和歌山県由良町:風力発電低周波健康被害試論的私論1
広川明神山風力発電所、由良風力発電所に対する地方自治体組長の立場 1/2
12/12/15の報道で、風車の低周波による健康被害を訴える住民に対し、町長が「風車停止の権限ない」と答弁した和歌山県由良町の風車について幾つか情報が寄せられたので、少しまとめてみたい。
1.由良はどこ?
「ゆら」等と聞くと私は「大石由良助」くらいしか音的には浮かばない。風車被害の地名とすれば、愛知県の人なら「風車被害の田原」と聞いて、ああ、渥美半島の、くらいのことは解るが、同じ愛知でも「幡豆吉良の風車」と聞いても三河地方の人しか解りにくい。そして、実際に風車被害が有るのは(「幡豆吉良の風車」はまだ予定)どこだ、と言うことになると県内の人間でも詳しい場所はなかなか解らないであろう。
と言うことで、「由良の風車」と聞いて、関西の人なら由良で解るかも知れないが、県外人の私にはパッと解ることなく、地図で調べて「和歌山の由良」までは解っても、その中の「畑」とか、「広川明神山」と聞いも具体的なイメージは全然湧いてこない。で、この度寄せられた情報とネット上のモノを集めてひとまず具体的なイメージを描いてみた。
@関西上空北北西から紀伊半島を望む |
A湯浅上空4.34km北北東から由良町方面を望む |
B上空2.53km北北西から由良町畑地区を望む |
C畑地区を山稜の反対側南東寄りから望む |
D由良町に於ける「風力発電による被害者宅の分布」 |
旅行に行ったとき、座標上でとまでとは言わないが、せめても地図上くらいでは、自分がどこにいるか、そして、目標はどこかを知りたがるの私の常である。で、由良だが、いつも北を上にして地図を見ている眼には、見慣れないであろうが、地図@は淡路島を中心に関西地方を北北西方面から眺めたモノであるが、その「中央上方の黄色の丸印」辺りが和歌山県由良町である。
ここは一応全国区的には、大阪から直線で約86km、電車で119km、特急は停まらないが、速ければ1時間40分ほどでいける紀伊半島の西側の中程に位置する。なお、ここに示す地図は(Dを除いて)全てGoogle Earthから引き出したモノorそれに加工したもので、写真をクリックすれば拡大図になる(はず)。距離感、立体感、北風の気分になってフライトなどを感じる為には是非ともDLして現物の地図を見ていただきたい。
Aはこの「黄色地点」へ向かう手前の湯浅町上空4.34kmの上空から見た図である。中央の山稜左側から広川明神山風力発電所(1,000kW×16基)、写真にはまだ表示されていないが、写真中央部分から右側には5基の由良風力発電所(2,000kW×5基)が連なる。
北風としては、ここから図の上の方へ吹き抜けて行くわけだが、これらの内の数基の風車の騒音が前方の谷間の「由良町畑」地区Bに風車騒音問題を引き起こし、住民を苦しめていることなど、行政や事業者と同じように全く関知しない。
2.由良風車騒音問題
山稜とこの地区を通り過ぎひょいと南東寄りから振り返って眺めたのがCである。将にこの地区に「由良風車騒音問題」が発生しているのである。これに当地域の町議員として活躍している由良守生議員のサイト上の被害者宅の分布図Dを重ね合わせたのがE黄色丸印@Aに地域である。
ここには青の線が書き入れてあるが、既にお解りだと思うが、これは谷筋である。それが集まるところと被害地域は見事に一致する。
これは”風車の音が水のように谷間に集まり、下ると仮定してのことで、低周波音被害者としては非常に納得しやすい。一般的にはこうしたデータはそれなりに納得がいくのだが、科学を標榜する"専門家"はこうした場合にはそうは行かない。何というかと言えば××の一つ覚えの如く、「健康被害と風力発電の低周波との因果関係は分からない」と言う。一体全体、”科学的に有意性があ(”=関係が有る)というのはどうした場合のことを言うのであろうか。
特に黄色@のトンネル出口付近は風車から1km近く離れているが、夫婦お二人が、風車稼働以来、何れも脳梗塞で亡くなっていると聞く。
ここに関しては、私は紀勢線のトンネルの影響が有るのではないかと思っている。と言うのは以前にも述べたが、低周波音も振動も、考えれば当たり前のことだが、単に水平方向にだけ伝搬するのではなく、360度と言うより、地表面ではドーム状に空気伝搬するのは解りやすいが、音源からすれば花火が空中で開いたときのように球体状に地面にも伝搬する訳で、特に低周波音・振動は地面に伝搬すれば、地震と同じで地面を伝わる。しかもその伝搬は、地震の振動、超低周波音を思えば減衰しにくいと思わざるを得ない。勿論風車と地震ではその規模が違うから一概には言えない。
が、その震動と音は筒状のトンネルが共鳴体となり増幅し、その音&振動がトンネルの出口から出る、即ち、トンネルが超低周波音”楽器”の音の出口になっていると考えると、この近辺の人は風車稼働時には他の場所の人より低周波音、超低周波音の影響を受けている可能性が大きい。
もちろん科学的には”健康被害と風力発電の低周波との因果関係は分からない”のであるから、こう考えるのは私の勝手であるが、是非ともトンネル出口付近と他の地域の測定値が見たいモノである。
