により引き起こされる病理について1980年以来研究対象とされている。1999年に、振動音響病(vibroacoustic disease=以下VAD)は、LFNに過度に晒されることにより起こされる体系の病理と認定された。一日に8時間、週5日間、即ち、職業的に(低周波音に)晒される航空機専門家に対し何年にもわたり臨床的展開(evolution)がなされた。
臨床的症状と診断
VADの症状と徴候は既に述べられており、現在は診察に際しての手続の有用性が指摘されている。LFN暴露の過程の経過は、職業的にも、環境的にも、あるいは余暇の時間においても、兆候の進展に直接的に関与し重要である。
最近の進展:
VADは、職場以外の原因、即ち、生産工場の近くに住む人々やバスターミナルの近くに住んでいる人々を含む、過度なLFNに晒された人々において診断されてきている。新しい診断の手順は研究中であるが、極最近の主張は、VAD患者は二酸化炭素が存在する場合には無意識のうちに過呼吸反応(involuntary hyperventiatory response)をなくすと言う主張である。多くのVAD患者の観察に際して、VAD患者の心嚢(心膜)の電子顕微鏡を使用して研究したところ、非アポトーシス細胞(non-apoptotic cellular)の大量死が自動免疫病(auto-immune diseases)に多いに寄与しているのではということが示唆されている。
将来的展望:
LFNは未だに病気の動因(agent)として認識されていない。それ故に、それを軽減させる努力は何らなされてきていない。従って、それ故に、LFNは現代社会のほとんどすべての分野での蔓延が許されている。この事実は、LFNに関連する、あるいはLFNに無関係である研究のための実験対象集団の選択と言う問題を生み出し、LFN履歴が患者において全然取られず、研究グループと動物のモデル実験においてLFNを注視せず、LFNの存在に帰されうる調査生物学の成果はまた別問題である。同時に、LFNに暴露された労働者に何らなの保護も全く与えられず、LFNにより引き起こされる病理の大規模な研究も公にされていない。これは支持出来ない極めて非倫理的な事態である。
導入
過度な騒音暴露は聴力障害をもたらす。この事実は古代から知られている。しかし、過去200年間に地球規模の騒音は進行し続けてきている。機械を使用する事により地球上の騒音は大いに増大している。
ここ4、50年で、私達に必須の多くの機械では騒音を軽減する方策がとられてきている。また、強烈なレベルの騒音下で働かねばならない労働者には聴力保護の教育と機器が提供されている。従って、騒音は制御されているように思われる。しかし、これは本当の事態であろうか?
騒音が常に聴力機能と関連している以上、聴覚問題はすべての騒音を削減する努力をするよう動機づけられている。従って、騒音軽減の努力は、人間の聴覚機能が最も敏感な500−10,000Hzの周波数に対してに焦点が当てられて来た。しかし、500Hz以下、及び人間には聞こえない20Hz以下の周波数で生じる聴覚的現象が増大している。
過去数十年にわたり、聴覚的現象は聴覚機能に影響するだけであると仮定されてきている。その結果、法的措置は主に、500-10000Hzの周波数帯の騒音に焦点が当てられてきた。その結果は悲惨であり、500Hz未満の周波数で生じる騒音は、事実上社会のすべての分野で無視された。さらに困った事に、これらの周波数の騒音が多数の人間に容赦ない健康被害を与えるという事に対し反対が有ると言う事である。
非可聴の超低周波音を含む500Hz未満の周波数のLFNは、病気の動因である。人間社会が、LFNを病原の動因として認めようと認めまいがこれは真実である。もちろん、もし本当に、人間社会がLFNを認めて、制御し、法律で規制するならば、LFNにより引き起こされた病状に苦しむ人々にとっては大いに有益であろう。政策立案者と医学会における強烈な抵抗にもかかわらず、人間の健康が最優先の関心事になる事が望まれる。
この報告の目的は、過去24年間にわたる、過度なLFN暴露による生物学影響の科学的研究の結果を発表し続ける事である。
振動音響病(VAD)
VADは全身にわたり、LFNに過度に曝される事により引き起こされる体系的病理(systemic pathology)である。ポルトガルでは、LFNに起因する病理は1980年以来研究の対象となっている。1999年に、VADの臨床段階で、OGMA (Of icinas Gerais de Material Aeronautico)で雇用された航空機専門家のために明らかにされた。これらの人々は職業的時間割によりLFNに曝され続けてきた(表1参照)。
表1のデータは、140人の航空機専門家(平均年齢42+10歳)の70人(50%)の症状/徴候(1)を示すために時間を一致させてある。これらの140人の労働者は、表2にリストされた基準による306人の航空機専門家のオリジナル・グループから選ばれた。症状/徴候は、現地の医学施設に保管されている作業者の医療ファイルから年代順に収集された。
表1は、1日8時間、週5日、航空機エンジン騒音に暴露された労働者のVADの臨床的展開は両者の関係を明確に示している。異なった被爆の経過(例えば、もし家庭でLFNがある場合)が有る人では、異なる症状と徴候が展開すると思われる。音響環境の違いは、また、VADの症状と徴候の展開と進行の一因ともなっている。
表1. 振動音響病の臨床段階(1)
臨床段階 |
症状徴候 |
段階T-軽度(Mild) (1-4年) |
わずかな気分の動揺、消化不良と心臓の痛み(burn)、口/のどの違和感(infections)、気管支炎 |
段階U-中程度 (Moderate) (4-10年) |
胸の苦痛、明確な気分の動揺、背中の苦痛、疲労、真菌性(Fungal)・ウイルス性(viral)・寄生的(parasitic)な外皮感染、胃の内膜(lining)の炎症、排尿時の苦痛と血尿、結膜炎、アレルギー |
段階V-重度 (severe) (10 >年) |
精神的かく乱、鼻・消化器・腸粘膜からの出血、静脈瘤と痔、十二指腸潰瘍、痙攣性の大腸炎、視力低下、頭痛、激痛、極度の筋肉痛、神経的かく乱 |
表2。研究集団から除外のための条件。(1)
条件 |
コメント |
連鎖状球菌感染者 |
特別な細胞行列変化を引き起こす傾向のため。 |
糖尿病 |
