公害等調整委員会の”新しい動き・係属紛争事件一覧

まるで”騒音・振動特集”


 久しぶりに公害等調整委員会「新しい動き・係属紛争事件一覧」を見てみたら、まるで「騒音・振動特集」ではないかと思うほど、騒音関係一色である。上げられている項目の内、騒音・振動関係でないのは2件のみである。更に、その内4件が低周波音被害を直接訴えているが、BCEHも低周波音が関係しているのではないかと私的には想像する。

 数年前以前の公害等調整委員会における、低周波音に関する係争など年に一つあるかどうかと言うような状況で、長い低周波音被害の歴史の中でも低周波音に係わる係争など多分数件のはずである。それから思えば、隔世の感である。

 ”たかが騒音”被害に対する「意識・認識」が高まってきたことの証拠であろう。環境関係者の間では、公害問題の流れは「これからは化学公害から感覚公害に行くであろう」と言われて久しい。やっとそれが現実のものになってきたかの感のする昨今の「係属紛争事件一覧」である。

 特に、超マイナーだった低周波音被害の訴えが増えているのは、何よりも被害そのものが身近に増えてきていることが事実であろうが、低周波音被害とそのものに対する認知度が風車騒音問題に関連して報道されることにより、急激に高まったと考えられる。

  「低周波音」という言葉のマスコミへの出現回数は、過去30年以上にわたる低周波音問題の歴史上で、この1,2年の出現回数は、それまでの全てを遙かに上舞っているはずである。もちろんそれは風車騒音問題に伴ってではあるが。個人的には、風車騒音問題により、これまであくまで個人的問題として行政から門前払いを喰わせられていた低周波音問題が新たな局面から門戸が開かれる事を切に願ってやまない。

 もちろん、国は依然として、低周波音問題を黙殺し続けているが、「係属紛争事件一覧」で観るように、@工場騒音、工事騒音、ポンプなどの”古典的低周波音問題”は依然として発生し続け、A新たに、風車、携帯基地局などの低周波音問題被害の訴えがでてきている。こうした被害は広範に及び、孤立した個人ではない場合が殆どだから、国もこれまでのように、「他の人はどうもない。あんた一人の気のせいだ」などと個人的資質のせいにするような事はすまされなくなっている。
 だが、これらの原因が低周波音であるとすれば、結局"専門家"として出張ってくるのは、これまで「参照値」で全ての低周波音被害者を門前払いにしていた"低周波音専門家"であるので、再び、これまでのように「あんた一人」「気のせい」論が通るかどうか注目である。

 こういった事実を前にすれば、さらに多くの同類の申請が出てくる可能性がある。行政としては(公害等調整委員会は決して”第三者的裁判所”ではない。あくまで行政・国のポチ的存在であることに間違いはない)あくまで、低周波音被害をダーダーに認めるようなことはないであろう。そんなことをしてはそれこそ「どえりゃー事」になってしまうので、これまでの方向性と同じく、低周波音被害者を言いくるめ、突っぱね、被害を認めない方向に向かうはずである。
 
 だが、一応中立的立場である委員達は、複数の被害の現実の事実を突きつけられても、これまでの様に「科学的知見がない」などと言い続けるであろうか。しかし、それは、これまでのように被害者を嘘つき呼ばわりすることであり、これまで、片寄った「科学的知見」を蓄積してきた"専門家"の怠惰と傲慢とポチ的志向性とそれと相まった国策を明らかに支持することであり、自らを紛う事なき「行政・国のポチ」であることを明らかにすることではある。
 
 詰まるところ、低周波音問題は「国策的似非科学的知見と被害者の存在という事実の闘い」と言うことになる。
 
 まるで、他力本願だが、正直、とにかく低周波音と言う極悪モノとそれをあくまで守ろうとする低周波音"専門家"の知見を、真の科学の俎上に乗せるには一人一人での孤独な闘いではとても及び得ない。是非とも勝って欲しい。

 久しぶりに公害等調整委員会のサイトを見ていて、公害等調整委員会と言うより、騒音・低周波音問題の処断が法的専門家的にはどういった考え方でなされるかがそれなりに解る文が載っていたので紹介しておきたい。公害苦情相談における「スジ」と「スワリ」−騒音・低周波音の事例を素材として−東京地方裁判所判事 河村 浩