更にこの地域では、風車から650mの谷間に1軒有るそうだが、この家は被害を訴えていないそうだが、被害がないはずは無かろう。万が一にも被害者に”保障”でも出ることにでもなったらどうするのだろう。実際、風車から1km程には不眠等の所謂「風車病」を加療中の方が見えると聞く。そして、黄色Aでも脳梗塞で亡くなった方が見えるという。いずれも当地でもそれなりの年齢と言うことであるが、それこそ「健康被害と風力発電の低周波との因果関係は分からない」今日では、風車騒音と死亡の因果関係を確認することは、亡くなってしまった今となっては、それまでの健康状態も把握できず非常に難しいと言えよう。
例えば、亡くなった方々が、風車が稼働するまで高血圧とか不整脈とか、とにかく循環器系に全く問題が無かった人が、風車の稼働と同時でなくても良いが、それなりに不眠とか血圧とかがおかしくなり、医者に掛かり始めており、突然脳梗塞で亡くなるとかすれば、それはそれなりに因果関係有りで攻めることも出来ようが、"専門家"はそれでも無関係を主張するであろう。もちろん、これも風車が出来る前の自然状態が記録されていなければ、風車による「自然破壊」を証明することが出来ないのと同様、格別健康に問題がないときの状態の証明は、会社勤めでもしていない限り難しかろう。
被害の現場は以上であるが、上空から眺めればEそこに人が住み、風車の稼働後はその騒音で苦しむ人がいるかもしれないと思い至ることは、恐らく風車建設業者にとっては、そこに住む被害者には誠に失礼だが有るかも知れない”些細な問題”であろう。沖縄の基地問題をOKとする人達も、恐らくこうした視点で地域を眺めているのであろう。
では、ここで何故こうした状況が呈されたのかすこし考えてみたい。
E被害者宅集中地区と風車からの谷筋 |
3.和歌山県の風車建設に対する見解
平成19年(2007)9月和歌山県議会定例議会一般質問に於いて、山下大輔議員は「和歌山県の魅力を守る!−景観保護に向けた取り組みについて」において主に「自然景観」の観点から述べているが、当時の和歌山県に於ける風車建設の認識状況が概観できる。(以下のリンク、太字、建設年月日等は私)
…。現時点で、県内に建てられている風力発電は3箇所あって、一つは、有田川町の「鷲ヶ峰風力発電」、一つは、広川町の「広川町風力発電所」(平成17年2月28日完成)、そしてもう一つは和歌山市内のノーリツ鋼機が所有しているものです。しかし今後は、加速度をつけて建設が進む計画となっています。
現在、すでに経済産業省で事業認定が採択されている計画として、広川町と日高川町の境に「白馬ウィンドファーム事業」(2008/12)として20基の建設。また有田川町と海南市の境に「有田川・風力発電事業」(→ユーラスエネジー有田川)として10基、また広川町と由良町の境に「広川・明神山・風力発電事業」(2008/10)として16基、また有田市に「有田市山地・風量発電事業」として大型発電機1基が立てられる計画となっています。
この他にも、事業認定を受ける前段階として住民説明会などが行われているものとして、日高町で「オオヒラヤマ・ウィンドシステム事業」が大型機20基の建設、また由良町に「由良・風力発電所計画」(2011/9)が5基、そして「西山風力発電事業」として、これも日高町に13基、そして広川町と日高川町にかけて「広川・日高川ウィンドファーム」が10基の建設計画を進めている状況があります。
現在の和歌山県には3基の風力発電しかありませんが、ここ数年で一気に87基もの巨大な風力発電機が設置される計画があるのです。これだけたくさんの風力発電機が建設されると、多くの県民も驚く事になると思いますが、しかしここで問題なのは、こういった建設について、行政として特に県がそれらを把握し、コントロールする仕組みを持っていないということです。
【知事答弁】
ただ風力発電のお話がありましたけれども、私は地域の特色によってその景観あり方、要求される景観のあり方も違ってくると思っております。すべての地域で同じような景観でなければならないとうことではないと思います。また、県について全くこれについて関与してなかったというふうにもとれるご発言がありましたが、自然公園法とか、あるいはその条例の見地から、十分チェックをしてきたというふうに考えております。(ネット上の原文のまま)
F湯浅方面北北東から由良方面を見る。風車と被害地域の全容 | |
この時点で和歌山県知事は「十分チェックをしてきた」と述べているが、2007年前半に既に風車による低周波音問題が生じていることは報道されている。もし、それなりの関係者がそれなりの規模のWFについてそれなりの検証をしておれば、当時既に恐らく建設が始まっていたであろう広川明神山風力発電所、白馬ウインドファームに対しそれなりの考慮が為し得たのではなかろうか、と思わないでもないが、3年後にはその続きに「由良風力開発」を許可しているのだから、やはり、「考慮はない」と見るべきだろう。
ただそれはその昔の産廃処理場建設に際しても、「こういった建設について、行政として特に県がそれらを把握し、コントロールする仕組みを持っていない」と同様だったのであろう。しかし、長い時を経て産廃処理場建設問題は処理されていった。
https://www.hm3.aitai.ne.jp/~hato/sikou/sikou109_yura_siron2_130110.htm