科学の欺瞞再々

エコキュートの騒音は(理論的には)成田空港周辺並み騒音


1.低周波音最大97.5dB
 
 過日、汐見先生から琉球新報の「低周波音 最大97.5デシベル」と言うニュース(07/06/02)のコピーを頂いた。もう、超ビックリなんて言うモノではない。私のびっくり度は100dB超である。私が整理記者だったらこの後ろにビックリマークを3つ以上は付けるところだ。

 これを知らぬは私だけではないと思うが、それは一にどうも本土の”全国紙”という新聞は、そのフィルターで削除されてしまうモノが多すぎるようだ。沖縄基地のニュースなど国との関わりに於いては採り上げられるが、基地本体の問題としての取り上げは、沖縄の新聞と比べると本土の新聞はさっぱりである。もちろん沖縄に関して沖縄の新聞が詳しいのは当たり前と言ってしまえばそれまでなのだろうが、やはり沖縄は「琉球国」であって日本国ではないのではなかろうか。


2.うるささ指数WECPNLの欺瞞

 航空機騒音と言うことで、インチキ指数 WECPNL(一般的には”W値、うるささ指数”と言うが)を思い出してしまった。既に多くのサイトで問題視されているので今更とは思うのだが、この逆転現象に関しては例によって日本騒音制御工学会が何が何だかよく解らない数式を使った言い訳説明を平成182月に延々としているのを知った。この説明で成田の人たちは納得or理解できたのであろうか。

 今回は、それはひとまず置いて、騒音に対してこれからの環境省の方針という総量暴露と言う点から素人として触れておきたい。

   
 「成田空港から郷土とくらしを守る会」WECPNLの問題点というサイトに次のような問題が提起されている。


 4.重要な問題点なので、もう一度複習してみます。あなたは、次の組合せのうち、どの組合せがうるさく被害が大きいと考えますか? 
 耳の感じは、大きいか同じかやっと聞きわけられるのが3ホン、倍大きいと思うときが10ホンの差です。

(イ)平均70ホンのジエット機が一日200
(ロ)平均73ホンのジエット機が一日100
(ハ)平均76ホンのジエット機が一日50
(ニ)平均79ホンのジエット機が一日25

 ほとんどの方が、音が少ししか小さくなく、回数の多い方をうるさいと考えるでしょう。うるささとの関係がよく調べられているイギリスの評価方式NNIで算定すると、うるささの順は(イ)→(ロ)→(ハ)→(ニ)です。
 ところが、WECPNLでは、どれも同じ70WECPNLとなってしまいます。うるささ指数のWECPNLが同じだからというだけで、同じ対策となると、被害感覚とはずれ、行政の公平さが期しがたくなる。


 この(イ)から(ニ)について、継続時間数が出ていないので解らないが、飛行機の離発着に要する時間で近辺での騒音時間を想像するに、この騒音に影響されている時間をひとまず5分間として、かけ算をしてみよう。すると以下のようになり、騒音のエネルギー量の違いから、イギリスの評価方式NNIと順番は同じになり、NNIの論理性の裏付けがなされる。

ホーン

回数

継続時間

総継続時間

総暴露量

70

200

,000

70,000

73

100

500

36,500

76

50

250

19,000

79

25

75

,875

39

96

※480

18,720

 人間の煩さに対する感覚を考慮したとするWECPNL方式では、上表の70,0009,875迄の数値が、人間の”うるささ”感覚で同じとしてしまう、WECPNLの計算方法は手品としか言いようがない。私は、素直に、単純に”騒音科学”の詐欺・欺瞞と言うべきであると思うが、あなたは如何であろうか。

 さて、上表には(ホ)と言う行が付け加えてある。賢明な皆さんなら何を意味しているかお解りであろう。
 
 そう、(ホ)は騒音が静かどころか”ほとんど聞こえない”とするエコキュートの騒音39dBの場合である。ホーンとデシベルはこれまた学者にかかると「違う」と言われてしまうだろうが、マー、素人的には似たようなモノとしましょう。今時わざわざホーンを使っているのは航空機騒音か古い知識のママの人ではと思うのだが。エネルギーの視点からdBになったそうですから、むしろ、航空機騒音に関しては何か意図的なモノさえ感じてしまう。