上記と同じ |
先在的心臓疾患しかし不安定な高血圧患者は除く。 |
これが個々の感受性の基準かもしれない疑いがあり、既に確立している高血圧症によって引き起こされた障害とは異なるので。 |
たばこ乱用 |
1日あたり20より多くのタバコの喫煙者。 |
アルコール中毒 |
1日あたり1リットルより多くのワインを飲む人(10-12%アルコール分)。 |
ドラッグ使用 |
娯楽的あるいは向精神性のどのような薬の使用者 |
臨床的所見(Picture)と診断
VADで言われるはっきりした症状の一つは騒音に過敏である(intolerance)と言う事である。これは、通常の騒音被爆による聴覚損失とは全く別物である。VAD患者はどのようなタイプの騒音でも我慢することができない。聴覚障害者はテレビの音を大きくする一方、VAD患者はどのような音にも耐えるのが非常に困難なので音を小さくする。VAD患者に聴力について尋ねると、たいてい「私の聴力は非常に良好であり、聞こえすぎるくらいだ」と答える。聴力検査はこれらの聴覚の変化を反映せず、ただ単に(LFNにより引き起こされた病状に対して)250Hzと500Hzに障害があるという情報を提供するだけである。健康回復を意図するVAD患者に対してはMetz test(不明)は否定的である。この騒音に対する非寛容さより恐ろしい結果の一つは、この行動の必然的結果として、社会的集まりからの逃避、家族と友人からの孤立と言う欲望を招くという事である。これは全ての不快な社会的意味あいを持つ。
不安(※1)、鬱病(depression)、偏執病的行動もVAD患者に共通である。この事実はVAD患者が置かれている現下の抜け難い苦境からすれば理解する事は困難ではない。表の段階TおよびUに含まれる苦情の種類が、型通りに職場を訪れるたいていの内科医に示されている場合、ヘルスケア提供者が利益を与える事に不審を抱くのは無理からぬ事である。苦情の中に騒音を原因となるもの(culprit)として疑うのは、難聴、即ち、聴力に関する病理学を除いては標準の手続きをとらない。もし、患者が特にその人の病気の原因となる要因として騒音を非難すると、通常、その人は大部分の人たちより「より敏感なグループ」に属すると認識する。OGMAによって雇用された航空機技術者の医療ファイルでは、しばしば、内科医は(カルテの)隅に、「患者は仮病である」、と走り書きをするであろう。
※頻繁に使われる語だが、近年(2003年)では単なる気分を表すのにとどまらず、身体的症状を伴う病気を指す語としても認められつつある。
なお、以降の※の項目は全て訳者自身が内容不明なので自分のための解説として付したモノである。
VAD患者はしばしば、仮病、鬱病、あるいは神経症の人と見なされる。この事実は最も不当である。何故なら、多くは正真正銘の病気だからである。そして、彼らは、未だ政策立案者ばかりならず一般医学界が病気として認識していない病気に陥るという不幸を負っているのである。ジョナサン・アーノット(Arnot)氏(年齢40)は、スコットランド出身の船舶機械工でありVADと診断されたのであるが、自分の病状の率直な公開において、仮病という疑いが彼の生活にどのように大きな影響を与えたか書いている。
私は、しばしば、仮病を使ったと言う疑いをかけられていた。仮病者と考えられることの社会的な意味あいは、普通に企業の中で働いている家族にとってもまったく困惑させるモノであった。(...) 医師の診断は無く、私は、専門医の誰も治療を提案することができず、だれからも見放された場所に置かれていた。私は、私の症状が(医師にとって)認めてもらう病気にさらに発展するかどうか、あるいは時の経過により自分自身で解決するかどうかを見極めるために放置されている様に感じた。(...)私は、医師が、私の事例を予断で、私が仕事をサボるための診断書を求めているか、あるいは、私が誰かを訴えるために事例を創ろうとしているのではないかと考えているのではないかと感じた。どちらも真実とはかけ離れたモノで、私は単に、病気に倒れる余裕がなかっただけである。(…)自尊心の喪失と私の子供と友人の前に立つ損失も考慮されなければならない。収入の欠如による社会的な阻害と私がまさに仮病を使っていたという絶えざるほのめかしによる感情的な影響は、英国においてまだ禁止されていない職業病によって倒れると言う事の実際的損失のホンの一部である。 (8).
被爆時間の増加とともに、頭痛、羞明(photophobia)、さらに頻脈(tachycardia)が発現するかもしれない。徴候の発現は、各々のLFNが強い環境における聴覚上の特定の特性ばかりでなく、個々のLFN被爆歴にもよるのではないかという事に、改めて注目すべきである。胸の痛み、吐き気(nausea)および不規則な腸(bowels)の痛みはその他の苦情と供に言われる。連続的な喉の感染症(infections)、しわがれ声、発疹およびアレルギーは、VAD患者において一般的である。しかし、それらは抗生物質を使用するという通常の治療的処置では効果はない。通常、LFNの強烈な環境から移動すれば、これらの徴候はすべて治まるか消える。
1980年に航空機専門家における観察により得られた神経病理学は、この専門家集団においてLFNによって引き起こされた病理に初期の研究を促した。前開始(late−onset)てんかんに対するポルトガル全国的平均は、0.2%である。306人の航空機専門家のグループでは、それは10%であった(4)。非痙攣性の神経学的欠損症(non−convulsive neurological deficit)のユニークかつ突然の症状は、11人に発現した(9)。これらは脳の虚血性(ischemic)血管事故と診断され、それは、画像研究に準拠した。脳波図(EEG)と潜在的可能性から喚起された多様な、臨床心理学的で神経学的な証拠(10、11)に合致していたのでかなり強力な変化を示した。前開始てんかんは、22人において診断されたが、その内何人かの発作は彼らが仕事場から離れた場合にも見られた(4)。振動性の刺激(12)および視覚的な刺激による反射的なてんかんは2人に観察された。聴覚の刺激は発作を引き起こさなかったが、場合によっては、激怒反応(rage reactions)と行動傷害(movement disorders)を引き起こした(9)。