係属事件 新しい動き(平成21年度)

@● 播磨灘における養殖のり被害責任裁定申請事件を平成21年7月22日に受け付けました。
 被申請人が操業する火力発電所から排出された温排水により、申請人らが受けた養殖のりの被害について賠償を求めた事件です。

A● 静岡県東伊豆町における風力発電施設からの低周波音による健康被害原因裁定申請事件を平成21年7月21日に受け付けました。
 申請人らに生じている健康被害は、被申請人が稼働させている風力発電施設から発生する超低周波・低周波騒音に起因するものである、との原因裁定を求めた事件です。

B● 成田国際空港航空機騒音調停申請事件を平成21年7月17日に受け付けました。
 航空機の運航による騒音の解消、申請人の居住地区上空飛行の差し止め、損害賠償を求めた事件です。

C● 神栖市における騒音・振動による健康被害原因裁定申請事件を平成21年7月8日に受け付けました。
 申請人が受けている健康被害等は、被申請人が所有する機械から発生する騒音・振動によるものである、との原因裁定を求めた事件です。

D● 深谷市における工場操業に伴う騒音・低周波音被害責任裁定申請事件を平成21年7月3日に受け付けました。
 被申請人が操業する工場の騒音と低周波音により、申請人が受けた健康被害等について賠償を求めた事件です。

E● 横浜市におけるマンション受水槽撤去工事騒音被害等責任裁定申請事件を平成21年7月2日に受け付けました。
 被申請人が行う工事の騒音により、申請人が受けた健康被害等について賠償を求めた事件です。

F● 三原市における低周波音による健康被害原因裁定申請事件を平成21年6月25日に受け付けました。
 申請人が受けている健康被害は、被申請人らが経営又は所有する施設の自動給水ポンプ等から発生する低周波音によるものである、との原因裁定を求めた事件です。

G● 仙台市における土壌汚染・水質汚濁被害原因裁定申請事件を平成21年6月17日に受け付けました。
 申請人が所有する土地における土壌汚染等の被害は、被申請人が所有する隣接地の汚染及び当該隣接地において被申請人が行った事業活動等によるものである、との原因裁定を求めた事件です。
  
H● 北九州市における解体工事振動被害等責任裁定申請事件(2件)を平成21年6月9日に受け付けました。
 被申請人が行った解体工事の騒音や振動により、申請人らが、健康被害を受けた、又は所有し管理するホテルが被害を受けたとして、その損害について賠償を求めた事件です。

I● 鎌倉市における振動・低周波音による健康被害原因裁定申請事件(2件)を平成21年5月27日、平成21年6月30日に受け付けました。
 申請人が受けている健康被害は、被申請人が設置した携帯電話の基地局ならびに付帯設備から発生する振動と低周波音によるものである、との原因裁定を求めた事件です。

J● 八代市における製紙工場振動被害責任裁定申請事件が平成21年5月25日に終結しました。 平成19年3月19日に受け付けた八代市における製紙工場振動被害責任裁定申請事件は、平成21年5月25日、調停が成立し、終結しました。

K● 高崎市における騒音被害責任裁定申請事件が平成21年4月27日に終結しました。
 平成21年3月19日に受け付けた、高崎市における騒音被害責任裁定申請事件は、平成21年4月27日に申請人らから申請を取り下げる旨の申出があり、終結しました。

(太字・番号は筆者)

090904


 このページをアップロードした直後、汐見先生からAに関して

 「風力発電施設からの低周波音による健康被害原因裁定」としては初めてであり、低周波音問題に関し、「何の知識を持たない第三者に理解してもらうために、1974年の低周波音問題出発点から今日までの、この国のウソとごまかしの経緯を記述することが、この問題を理解してもらうのにもっとも有用であろう考えつきました。」としてこの裁定に対して「風力発電機による住民被害を追って」とした46ページにわたる冊子形の「意見書」が送られてきました。

 それには「ご活用下さい」とあり、冊子には、出版社、定価が無いので販売を意図したモノでなく純粋に関係者に配布される目的のモノのようです。また、私が「活用する」と言うことは情報をより多くの人に知ってもらい、情報を共有するようにすることだと考えていますので、全文をネット用に変換し、掲載します。