 数字の480と言うのはエコキュートのタンクの水をお湯にする夜間の稼働時間8時間(この時間は基本的にどの機種も同じらしい)を単に分(ふん)に直したモノです。回数の96と言うのは単なる比較のために単純に5で割り算(480÷5)してみたモノです。

 で、”専門家”が仰るように、「音と振動は物理的には同質のモノ」であるとすれば、低周波音が聞こえようが聞こえまいが「エネルギー」はあるわけで、実際、聞こえない音でも振動エネルギーは有るわけで、エネルギー自体が「無い」わけではない。従って、上表の「総暴露量」をひとまず「振動の総エネルギー量」と考えてみると、WECPNLで(イ)から(ニ)が同じであるとするならば、
エコキュートもWECPNL的理論では成田空港周辺並みの”騒音”がしていることになる。

 ここで、”専門家”的には、「だから、素人は解っていないんだ。WECPNLは飛行機の騒音が煩いから「わざわざ」”うるささ指数”としてあるではないか。エコキュートは”元々”うるさくないんだから勝手に”うるささ指数”のWECPNL何か当てはめるな」と言われそうだ。とマー、場合と都合により、ある時は一緒であったり、またある時は別物であったりと、かくもまー、都合良く基準を変えらえ振動エネルギーも「科学的」と言う理論の前では大変なのではなかろうか。
 
 エコキュートの宣伝を見ればお解りの様に「地球環境やお財布にも
やさしい」と言っており、確かに「地球環境に優しい」のは良いのですが、「財布にもやさしい」というのは非常に疑問で、この点に関しては拙サイト「"科学的"知見の欺瞞 静音化、低騒音そして参照値」を参照頂きたい。もちろん低周波騒音被害者にとっては「人間環境」的にも決して「優しく」はない。


3.マスゴミ

 去る07/05/18に起きた「愛知県長久手町の発砲立てこもり事件」の際は、事件そのものについては置いて、我が家は現場から直線にして5kmくらい離れているのだが、各社の取材ヘリが18日は事件発生から、日が落ちる午後7時過ぎまで、19日は夜明け(午前6時くらい)とともに、元妻が逃げ出すまでの午後3時頃までの間、5分〜10分間隔で我が家の上空まで飛んできていた。

 低周波騒音被害者にとってヘリの轟音は最悪音の一つで、私はこれまでもヘリの音の辛さについては述べてきたが、当日は、ヘリは現場上空で延々とホバリングしているわけにはいかないので、現場とちょうど我が家の近辺までの間を何機かが往復して旋回していたのである。多分現場での動きを各社が偵察していたのか、或いは、捜査陣が一気に流れ込むシーンでも撮ろうとでも考えていたのであろう。

 名古屋東部の現場近辺は“西南北”は住宅の多い地域なので、比較的過疎な東の我が家の方に飛んできたのであろうが、そこに住民がいないわけではない。多分もし、騒音に対する苦情電話があってもその数を減らしたかっただけのことであろう。

こういった事件が起きる度に取材ヘリが周辺住民に撒き散らす騒音被害は無意味で傲慢なモノであると言うことをマスコミは全く認識していないのであろう、等と言うことは無く承知の上での事なのであろうが、少なくともヘリの操縦士は仕事であるからヘリの騒音は騒音には聞こえないはずだ。
 上空からの映像がどうしても必要なら合同取材機1機飛ばせば済むのである。結局
TVで流れた上空からの映像は、撃たれた警官が延々5時間以上に渡り放置状態にされていた映像だけだった、と思う

マスコミ・ヘリの横暴は警察でも制止できなかったのだから一般住民の願いなど聞く耳は全く持たないのであろう。私もこの日は思わず“2ちゃんネラー”ウオッチャーになっていたが、そこでは「マスゴミ」が”普通名詞”となっていた。

と、身近の最近の「航空機騒音事件」を述べたが、これはたかだかたった2日間のこと。それでも私は随分苦しかったが、しなければならないことが有ったので家に仕方なくいたのだが、沖縄の基地周辺ではこう言ったことなど比較にならないような事態が毎日起きているはずなのである。犯人が近隣住民に与えた迷惑被害は言うまでもないが、この時の近隣住民の心理状態+飛行機の轟音が「その現場に住む“心理的な不安”」に近いのではなかろうか。

先日のNHKニュースで基地周辺の家の轟音が余りに酷く「政府の手で」玄関の引き戸が2重にされているのを報道していたが、基地の轟音はそんなことで収まるはずはない。止めは、住民の方が、騒音性難聴になっているが、「国は基地の騒音と難聴の因果関係を認めない」と言う事である。