脳幹聴性誘発電位(or聴性脳幹誘発電位 BAEP※1)、事象関連電位P300(event−related potentials P300)、および磁気共鳴映像法(MRI)を、すべての被験者に実施した。実のところ、VAD患者は、それらの年齢層において神経伝導遅延を増大させた(11)。同様の評価は高年齢層において頻繁に見られ、退化的な過程と関連する。P300テスト(※2)により通常認識の退行と関連するとされる潜伏期の増加と振幅の減少が明らかにされた。脳MRIは、痴呆症に見られるような脳萎縮症とVirchow-Robin血管周囲腔の膨張と同様アルツハイマー病において見られる脳幹と(大脳)白質における障害を明らかにした(11)。
※1聴覚求心性経路のうち、主に蝸牛と脳幹に発生した電位変化を記録したもの。一般的には、ヘッドフォンを用いて音を聞かせ、同時に頭部においた電極(針電極を皮下に刺入しても、脳波用の皿電極を皮膚に貼付してもよい)から誘導した電位を、コンピューターで処理して得られる。再現性が高く、聴覚の客観的指標、あるいは脳幹機能の指標となる。http://ecsrn.com/tyouryoku.htm
※2P300とは、互いに識別可能な2種類以上の感覚刺激(聴覚・視覚・体性感覚・臭覚・味覚などなど)をランダムに呈示し、低頻度の刺激を選択的に注意させることによって、刺激後約250〜500msecという長潜時で出現する陽性電位です。P300は、後期陽性成分(late positive component)、または、P3とも呼ばれます。http://www2.oninet.ne.jp/ts0905/erp/p3001.htm
膝蓋腱反射は手掌頤反射と同様、霊長類の幼児、および高年齢層に見られる。(親指の爪、またはスプーンの枝で)線が手の掌に描かれると、顎の筋肉が収縮する。VAD患者の内、彼らの年齢層で40%は、広範性の脳機能障害(diffuse cerebral dysfunction)の現れであるこの反射を示す。また、これはパーキンソン病、多発性硬化症、およびエイズで見られる(13)。
平行障害は、オリジナル・メンバー140人の内80人に見られた(上照)(14)。この病状を持つ70人以上が存在するにもかかわらず、平行障害はVADの臨床段階には含められていなかった(表1参照)。なぜなら、それらはわずかなめまいから激しいめまいに及んでいたからである。多くのVAD患者は、彼らが飲酒していると思われるので通りを歩く事を嫌う。飛行機乗務員の間では、平行障害は特に頻繁で、BAEPの非対称性(=asymmetry orひずみ)と関係しているとされている。
ごく最近の検証では、まだVAD患者の間における別の神経学上の問題は有るが、過度な二酸化炭素の存在のため身体の過換気能力と関連するとされている。不随意な呼吸亢進反応(involuntary hyperventilation response )の呼吸器中枢は、過度な二酸化炭素の存在のためであるが、脳幹呼吸中枢(respiratory centers of the brainstem)にある。呼吸運動開始後0.1秒に吸気圧力を測定して、脳幹呼吸中枢の神経的反応を測定する肺テストがある。この評価は正常な空気の中での測定と、その後再び二酸化炭素の多い混合気の中での測定によりなされる。正常人では、二酸化炭素が有る状況で得られたパーセンテージ評価の参照値(reference value)は60%以上であるはずである。VAD患者22人(平均年齢50±8.5)では、平均的な反応は25.6±10.8%であった(15)。これは脳幹にある呼吸器中枢が何らかの形で損傷を負っている事を意味する。BAEPによって得られた結果により、VAD患者は脳幹が大きく影響されることも示唆する。
VADの公的な診断は心エコー検査によって一定の基準に達する。LFNに暴露された人間と動物の研究において最も共通して発見されたのは、細胞外マトリックス※(extra-cellular matrices)の異常な成長である。コラーゲンが多くの有機構造物(organic structures)で異常に高く生成される。コラーゲンの異常な大量生成は、組織の新しいレイヤーの新構成(neo-formation)と同類であるが、心臓の構造に器官肥厚(organ thickening)をもたらす。これは心エコー検査(echocardiography=ECG)により観察できる(16)。実際には、心嚢は心臓を取り囲む薄い嚢であり、通常その厚さ0.5mm未満である。VAD患者の心嚢の断片(今までのところ12例が調査されている)は、1.0mm未満のモノは皆無であり、最大では厚さ2.3mmに及ぶ(17と18)。心臓を取り囲んでいるこの異常に密集した嚢にもかかわらず、心臓の循環は影響されない:拡張機能障害、すなわち心臓のリズムの圧縮が全然ない(16)。別のまったく異常な特徴は炎症過程の欠如である。一般に、損傷治癒の様に、膠原質の生産を結果として生じる過程が、炎症性疾患の存在を暗示している。この事実がVAD患者とLFN暴露された動物モデルのケースではない(18と19)。
※細胞外マトリックスExtracellular Matrixとは多細胞生物(動物、植物)において、細胞の外に存在する超分子構造体。通常、ECMと略され、細胞外基質、細胞間マトリックスともいう。細胞外の空間を充填する物質であるが、それ自体が機能的組織を物理的に構築したり(例:動物の軟骨や骨)、細胞接着による細胞の足場提供(例:基底膜やフィブロネクチン)、細胞増殖因子などの保持や提供により(例:ヘパラン硫酸に結合する細胞増殖因子FGF)、細胞増殖、細胞分化、細胞移動などの制御を行う。植物における代表的な細胞外マトリックス成分は、セルロースである。わかりやすく表現すると、多細胞生物を構成する個々の細胞の多くは、細胞外マトリックスのベッドあるいは巣に埋もれて生活しているとも言える。ただ、それは単純なベッドではなく、細胞の生き様を変化させることができる動的で機能的なものであり、細胞にとっての「微小環境microenvironment」の実体である。
動物の細胞外マトリックス