東伊豆の風力発電施設:風車で健康被害、因果関係認めず 公害調整委で会社側 /静岡

 東伊豆町奈良本にある民間の風力発電施設をめぐり、近くの住民が「風車の出す低周波音で健康を害した」として因果関係の認定を求める原因裁定の第1回審問が10/03/12日、公害等調整委員会(東京都千代田区)であった。風力発電の低周波音をめぐって同委員会が開かれるのは初めて。

 申請したのは、同地区の三井・大林伊豆熱川温泉別荘地に住む男女11人。発電施設は、風力発電会社「クリーンエナジーファクトリー(CEF)伊豆熱川ウインドファーム」(東伊豆町、鎌田宏之社長)が運営している。

 申請書などによると、同地区の尾根沿いで08年1月から、風力発電機10基(支柱の高さ約65メートル)が稼働。350〜800メートル離れた住民に頭痛やめまいなどの症状が出たと主張している。

 初審問で住民側は「風車が停止したときには体調が戻った」と陳述。会社側は、周辺で調べた音に関するデータなどを提出し「低周波音と健康被害の因果関係は認められない」と主張した。裁定委員は5月以降、現地で調査や裁定を行う予定。【竹地広憲】


 会社側の主張は予想通りです。ただ、会社側が”「低周波音と健康被害の因果関係は認められない」と主張した”のなら、住民の健康被害は一体全体何が原因なのかと言った方向へ発展させることは出来るのであろうか。もしそれが出来ないなら、「風車の出す低周波音で健康を害した」と原因を”特定”したのは非常に拙い方法である。あくまで、健康被害を訴え、被害原因を公害等調整委員会に特定させる方向性をとって置くべきであったと考える。いずれにしても、今後の進展が待たれる。

 なお、この件に関し、「低周波音症候群被害者の会」代表の窪田氏より”公害等調整委員会に於ける「低周波空気振動被害」の処遇について”として、「低周波空気振動曝露の特殊性を考えて、一刻も早く「低周波音曝露対策推進会議」を内閣府に設け、各省を総動員して、この問題の解決に臨むべきです。」と結論する”檄文”とも言える意見が寄せられています。

100508


係属事件 新しい動き(平成22年度)