おかしな話しかも知れないが、低周波騒音被害者になる前で、「公害の仕組み」を知る前なら、素直に「信じられない!」と怒ったであろうが、今なら「やっぱりね。そうでしょう」と思ってしまう自分が怖い。


4.問われる「参照値」の実証性

 話しを航空機騒音のWECPNLに戻すが、工場での騒音規制を始めとして国が定める環境基準の類には「科学的知見が無い」とか、最近の裁判では「方法論が確立しているとは言い難い」と言う尤もらしいが、要は「知ーーーらない」と言うことである。当に、低周波音の健康への影響もこういった状況が30年以上も続いている。従って、こういった場合には、現実的に規制する方法は一切採られることはなく、被害者はその状況とと供に放置されれている

 しかし、それでは余りに拙いと環境省も思ったのか、"現実の低周波音被害を認めないための数値"として出したとしか思えないような現実的には絶対有り得ないようなハードルの高い数値の「参照値」なるモノを示した訳である。

 しかし、「事実は”科学”より奇なり」で、「普天間爆音訴訟検証」において、航空機騒音訴訟の低周波音の測定は全国で初めてという現場検証で司法の場の人間(沖縄地裁の裁判長)立ち会いの下に低周波音測定をしてみたら、何と、環境省お薦めの「参照値」を上回る97.5dB(因みに「参照値」では10Hz-92dBで影響があるとしている)と言う”記録的な測定値”を記録したわけである。これは、謂わば「瓢箪から駒」以上の話しなのである。

 この検証の際には「CH46ヘリやH1Wヘリが現場周辺を旋回していた」と言うのであるから、工場の騒音測定をする際には工場側に知らせると騒音源の騒音を小さくしてしまい、現場検証的測定値は通常より相当小さくなってしまうのだが、で、秘密測定が必須となるのであるが、そう言った姑息なことをしない米軍の”公正さ”と言おうか、傍若無人振りと言おうか、ソレがどうしたと言うような”立派な”態度が想像できるわけである。その結果、当に現実がしっかり反映してしまった訳である。

 従って、この度の測定で、環境省としては、「実際に影響が出ている場所で、私どもが影響があると言っている数値以上の測定値が実際に出た」わけであるから、本来なら、「参照値」の有効性が明らかに証明されたわけであり、環境省としては胸を張って、「そうでしょう。やっぱり出るべき所では出ているでしょう。基地での騒音の原因は低周波音なんですよ。”参照値”はやっぱり正しいでしょう」と誇り、環境省(=国)は自ら定めた数値により低周波音の影響を認めなくてはならないはずだ。それでこそ、「参照値」は本来の意味をなすはずだ。

 だが、裁判でそうなるかどうか、あるいは環境省や国交省が素直に認めるかどうかは極めて疑問だ。
 
 それは全国的も異例と言える「新嘉手納爆音訴訟」で見られるように、W値の闘いでは、「航空機騒音に係る環境基準」に於いて、環境基準値W75としながら、判決に於いては85未満地域に住む原告の被害救済を(基地騒音は)「騒音発生に常態性、定期性がない」と言うようななかなか常人では思いつかないような屁理屈で切り捨てた「前科」が有るからである。

 国がどんな手を使うかは常人の身では到底思いつかないが、これまでのようにまずは何が何でも「因果関係は認められない」と言うのであろう。一体どうだったら因果関係があるのかと言いたくなるような事を言って、まずは低周波音との因果関係と有効性を認めないであろう。


5."逃げる"「参照値」

 それは、今思えば、当にこういった時のために用意してあったような「低周波音問題対応の手引書」の中の”低周波音問題対応のための「評価指針」”の中の「5. 留意事項」である。そこにはこうある。


5.
留意事項


本評価指針の適用にあたっては、次の事項に留意すること。
・本参照値は、規制基準、要請限度とは異なる。
・本参照値は、都市計画法の用途地域、騒音規制法等の地域指定と関係なく、低周波音によると思われる苦情が寄せられた場合に適用する。
・本参照値は、
固定された発生源からの低周波音によると思われる苦情に対応するためのものである。したがって、交通機関等の移動発生源とそれに伴い発生する現象及び発破・爆発等の衝撃性の発生源から発生する低周波音には適用しない
・本参照値は、低周波音によると思われる苦情に対処するためのものであり、対策目標値、環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとして策定したものではない。対策に当たっては技術的可能性等総合的な検討が必要である。