脊椎動物、無脊椎動物にも細胞外マトリックスが見られる。ヒトを含めた脊椎動物に顕著な成分は、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチンやラミニンといった糖タンパク質(一部は細胞接着分子)である。間質には、I型コラーゲン、プロテオグリカン(バーシカン、デコリンなど)、フィブロネクチンなどが顕著である。軟骨を作る細胞外マトリックスの主要成分は、II型コラーゲン、プロテオグリカン(アグリカン)、ヒアルロン酸、リンクタンパク質などである。間質(結合組織)と上皮(実質)の間などに見られる基底膜には、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(パールカンなど)、ラミニン、エンタクチンなどが見られる。脳の主要な細胞外マトリックス成分は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、テネイシンなどの糖タンパク質である。
*コラーゲン(19型(種類)のコラーゲン)
*プロテオグリカン(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン)
*ヒアルロン酸(グリコサミノグリカンの一種)
*フィブロネクチン
*ラミニン
*テネイシン
*エンタクチン
*エラスチン昆虫(ハエ)や線虫などの動物にも同様な成分が見られるが、脊椎動物のものとはやや構造や成分に違いがある。甲殻類を含め節足動物における細胞外マトリックスで顕著なものは、キチンである。細胞外マトリックスは、カイメンやボルボックスといった単純な多細胞生物にも存在する。
マトリックス工学
細胞外マトリックスを操作することで、組織や細胞を制御し再生医療などに利用する応用技術であり、1980年代に初めて提唱された。また個々の細胞外マトリックス成分やその複合体は、細胞培養などに用いられ、既に医療応用も盛んである。
細胞外マトリックスの分解
胚の発生段階やがん細胞の転移などの際、基底膜などの細胞外マトリックスが特殊なプロテアーゼなどにより分解されることで、細胞の移動が制御されたり疾患をもたらす。
Wikipediaより引用 - Article - History - License:GFDL
他の重要な病状は、これらの140人の航空機専門家の間で識別されたが、それらは被験者の50%において識別されなかったので、それらは表1に含められなかった。それにもかかわらず、それらの発生は客観的に重要である。ある種類の呼吸不全は、140人の専門家の内24人に発見されたが、11人は喫煙者であった。24の症例の内11に於いては、症状を発症させるのにチョットした軽い身体的努力(※運動?)必要であった。特に、140人の被験者のうちわずか45人が喫煙者で、その内38人は20年以上に渡り職業的にLFNに被爆していた。
140人の中に存在する内分泌物疾患で最も良く見られるのは甲状腺機能異常である(18例)。ポトガル全土の大人の甲状腺機能異常の割合は0.97%であるが、我々の140人の技術者集団では12.8%が識別された。同様に糖尿病は16人(平均的年齢39歳、標準偏差(SD)=7.8)(11.4%)において見られた。一方、同様の年齢集団の全国的な割合は4.6%(1)である。
28人には悪性腫瘍があった。これら28人のうち5人には、同時に異なったタイプの腫瘍の症状があった。中枢神経系腫瘍(N=5)はすべて悪性膠腫であり、すべての呼吸系腫瘍は扁平上皮細胞癌であった(肺に5例、喉頭に1例 )。他の腫瘍は、胃(N=10)、結腸および直腸(N=9)、柔組織(N=1)、膀胱(N=1)に発見された。全ての消化器系統腫瘍は腺癌(1)との相違が少なかった。
最後に、LFN暴露の際の自己免疫性疾患の問題。VAD-患者の心嚢破片の電子顕微鏡使用研究において、非アポトーシス細胞死(※)が頻繁に認められた(20.21)。替わりに、生体力学的影響力(forces)は、生きている細胞小器官膜(organelle)と非周囲原形質膜(no surrounding plasma membrane)の細胞破裂のイメージに関与が有るようであった。これらの状況の下では、これらの患者では自己免疫性疾患が出現することは合理的である。事実これまでの研究により、LFN暴露が、狼瘡を起こしやすくした(lupus−prone)マウスの誘発を加速する事が示されている(22)。狼瘡は、また、飛行機乗務員(23)、およびLFN環境に曝されている島の住人家族全体において確認されている(24)。白班ももう一つの共通点として、LFN被爆した島の住人に特に発見される。白班は、CD8とCD4リンパ球数の免疫変化と関連する。これらの免疫変化は、また、LFN被爆労働者(25)と動物性のモデル(26)にも観察された。他の識者は、騒音被爆した労働者に自動免疫のプロセスが存在することを確認している(27-31)。
※非アポトーシス細胞死シグナルと疾患の関わり
清水重臣,辻本賀英
疾患,病態に関わる細胞死の多くはアポトーシスであると考えられているが,非アポトーシス細胞死の関与も少なからず存在する.特に,神経変性疾患や癌にはオートファジーを伴う細胞死が深く関与している可能性があり,一方,心筋梗塞などの虚血再灌流傷害にはネクローシスが関与している.最近筆者らは,オートファジーを伴う細胞死の解析を行っており,またネクローシスを誘導するミトコンドリアのpermeability transition poreを制御することで,虚血再灌流による心筋壊死が緩和されることを見いだしたので,これらの知見を中心に非アポトーシス細胞死と疾患,病態の関与を概説する.
アポトーシスと細胞死異常が引き起こす病態
監 修 三浦正幸
序:細胞死制御による疾患治療
三浦正幸
私たちの体は,細胞増殖・成長・生存・老化そして細胞死のバランスによって維持されている.個体として見ると一見変化のない私たちの体ではあるが,川の流れのごとく,多くの細胞が絶えず入れ替わっている現実があり,このプロセスの破綻が疾患の原因となる.個体レベルで細胞死シグナル経路の操作が可能になってきたことから,細胞死制御系の破綻による疾患治療がより現実的になっている.本稿では生体での細胞死研究から得られた新たな知見と,その成果をもとに疾患の解明と治療に向けた研究をまとめて概説する.
http://www.shujunsha.co.jp/journal/saibo/new.html#
最近の進展
過度のLFN被爆による有害効果に関する科学知識を継続的に強化する事により、以下に記すいくつかの労働仮説(working hypotheses)の仮定を導いた。他の科学的研究チームは、これらの仮説が立証されるか、または否定されるまでこのトピックへの興味を持つべきであろう。