神栖市におけるヒ素による健康被害等責任裁定申請事件(2件) 1 ?18. 7.24
2 ?20. 9.29
上尾市における騒音・低周波音被害責任裁定申請事件 3 ?18. 8.17
和歌山県美浜町における椿山ダム放流水漁業被害原因裁定申請事件 4 ?18. 9.22 22. 6. 1棄却
足立区における鉄道騒音被害責任裁定申請事件 5 ?20. 8.13 22. 4. 2棄却
筑紫野市における産業廃棄物処分場による水質汚濁被害原因裁定申請事件 6 ?20. 9.12
東京都23区における清掃工場健康被害等原因裁定申請事件 7 ?20. 9.30
鎌倉市における振動・低周波音による健康被害原因裁定申請事件(2件) 8 ?21. 5.27 22. 8. 2棄却
9
北九州市における解体工事振動被害等責任裁定申請事件(2件) 10 ?21. 6. 9 22. 4. 9調停成立
11
仙台市における土壌汚染・水質汚濁被害原因裁定申請事件 12 ?21. 6.17
三原市における低周波音による健康被害原因裁定申請事件 13 ?21. 6.25 22. 9. 8棄却
横浜市におけるマンション受水槽撤去工事騒音被害等責任裁定申請事件 14 ?21. 7. 2 22. 4. 5棄却
深谷市における工場操業に伴う騒音・低周波音被害責任裁定申請事件 15 ?21. 7. 3
静岡県東伊豆町における風力発電施設からの低周波音による健康被害原因裁定申請事件(2件) 16 ?21. 7.21 23. 2. 8申請取下げ
17 ?21.11. 9
播磨灘における養殖のり被害責任裁定申請事件 18 21. 7.22
神栖市における騒音・振動による健康被害原因裁定申請事件(平成21年(ゲ)第8号) 19 ?21. 8. 5 H22. 6. 7棄却
熊本県南関町における道路工事による水質汚濁被害原因裁定申請事件(2件) 20 ?21. 9.18
21 ?21.10. 8
横浜市におけるマンション高圧受電設備からの低周波音による健康被害原因裁定申請事件 22 ?21.10.30 22. 9.24申請取下げ
東広島市における工場騒音による健康被害等責任裁定申請事件 23 ?21.11.13 23. 3.22棄却
横浜市における飲食店・道路からの低周波音による健康被害原因裁定申請事件 24 ?21.11.16
入間市における工場騒音被害責任裁定申請事件 25 ?21.11.20
高崎市における給湯器騒音による健康被害原因裁定申請事件 26 ?21.12.10
渋谷区におけるマンション騒音による健康被害等責任裁定申請事件 27 ?21.12.24
熊本県大津町におけるマンション給排水設備等からの騒音等による健康被害等責任裁定申請事件 28 ?21.12.24 23. 2. 7棄却
大田区における工場騒音・低周波音による健康被害原因裁定申請事件 29 ?22. 4. 1 22.10. 6調停成立
神埼市における水利工事による振動被害責任裁定申請事件 30 ?22. 4. 5
福岡県遠賀町におけるペット火葬場大気汚染等による健康被害等責任裁定申請事件(2件) 31 ?22. 4.28
32 ?22.10.25
島根県吉賀町におけるトンネル工事によるヒ素汚染漁業被害原因裁定申請事件 33 ?22. 5.17
文京区におけるマンション工事による振動被害原因裁定申請事件 34 ?22. 5.27
宮崎市における道路工事による土壌汚染被害責任裁定申請事件 35 ?22. 6. 2
宮崎市における交通騒音による健康被害等責任裁定申請事件 36 ?22. 6.29
文京区におけるマンション解体工事による振動被害等責任裁定申請事件 37 ?22. 7.23
葛飾区におけるマンション工事による振動被害等責任裁定申請事件 38 22. 7.23
中野区における道路換気所からの低周波音による健康被害等責任裁定申請事件 39 ?22. 8.20
葛飾区における電気通信設備からの騒音等による健康被害原因裁定申請事件 40 ?22. 9. 9
小平市における公衆浴場煙突からの大気汚染による財産被害等責任裁定申請事件 41 ?22.10. 7
川口市における住宅工事に伴う大気汚染等による健康被害原因裁定申請事件 42 ?22.11. 8
多摩市における道路交通振動による財産被害等原因裁定申請事件 43 ?22.11.12
鎌ケ谷市における医療施設からの騒音等による健康被害原因裁定申請事件 44 ?22.12. 2
松戸市における建設工事からの騒音による慰謝料等責任裁定申請事件 45 ?22.12. 6
焼津市における金属加工場からの振動・騒音による慰謝料責任裁定申請事件 46 ?22.12.27
宮古島市における海中公園工事による水質汚濁被害原因裁定申請事件 47 ?23. 2. 4
千代田区における鉄道等からの騒音被害責任裁定申請事件 48 ?23. 2.21
寝屋川市における廃棄物処理施設からの大気汚染による健康被害原因裁定申請事件 49 ?23. 3. 1
中央区における飲食店からの騒音被害原因裁定申請事件 50 ?23. 3. 2
島原市における養豚場等からのし尿による水質汚濁被害原因裁定申請事件 51 ?23. 3. 7 新規24−10
芦屋市におけるマンション工事からの騒音・振動による慰謝料等責任裁定申請事件 52 ?23. 3.10 騒音23

(太字・番号は筆者)



 こうした表だった「係争、紛争」にはならないが、被害者の気持ちを如実に表しているのは新聞にいつもながら”犬に人が噛みついた”並のトンデモ事件的に扱われるこれらの「騒音で殺人or殺人未遂」事件である。加害者らが本当に真剣万剣に騒音源を憎んでいるであろう事は理解できる。我慢していても誰も手を差し伸べてはくれない。かといって常々文句を言っていればいたで、orズーッと我慢してある日突然ぶち切れたかの如く、加害者に当たれば、世間からはと言うより警察やマスコミから「キチガイ」として袋だたきに合う。騒音被害者はじっーっと我慢するか、そこを逃げ去るしかないのか。

 こうした事件の加害者のその後の話が表に出てくるようなことはほとんど無い。不条理な話だ。



最後まで読んでくれて有難う

090909,100312,100508,100823,110209,110617


低周波音問題には"使えない"公調委 風車騒音とエコキュート騒音裁定公害等調整委員会から相次いで取り下げ 110820


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