 基地騒音に際しては、まずは、3番目の「固定された発生源からの低周波音によると思われる苦情に対応するためのものである。したがって、交通機関等の移動発生源とそれに伴い発生する現象及び発破・爆発等の衝撃性の発生源から発生する低周波音には適用しない」と言う文言がひとまず生きてこよう。

 ヘリもジェットも紛う事なき交通機関である。従って、ここで言う交通機関が「公共交通機関」とすれば逃れられないのだが、単に「交通機関」を「交通手段」とすると逃れることができる。しかし、そうすると自動車騒音の筆頭である「爆音マフラー装着車」も逃れることができるのだが、現実に爆音マフラーは「合法」であり、現実として「
移動発生源」からの騒音は低周波音に限らず一切お構いなしなのである。

 従って、ヘリやジェットの騒音は爆音マフラーと同じ穴の狢なのである。私を苦しめた駐車場のアイドリング音も実にこの「
移動発生源騒音一切無罪」で何ともできなかったのである。空港は飛行機の駐車場である。最近、自動車のアイドリングが規制されたのはあくまで地球温暖化、省資源と言う視点からであり、決して騒音問題からではない!!!


 そして、決め手は、1番目の「参照値は、規制基準、要請限度とは異なる」で、それは「対策目標値、環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとして策定したものではない」と言うことだ。詰まるところ“何ら法的拘束力の無い、完全無担保な空手形的存在”であると言うことだ。

 しかし、寅さんではないが「それを言っちゃーお終い」のはずである。もし、それを言ってケツを捲ったら、最近頻繁に低周波騒音の言い訳として、自治体が門前払いの”基準”として、あるいは、企業が静音の宣伝に利用し始めた、低周波騒音無視の切り札としての参照値そのものの信憑性が失われてしまうからだ。

 もちろん、低周波騒音被害者としては「参照値」の信憑性など元々ゼロ以下と思っていたから、その通りになるだけだが、そうなると、少なくとも環境省のいかさま行政が白日の下に曝されてしまうわけだ。マー、恐らく、基地騒音を無罪にするためには“「参照値」は全く無意味なモノです”くらい平気で言いかねないのであろうが。

 それとも、一発逆転、「参照値」は作成当初から「データを収集し必要に応じて修正する」という意味あいのことを言っていると言うことなので、それを低周波騒音被害者は勝手に「参照値」が下がる可能性もあると思っているが、ところがどっこい環境省は「低周波音は98dBまで大丈夫」などと平気で「上方修正」するかもしれない。

 そして、裁判では、もちろん、なおかつ、「騒音発生に常態性、定期性がない」とか「低周波音は未だ尚かつ方法論が確立しているとは言い難い」とか、切り札的にはよもやと思うがあくまで人間性を無視した「受忍限度内」と言う文言が出てくるのでは無かろうか。
言うのであろう。

 一体全体被害者の苦しみはどこから来るのか一度でも良いから政府関係者は考えてみるべきだ。普天間基地の周辺で、「単なる気のせいですよ。気にしなければ大丈夫ですよ」などと言ってみれるものなら言ってみろ。まー、もちろん裁判の奥の手は「米軍基地は治外法権に到り、近くに住んでいる、お前が悪いと言うことになるのであろうか。…。
 

 「さあ、どうする国交省・環境省」と言うことになるのだが、現実の問題としては平成19年度環境保全功労者等として07/06に環境大臣表彰を受けた山田伸志氏の受賞理由に依れば、氏は「参照値を設定し、低周波音問題への対応方法を取りまとめた」のであるから、今日の日本の低周波音問題の全てを掌握しているはずで、なおかつ、「騒音被害者の救済活動を積極的に進めている」のであるから、国の面子は一に山田先生にかかっていることになるのであろう。

 ※普天間と嘉手納の違いは汐見先生が見事に述べてみえる

070613


 この問題は2007年秋に「移動音源等の低周波音に関する意見募集」として、「等」の中の風力発電問題と同時に「移動発生源等については、実測データ、評価等に関する知見が少ないのが現状」として意見募集がなされ、既に締め切られ、結果が待たれるところである。

080621


最後まで読んでくれてありがとう

HOME