1.超低周波音(<20Hz)は心膜肥厚の比率を明らかに増す。
1999年に、商業用の航空会社のパイロットと夜間乗務員アテンダントは、VAD関連の研究の範囲内での心エコー検査を自発的に受けた。勤務時間は同一にも関わらず、パイロットは、夜間乗務員より心膜肥厚の比率が早い事が判った。(これには男性乗務員も参加していたので性別には関係しない)(23)。コックピットとキャビンの音響分析により、コックピットはキャビンより統計的に著しいレベルの超低周波音があることが明らかになった(32)。コックピットの超低周波音は、高度、対気速度、および航空機の型によって変わるが、コックピットの超低周波音のエネルギーの大半は、気流が航空機の最先端に激突する事に起因していることを示す。
2.LFN暴露は自己免疫疾患を加速する。
これまで論じてきたように、自己免疫疾患〈特に狼瘡〉はLFN患者においては極めて一般的である(23、24、27-31)。炎症性疾患のないVAD患者の心嚢断片において見られる要因のうちの1つは、非アポトーシス細胞死の存在であるかもしれない (17、18、20、21)。
3. LFNは気道(respiratory tract)を狙う。
4人のVAD患者は治療にも関わらず胸膜の流出(effusion)が継続するという典型的な事例であった。これらの事例の内3例は原因不明で、4例目はジフェニルヒダントイン(diphenylhydantoin)※(33)に起因すると思われる。ジフェニルヒダントインが中断された場合でも、回復のための追跡治療(follow-up recovery)期間は非常に長引いた。治療には数ヶ月を要し、また、回復は、単に、遅く不規則なだけではなく、病因論的にも治療の選択においても如何なる結論にも達していない。1987年の死体解剖において、巣状肺線維症が確認された。しかし、この人の勤務環境に当然、化学薬品、煤煙、塵が存在すると思われるため、この発見は何ら重要ではないとされた。1992年に、依然胸膜の流出と言う不可解な事例に関心を持ち、動物モデルでLFN被爆による気道反応の研究をした。LFNに被爆した齧歯類において、気管の繊毛の量が目に見えて減り、そして、次の基準的な変形計量法(formal morph metric)研究によりこの特徴が確認された(34)。気管の上皮下線維症(sub epithelial fibrosis)の存在を確認した(19)。肺実質の構造の変化としては、肥厚した肺胞壁の不規則な並び、拡張肺胞(dilated alveoli)、線維巣(fibrous foci)の不規則な並びが挙げられる(19)。胸膜の細胞は食細胞(※)性(phagocytic)の能力を失い、胸膜頭頂葉(the pleural parietal leaflet)は、中皮細胞ごとに微絨毛の数が際だって減少した(35)。後に、呼吸器の症状のあるなしに関わらず、LFNに被爆した労働者に肺の呼吸機能テストと高解像度CTが実施された。肺線維巣症とエアー・トラッピング※が、呼吸器の症状とは関係なくこれらの労働者において確認された(36)。他の研究者は、大きい振幅のLFN音により、せきこみ、ゲーゲーしたい感覚、および胸壁圧迫を含んだ呼吸系への即座の自覚的な影響があると述べている(37と38)。騒音と呼吸器官の詳細な検討は別に報告されている(39)。
※フェニトイン(ジフェニルヒダントイン)
抗てんかん薬(フェニトイン系)
てんかんの痙攣発作、自律神経発作、精神運動発作に適応
【注意事項と副作用】
●禁忌:ヒダントイン系化合物に過敏症のある患者への投与は行わない。
洞性徐脈、高度の刺激伝達障害のある患者へは注射投与は行わない。
●副作用:皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、SLE様症状、再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、単球性白血病、血小板減少、溶血性貧血、間質性肺炎、リンパ腫など
※食細胞(白血球)
体内に菌や有害物質が進入してくると、血液中の食細胞がこれを取り込み、それらの害から私達を守ってくれます。そして、取り込まれた菌や有害物質は食細胞の中で発生した活性酸素に溶かされてしまいます。しかし、菌や有害物質が多いと、逆に活性酸素が増加し、白血球の中から溢れ出し、血管の壁や正常な細胞を攻撃する。
※COPD患者の息切れ・呼吸困難の主たる原因は“air trapping”、すなわち肺に溜め込まれた空気の増大による肺の過膨張(Hyperinflation)であり、そのわずかな改善は大きな臨床効果につながることが明らかになりつつある。
4.LFN被爆は気道の扁平上皮細胞(squamous cell)に悪性腫瘍を誘発する。
今までのところ、VAD患者の呼吸器腫瘍の100%が、扁平上皮細胞癌であった。10人は右肺上葉の上部 (7人の喫煙者)で2人は声門(1人は非喫煙者)である(40)。この仮説は、LFN被爆したWistarねずみの気道上皮の化生※(metaplasia)と形成異常(displasia)の観察により既に確証されている(19と41)。一般被験者では、肺の扁平上皮細胞悪性腫瘍はすべての肺腫瘍の40%を占めている(42)。しかし、癌関連の疫学的研究では通常腫瘍型の崩壊(breakdown)は述べられていないが、これは非常に不運な事である。世界的な癌統計は、腫瘍型の崩壊を無視しては、本質的かつ重要な要素を含まず、どのような詳細な統計研究のために必要な情報を含まない事になり、結果を誤った方向に導いている可能性がある。VAD患者において肺癌の発生は一般にポルトガルの被験者とおよそ同じである。しかし、VAD患者においては、“全て”の腫瘍が右肺上葉の上部に存在し、“全て”が扁平上皮細胞癌である(40)。これは、全ての扁平上皮細胞癌がLFN被爆により引き起こされると言うのでない。なぜなら、もちろん他の因子によりこのタイプの気道腫瘍の出現が引き起こされるかもしれないからである。資料(※)が”示す”ものは、LFNが引き起こす気道腫瘍は全て単一のタイプであり、それは扁平上皮細胞癌であるという事である。
※化生(metaplasia)
化生は一つの成熟したタイプが、他の成熟したタイプに置き換わることをいう。上皮または間葉系細胞いずれにも起こりうる。通常異型性を伴うことはない。
※本文にはdateとあるがdataの間違いではなかろうか?
5. 構造に基づくアクチン(Actin)※とチューブリン(tubulin)※はLFNの特定の目標である。
微絨毛は、蝸牛(cochlear)内の聴覚有毛細胞が立体繊毛(streocilia)であると同様、アクチン長繊維により構成されている。LFN被爆した動物では、蝸牛立体繊毛(cochlear streocilia)と気道刷子細胞微絨毛は融合組織となる(19と43)。最初のアプローチにより、これらの組織の共通性は多少円筒形の指状形らしいことが解っている。しかしながら、気道と心嚢に見られる繊毛はLFNが存在する場合には全く異なった行動を示す。VAD患者の心嚢断片の繊毛は、あっさりと無くなる(17、18、20、21)。LFN被爆した動物の気道には、繊毛は、まるではさみで剪られたかのように見える。そして、実に、これらを捉えたいくつかの画像では明らかに上皮の表面に剪られた繊毛が横たわっている(19)。毛羽立った繊毛と完全に丸禿まで剪られた細胞もLFN暴露された齧歯類において観察された。2人のVAD患者(1人は非喫煙者)において、損傷された気管の繊毛の散乱した範囲が確認され、かつ、多重繊毛軸糸(multiple ciliary axonemes)が同じ膜により取り囲まれているのが見られた(44と45)。
※アクチン(actin)
代表的なものは筋肉の収縮性タンパク質。筋肉に限らず一般の細胞にも存在しており、最も含量の多いタンパク質(全タンパク質の5〜10%)。細胞内では、一部は重合してFアクチンとなる。これはミクロフィラメントと呼ばれる。アクチン結合タンパク質の助けで重合したアクチンは束化したり、網目構造を作り細胞骨格の一部を形成する。また、これらの繊維構造は細胞運動の原動力を発生する装置、運動装置を作る。
アクチンの重合には核形成と核成長の2段階があり、前者が律速段階である。核は三量体と考えられている。
※チューブリン
:細胞が、形を保つ/変える、運動するのに必要な「微小管」をつくるタンパク質
6.個人の感受性は交絡因子※である。
個人の感受性は、初期に、症状の重症度と臨床的評価に影響を与える重要な要素であると確認された(46)。LFN感受性指標を見つけるために、血液や細胞組織のような、いくつかの要素が相性指標(compatibility markers)として査定された。今までのところ公式に確認されているモノは一つもない(2)。LFN過剰環境において懐胎され産まれた動物検体は、例え生後ずっと静かな環境に1年間置いても重度の気道損傷を示す(19と41)。さらに、それらは、LFN過剰環境において懐胎されず単にLFN被爆した動物検体と比較すると行動にも違いがある。それゆえ、妊娠中の母親の状況が、LFNに対する個々の感受性の増大に実質的に関与すると思われる一つの要素(たぶん幾つかであるが)であると疑われる。進行中の研究プロジェクトでは、VADに関するアンケートには現在ではこの問題についての質問を含む。職場でLFN被爆を受ける者を対象としているが、現代の社会ではLFNは至る所に存在するので職場でLFNを被爆しなくとも様々な要素によりLFNを被爆すると言いうる。それゆえ、VADに関するアンケートでは、被験者が、“子宮内”を含み、LFNに曝されうるすべての日常的および非日常的な場所を調査しなければならない。
※交絡因子 confounding factor
典拠: EpidemiologyIntroduction.1ed [, p.101] ,典拠: 医学への統計学新版 [44, p.6,p.240] ,典拠: 丹後:統計学のセンス1版 [32, p.114,p.16] ,典拠: Rothman:ModernEpidemiology.1ed [17, p.89] ,典拠: Lange:Biostatistics.3ed [3, p.176]
概念
暴露要因と統計的に関連しているが、暴露と疾患発生の中間過程にある因子ではない、すなわち暴露の結果ではない ような因子をいう。特に無作為割付が困難な調査では計画時点において比較する群間の背景因子の等質化が難しいため、交絡因子が入りこみやすくなる。これは統計解析にバイアスを持ちこむ原因となり、収集されたデータをもとに層別解析や多変量解析によって調整する必要がある。
例示 たとえば飲酒と喫煙の両方を習慣となすものは多い。 喫煙は喉頭ガンと因果関係があるが、本来は関係のないはずの飲酒が交絡因子として機能して喉頭ガンの原因とみな されてしまう。
7.騒音に対するアノイアンス(annoyance≒苛立ち)は、過度なLFN被爆に対する前兆である。
Wistarねずみにおいては、蝸牛立体繊毛はLFN暴露の反応で溶融するアクチンベースの構造である(19,43)。ねずみは、特に、「(チュッチュッという)投げキス」の音に敏感で、頭をビクッと動かして緊張する。LFN被爆の後では、「投げキッス」をすると、身震いで、後ろ足で立ち、ひっくり返ることもしばしばである。蝸牛立体繊毛の溶解が、もし、人間に起きたとしたら、VAD患者が「私は聞こえすぎる。私はどのような種類の音も我慢出来ない。例え音楽でさえも。」というような異常とも思える聴覚上の苦情の意味を説明する事になるのではなかろうか。もしそれらの間で溶解が起き被蓋膜と癒合したら、繊毛は、蝸牛内で音圧波が変換される際のように、自由に振動するはずはないであろう(43)。実のところ、硬直した組織になる事により、当然のことであるが、どのようにそれらを振動させとしても不快感を生み出すだけであろう。この現象が「アノイアンス」の概念と極めて密接に関係していると言う事は未だに明確になっていない。しかし、既に、LFNの存在がアノイアンスと明確に関連しているのであるから関連性ははっきりと解るであろう。
将来の見通し
LFNが病気の動因としての認識は、患者にとっては幸いな事に既に遠い存在となっている。多くの科学者、医師、そして一般の人々がこの極悪な危険環境に気づき、それをどうすべきかの方法を積極的に追跡している。LFNの影響が研究対象とされれば多くの問題が生じる。
実験対象集団
LFNにより引き起こされる病理と関連した研究の実施に際して最も難しい課題の一つは、胎児の実験対象集団の欠如である。明らかに、LFN関連の研究において、実験対象集団はLFNに“さらされない”人々である。しかしながら、LFNは偏在的に存在するという性質のため、実験対象集団を見つけるのは容易ではない。実験対象集団の不十分な選択により矛盾した結果を起こしている(48)ので、この問題に正面からまともに取り組むことが妥当である。
LFNは法律で規制されいない。従って、人間社会のほとんどすべての場所で蔓延することが許されている。LFN暴露は肉体労働者に限定されたモノではない。実のところ、LFN被爆は、多くのゆっくりした活動および多くの公共交通網設定の不可欠な部分である。エアバス340のコックピットのLFNレベルは、一般的に、一般公共交通、レストラン、そして、一般乗客の乗物の状況と同程度である(39,49,50)。しからば、適正な実験対象集団の特徴とは何か? 以下の事を考慮して貰いたい:通常どのような研究の実験対象集団でもそれ以前のLFN被爆について調査されない;従って、LFNと言う交絡因子の存在のためどのような研究のどのような実験対象集団でも歪曲される可能性がある。さらに、過度なLFN被爆の全身への影響を考慮し、心肺および自律神経系を割り引く(compromising)と、エラーの程度は重要ではなかろうか。
具体的な事例として、例えばある生産工場でのLFN被爆被験者を中心にすると言う調査で、研究対象の生産工場で単に彼らが作業しないと言う基準で選ばれた実験対象集団は無効である。なぜなら、LFN被爆は私達の日常生活の多くの場に存在するからである(39,49,50)。実験対象集団の不十分な選択の最も見え透いた例はヴィエケス心臓研究である(48)。この場合、LFNに満ちている場所(LFNは軍事教練により発される)に住んでいる人が、別の島に住んでいる人と比較された。別の島に住んでいると言う事と年齢が同じであると言う事が、この研究の実験対象集団の選択のための唯一の基準であった。これは、他の島でLFN被爆が全然存在しないと仮定しているが、もちろんこれは不合理であり、それは公にされた結果により証明されている(48)。今日までに解っている範囲では、LFN研究のための実験対象集団は、VADとの関連性を否定するような基準でテストが行われているので、(すなわち、、炎症性疾患および拡張機能障害を除外しているので、VADに特徴的な心嚢肥厚が存在しない(51))実験対象集団と見なすべきではない。
最後に、動物実験でも実験対象集団が必要であるが、動物の研究において音響環境に注意が払われる事は希である。それゆえ、動物の研究でも、重要な複合要因であるLFNを組み込むべきであろう。多くの動物実験の設備が地階に置かれるという事実は、そこにはLFNの要素が充分に深刻な量に達するほどの状況をさらに悪化させている。もし素晴らしい生化学の経路(pathways)が研究段階で、LFNの存在に注目していないならば、その結果はどれほど信頼できるであろうか?
間違った監視による2つの逸話的物語
OGMA(参照6の注を見る)における技術図面部門は、OGMAに雇用されているが職業的にはLFNに被爆していないと言う点で対象集団とするのに最適に思われた。ここの職歴だけによれば、ある34歳の男性は、VAD患者(3)により得られたと評価と一致する脳の電位は異常な可能性を示していた(3)。彼の知らない、居住地域、交通手段および余暇時間の活動においてLFN騒音源が存在する可能性を調査した。何も確認できなかった。彼の家族と友人に聞いてみると、彼は謹厳で寡黙な人であった。しかし、音がするといつも言葉が攻撃的になるという思いもよらない話しがあった。彼は、音楽はもちろん、VADと見なす他の多くのどのようなタイプの音に対しても耐えられず、「聞こえすぎる」と苦痛を訴えると言う事であった。最近のオーディオグラム(聴力図)は、他のVAD患者の様に低周波帯に損失が有る事を明らかにした。すべての他のVAD関連の診断テストは陽性であった。:脳MRIにより深層の白質のT2に極度の病巣があることが明らかになり、心エコー検査では、僧帽弁(mitral valve)と心膜の肥厚が明らかになった。しかし、彼はどこで騒音被爆したのであろうか? 神経学の調査の間に、初期の(archaic)手掌頤反射(palmo-mental reflex)の存在が明らかになったのであるが、彼はついに、彼の両親は水車小屋を所有、操業し、その上に住んでいたことを述べた。絶えず稼働する水車小屋の低いブンブン音は、彼が26歳まで住んでいた家の中に休み無く続いていた。あいにく、製粉機は以来閉鎖されて、稼働する製粉機の音響の評価はもはや実現不可能であるが。
もう一つの興味深い事例は、過去30年間リスボン銀行で働いている50歳の常勤取締役の場合である。
オフィスの普通のエアコン機器と都市交通を除いて、この人に対するLFN被爆は重要であると考えられなかった。しかし、心エコー検査(ECG)により心嚢および心臓弁の肥厚が明らかにされた。P0.1(Co2)評価は30%未満であった。徴候は全然報告されなかった。彼はどこでLFNにさらされていたのか? 彼はモンティージョ(Montijo)市に住んでいるのだが、その市にはテージョ(Tagus)川が横切っており、酷いラッシュアワー時の車通勤のため約100kmの距離を毎日3時間運転しなければならなかった。彼の車は、ディーゼルエンジン車である。1990年に、彼は、スペイン、北ポルトガル境界のすぐ北のスペインのガリシア(Galiza)で彼の家を修復し、それ以来毎週末、片道約400kmを運転しそこへ行っている。週単位でこの人は、自分のディーゼルエンジン車に乗り1500km踏破している。データによれば、この人のLFN被爆の原因は運転に費やされる莫大な時間であると強く示唆している。彼の具体的な車種での音響研究は今なお進行中である。
VADの誤診断
VADの軽度および中程度段階に含めらる徴候と症状についての最も一般的な論評のうちの1つは、多くの一般的なストレス関連の症候群にそれらが似ているという事である(表1)。通り一遍の視察ではそう思うかも知れないが、より詳細なアプローチにより、これが事実ではないことが証明される。VADは、炎症過程が存在せず、特別な細胞行列の異常な増殖により明確に特徴付けられている。LFN被爆した労働者には、聴覚の誘発反応の変化(53)、並びに、皮質下並びに室周囲白質、大脳基底核(basal ganglia)および脳幹のT2の超強烈なCNS傷害病巣と関係づけられている内在的可能性(endogenous potentials)の変化(11)と同様、コルチゾール(cortisol)の低めの水準と循環ノルエピネフリン(norpeinephrine)※の高いピークが認められる(52)。諸兄、この事実は、医学の文献において報告されたストレス関連の症候群と一致していない。LFN被爆は、同様な脳傷害および認識機能障害と認められている、極度のストレス状況とより類似している(54)。また、播種性血管内凝固※は、噂を信じ、ポピュラーな表現をすれば、「それは身の毛もよだつような経験であった」(55)、と言う極端なストレス状況下の軍事教練中に死亡した若い落下傘兵の検視解剖においてにのみしばしば見つかっている。LFN被爆労働者において、血小板集合体の増大比率は、他のLFNに誘発された病状と供に確認された(56)。それゆえ、今日までに一般的ストレス症候群について知られている事柄に矛盾点を付加出来るので、VADをある一般的ストレス症候群と見なす事は論証的には無理である。
※播種性血管内凝固症候群(DIC)
DICは最も一般的に見る凝固疾患の一つでさまざまな疾患での組織障害によって血管凝固促進物質が大量流出し凝固系の働きが極度に亢進して血小板やフィブリノーゲンが大量に消費され・不足し、結果凝固異常を起こすもので血栓による循環障害と出血が見られます。DICの際には血小板と複数の血液凝固因子の欠乏につれて出血傾向を生じます。血管の止血または血管内皮の障害を生じる病気はいずれもDICの誘発によるものです。
防止
これまでの研究で、研究対象となったLFN被爆被験者の約30%は段階TとUの穏やかな徴候状況を呈し、VADの重度の段階を発現していないことを示している(1,2)。これは、70%が第V段階の障害に進展すると言う事と同等と言うことではない。最も重要な事は、被験者達のさらに職業的な活動をできなくする様な障害の進展を防止する事である。研究では、防止しなければ、LFN被爆従業員の約5%は、早期障害退職に追い込まれるに足る厳しい病状に進展するという事を示している(3)。
OGMAでは、1980から1989までに21人の航空機専門家が、強制的に早期障害退職させられた。1989年に、1987の死体解剖発見に基づく心エコー検査(ECG) 結果のすぐ後に、遮蔽および監視医学の手順(protocol)がLFN被爆されたすべての人員のために開発された。すべての就職内定者は心エコー検査を規定通りの身体検査の一部として受けた。もし心臓の構造の先在肥厚が確認されるならば、就職内定者は、LFN過剰環境の可能性のある仕事には雇用されないであろう。OGMAですでに働いていたすべてのLFN被爆した従業員は、年間の心エコー検査を受けはじめて、内因性の誘発可能性、および血圧が綿密に監視された。もし、LFN被爆した労働者が、心臓の構造の非常な肥厚、および/またはP3における内生のコンポーネント(?)の前頭骨前面への移動、および/または血圧のコントロールの困難および不安定(変化を起こしやすい)な場合は、LFNの多い環境から、別のLFNの多くない仕事場に移動させられた。1989-1996からはLFN暴露された人員の間では強制的な早期障害退職はゼロであった(3)。
回復期間は、LFNにより引き起こされた病理に対するどのような防止プログラムにも必須の部分でもあるはずである。LFN過剰の環境内で通常の8時間より多く居なければならない人員のために、拡張回復期間、すなわち、LFN過剰の環境から遠ざかる期間は、義務的でなければならない。LFNの伝播を妨げる音響の素材は、世界のいくつかのチームにより開発されており、将来的には、この病気の媒介物から労働者を保護する回答が提供されるであろう。最後に、これは強く強調されるべきであるが、LFN被爆の累積効果により起こされるLFN誘発病理の進展は、原因が職業的なモノであろうとそうでなかろうと、生物学的有機体と無関係である。さらに、VADの進行は、人が晒されるすべてのLFN過剰環境は、それが職業的なモノであろうとなかろうと、環境的なモノであろうと無かろうと余暇時間のモノであろうと無かろうと、そこから受ける全体的被爆と直接的に関連があるであろう。
服用反応(Does-Responses)
LFN被爆に対する(薬の?)服用反応は未だ確立されていない。服用反応の評価をするには病気の存在が容認されなければならないのであるが、これは倫理的でも、論理的でもなく、行動の手順の問題でもないように思われる。実は、前述した遍在的な本質を考慮すると、LFN被爆した人の服用反応評価をする事は、威圧的な仕事なのである。LFNを評価するために明確に意図された線量計はまだ開発されず、これまでに言及されているように、法的に制定されている騒音評価手続はLFNを危険なモノとして熟考していない。従って、人間のためのLFN服用反応評価は、恐らく、向こう数年(そしてユーロでも)は先の事である。しかし、LFN被爆した動物実験では、服用反応への洞察は、すでに得られている(19)。48時間継続的にLFNに曝さらされた後、最高7日間静寂の中で飼われたWistarねずみでは、7日間の被爆後に静寂に置いたモノと被爆がコントロールされたモノでは上皮細胞が区別がつかなくなっただけである(19,57)。LFNの中で妊娠し、誕生し、その後1年間静寂の中で飼われたWistarねずみは、その後静寂の中にいてもなお気道上皮に眼に見える劇的な損傷を示している(19と41)。特に、多くの女性労働者が妊娠期間中にLFNが過剰な環境で働いている場合を考えると、これらの研究の意味するところは広範囲であり、彼女たちを擁護する。
服用反応の最終的な注として、異なる有機組織は、異なる音響特性を備えていること、すなわち、肺組織の音響のインピーダンス(※)は肝臓のそれとは異なり、脳の共振周波数は膀胱のそれとはと違うと言う事を認識しておかなくてはならない。従って、服用反応は共振対象の周波数に基づいて設定されなければならない。超低周波音(<20Hz)が卓越するLFN環境での労働者には、50-100Hz範囲で音響エネルギーが集中的に卓越する環境において働く人とは少し異なる病理学的特性が展開されるであろう。従って、服用反応の問題はいつも慎重に臨まなくてはならない。
※インピーダンスとは回路に交流電流を流した際に生じる抵抗(交流抵抗)のことで、スピーカーのようにコイルを持つ回路に交流電流(音の信号)を流した際に生ずる抵抗値を表します。生物化学的にはどういう意味あいを持つのかは不明であるが、簡単に言えば抵抗反応の仕方と考えれば良いでしょう。
議論
VADは、LFNの職業的原因に曝さらされない一般被験者のメンバーにおいても診断されている。今日までの最も衝撃的な事例は、リスボンの郊外に両親と住んでいる10歳少年のモノである。彼らの家は、Tagus川を眺め、川を挟んだ真反対側には生産工場が位置していた。2003年まで、この工場は、昼夜関わらずいつでも操業する事を許されていたので、一日中操業する事もしばしばであった。過去12年の間この家に存在したLFNは、ほぼ間違いなく、家族全員のVADの原因であると診断される。奇妙な事に、心臓構造が最も肥厚しているのは10歳の息子であるが、それは、ほぼ間違いなく、彼の被爆が子宮内で開始したからであろう(58)。もしこの子供が、LFNの被爆を伴う職業を選択したら、最も不運であろう。LFNは病気の動因と未だ認められていないので、それを和らげるため何らの努力もされていない。従って、LFNは現代の社会のほとんどすべての分野での蔓延が許されている。この事実は、LFNに関連する、あるいはLFNに無関係である研究のための実験対象集団の選択と言う問題を生み出し、LFN履歴が患者で全然採集されず、研究グループと動物のモデル実験においてLFNに注意を払わずに、LFNの存在に帰されうると言う調査生物学の成果はまた別問題である。同時に、LFNに被爆した労働者に何らの保護も全くもたらされず、LFNにより引き起こされる病理の大規模な研究も公にされていない。これは耐え難く、極めて非倫理的な事態である。
謝辞(acknowledgements)
筆者は我々の研究に自主的に貢献してくれた全ての患者に感謝したい。また、マリアナ アルベス-ペレイラはIMR(Instituto do Mar)のPOCTI/MGS/41089/2001-ホスティング・プロジェクトとFCTの資金援助に感謝する。
出典(references)
※58の資料等が上げられていますが、そのほとんどは日本では容易には入手困難と思われるので割愛します。
必要な場合は原典のP281〜284を参照して下さい。
※この研究に関しては@音圧が強すぎて参考にならない特殊な例であるとか、A限られた特殊集団であるとかの批判が”国内外の学会専門家”達からあり、科学的知見としては認められていない。しかし、航空機乗務員の健康に係わる疫学研究等に見るように元々特殊な職場であれば、それなりの特殊な健康被害が起き、単純に言えば、それが職業病だ。
昨今の原発による一般人への低線量長期被爆についても参考となるモノが無く、詰まるところ高線量短期被爆の広島、長崎のデータを援用しているのであるから2枚舌、三枚舌の"専門家"が言うところの非科学性こそ非科学的であろう。
最後まで読んでくれて有難う。(管理人・訳者)
060720